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    k_ikemori

    遙か7メインで過去作ポイポーイ。

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    久しぶりに書いたのがまたパロやで。BBBの世界観なやつ。https://bookwalker.jp/def1ca1567-ee8c-4114-a364-05df53bc2865/

    アリスの「ごめんなさい、~」を七緒ちゃんに言わせたかっただけなので長政様血みどろの死に掛けです。死にません。
    ジロー⇔アリスの関係性が悲しくも最高じゃんって思ってます。

    ##遙か7

    その生に背くとも目の前に散った朱に七緒は身を固まらせた。
    けれど、その朱の主が叫ぶ声に現実へと乱暴に、だが的確に引き戻される。
    「……ッ、馬鹿者ッ! 目の前の敵を討たぬか」
    「──はい!!」
    取り落としそうだった薙刀を握りなおし、再び七緒へと襲い掛かろうとしていた怨霊の一撃をいなし、薙刀を振り下ろす。
    怨霊へと深く入った一撃は致命傷となり、地に落ちる。けれど、それで終わりではない。
    七緒は怨霊から視線を外さず、謳うように言葉を紡ぐ。
    「巡れ天の声、響け地の声、──彼の者を封ぜよ!」
    怨霊が光に包まれ粒となり、空へと昇っていく。
    キラキラと立ち昇るそれを一瞥すると、七緒はキュッと唇を引き結ぶと振り返り、視線の先で力無く倒れ込んでいる男の元へと駆けて行く。
    「長政さんッ!」
    長政が横たわるすぐ傍へと膝をついた七緒の喉が、ヒクリと呼吸を止めた。
    長政の周りにはおびただしい量の血だまりが出来ており、それが全て長政のものだと見るだけで分かる。そして、長政の命の灯も、僅かだという事も。
    「……いや、嫌だよ……」
    震える手を長政へとのばせば、虚ろだった長政の目の焦点が七緒へと向けられる。
    「……、童女に、泣くな……という方が、無茶か……」
    ふん、と笑ったらしい長政の口からごぷりと血が噴き出る。
    「……ッ!」
    七緒は己の膝の上へと長政の頭を乗せた。混乱の内にでも、吐瀉物による窒息を防ごうとした無意識の行動であった。
    「しゃべらないで……! 今、みんなに……、でもいま私、しかここにいなくて、私……」
    すぐにみんなと合流しなければ。
    けれどここへ一人長政を置いて行く訳にはいかないと葛藤を隠すこともせず、途方に暮れ涙を零す七緒へと長政は力を振り絞る様に、思い通りに力が入らない腕を動かし、手を伸ばす。
    「……ふん、毎度……この様な有様であれば、……皆が迷うぞ」
    七緒の頬へ触れるのをためらうように直前で止まった長政の掌を、七緒は両手で包み持つと血にまみれたその掌に頬を摺り寄せた。
    手袋越しに長政の熱は感じず、ひやりとした死の匂いを纏っていた。
    駄々をこねる様に七緒は首を振る。
    「私がちゃんと気付いていたら。長政さんがどんくさい私なんかを庇わなければ。私がもっと、強ければ──」
    「……たられば話は、嫌いだ」
    けふりと咳き込む長政の灯が段々と消えていく様に七緒は長政以上に顔色を悪くする。
    「──これからの事は、鍛錬と、経験で……どうとでもなる」
    頬に添えている長政の掌から力が抜けていく感覚に、七緒は縋りつくように、離さないように掌に力を込める。
    「やだ、やだ……。みんな優しいから、厳しい事言ってくれる長政さんがいてくれないと……」
    嫌、と涙に濡れる声で呟けば長政が微かに笑う。
    「その、泣き言は……、俺が、冥土へと持っていこう。──泣くな、……お前は、花のように……笑っている方が、……」
    長政の瞳が虚ろになり七緒ではないどこかを見つめ、掌からも力が失われていく感覚に、七緒は唇を強く噛んだ。
    ぽたりと、滴り落ちる血を舌で拭う。
    「……ごめんなさい、長政さん。こんな事、あなたは絶対に怒るだろうけど──わたしを許さないで。ずるいわたしを許さないで」
    長政の掌を頬に感じながら、七緒は涙を零しながら呟く。
    「でも、私は……、あなたが言ったさっきの言葉の続きを知りたい」
    身をかがめた七緒はかさついた長政の唇を塞ぎ、まだ温かい咥内へと舌を差し込む。
    唇からあふれ出る血を誘うように長政へと注ぎ込み、焦点を結ばない長政の瞳を祈るように見つめながら七緒は祈るように舌を絡ませる。そして長政が最後の呼吸と共に嚥下したことを確認した七緒は僅かに唇を離して、短く呼吸をする。
    ぽたりと長政の頬に落ちた涙を目で追いながら、七緒は懺悔のように呟く。
    「ごめんなさい、長政さん。あなたに恋した私を許して──」
    触れるだけの口付けを落とし、七緒は長政の掌をそっと撫でた。


    ドクリ──、止まるはずであった長政の心臓は再び、悠久の鼓動を打つことになる。
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    k_ikemori

    DONE天文台で毎夜星を眺めてる長政さん超エモいなと思って荒ぶったけど自分で書くとそうでもないなと冷静になった…この冬の時期に七緒が出勤して初めに行うことは、分厚い上着を掴み取る事から始まる。
    裏口から入るのでそこからは望遠鏡が置いている部屋と、望遠鏡の前に陣取る人影がきっといるのだろうが、生憎とここからは見えない。
    小部屋にはそれほど大きくはない机と仮眠が出来るようベッドが置いてあり、部屋の隅にミニキッチンが付いている。凍えそうな夜はそこでコーヒーかホットココアを入れて寒空の下、それを飲みながら観測する事が至福のひと時である。
    小部屋に入って、壁に掛けてある上着が自分の物とは別にもう一つ残っていることに気付いて七緒はキュッと柳眉を寄せた。
    「…もう」
    手早く自分の上着を着込み、もう一つの上着を腕に抱くと七緒は小部屋を後にした。
    ある程度厚着をしているだろうが、分厚い防寒着があると無しでは雲泥の差だと七緒は思っている。
    小部屋のドアを閉めるとシンと静まりかえったこの場所によく響く。
    七緒が出勤した際にドアを開け閉めした音に気付かぬ人ではないのだが、放っておくと明るくなるまで望遠鏡の下から動かないような人だということを思い出す。
    ゆっくりと望遠鏡の下まで辿り着き、七緒が傍まで来たのに微動だにしない 3117

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    MOURNING2015年に書き始めて放置してた景望ログを見つけました。タイトルは「まつり」ってあるのでたぶんこれから一緒にお祭りに行きましょうという話にしたかったハズ…。お祭りすら始まっていなかった…。供養供養。書簡を届けに行く道すがら、景時は馬の背から空を仰ぎ見る。
    澄んだ青空に幾つか雲が浮かび、夏らしい強い日差しが地上を照らし付ける。
    「いい天気だなぁ…」
    そう呟き、景時は暫くぶりにある休みを早々に奪取する為、馬の腹を軽く蹴って駆け出した。

    「朔ー? 朔ぅ?」
    彼女たちに宛がわれている部屋へ赴き、ひょいと覗き込む。
    連日動き回っている神子はいないだろうとあたりを付けてはきたが、妹である朔の姿がそこに無く、景時ははてと首を傾げた。
    「どこ行っちゃったのかなぁ…」
    けれど、館の外には出て行ってないようで先程まで裁縫でもしていたのか、しっかり者の妹にしては珍しく片付けもせずそのまま放置されていた。
    その時パタパタと軽やかな足音と共に咎める声が掛かる。
    「兄上! 女人の部屋を勝手に覗くなど、恥ずかしい事なさらないで下さいまし」
    「ああっ、ごめんごめん。朔いるかなぁって思ったし、戸も開いていたし…」
    妹の厳しい物言いに景時は肩を落とす。
    「もし着替えている途中だったらどうするのです」
    「いや、もう陽も高いしそれもないかなぁ…って」
    「例え話です」
    「ア、…ハイ。すみません」
    朔は大きく溜息を零すと 6990

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    CAN’T MAKE遙か7_兼七。前半はTwitterに上げててそれと対になる様にとED後のやつも書きたかったんだ…合歓木


    長雨が続き、しばらく道中の宿にて逗留を余儀なくされていたが、数日たった今日、ようやく雨が上がった。
    足元は雨上がりのためいいとは言い難いが、本来の行程を歩むべく一行は宿を後にした。
    しばらく歩き続けたそんな折に、ふと山際へと視線を向けて歩く兼続に気付き、七緒は不思議に思って横へ並ぶと声をかけた。
    「兼続さん?なにか気になることでもありましたか?」
    「ん、神子殿。ああ、大したことではないのだが…」
    そう言いつつ、つい、と指を木々へと向ける。
    「陽を浴びて新緑眩しいこの時期に、撫子色のアレは目を惹くなと思ってな」
    兼続がいうアレとはいったい何なのかと、指さす方へ視線を凝らせば、確かに緑の中にちらちらとピンク色の綿毛のようなものがあり、七緒は納得の声を上げる。
    「ネムノキですね。確かに、この時期に木に花が咲くのってあまりないからついつい目が留まってしまいますね。ふわふわの綿毛みたいで可愛いですよね」
    「……ああ、その通りだな」
    くつくつと笑い、兼続はちらりと視線だけで七緒へ視線を合わせるとにんまりと口角を上げて笑う。

    「神子殿に似て、愛らしいと思って見ていたんだぜ」





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    DONE遙か7_兼七遊郭パロ序章。七緒ちゃんが取るお客に長政様とかいるやつ。「失礼いたします。……姐さん」
    襖をそっと開けて、中にいる姉女郎へと声をかける。
    隣あうように座る男は思っていた以上に若く禿は一瞬目を見開いてまじまじと不躾にも眺めてしまった。その様子を咎めるように姉女郎が隣の男へと断りを入れ男と禿の間へと身体を滑り込ませ、襖を隔てた場所へと膝をつく。
    「こら、お客様をそんなに見るものではありません。…それで、用向きは?」
    「あっ、すみません。黒田さまがそろそろお帰りに…」
    パッと頭を下げた禿の言葉に一瞬だけ迷うそぶりを見せると、男へと向き直り頭を下げた。
    「申し訳ありません、少しだけお席を離れることお許しください」
    「ああ、構わんよ。ただ、部屋に一人ってのも淋しい。そこの禿に酌をしてもらっても?」
    姐の陰に隠れながらも良く響く耳触りの良い声で言われ、思わぬ指名にパチリと目を瞬かせた。
    「それは、…申し訳ございません。まだ礼儀作法も教えてはおらず無作法あってはなりませんので、他の者を呼んでまいります」
    「いいや、その手間すら惜しい。…大丈夫だ、そんな童女がすることに怒るほど料簡の狭くはないつもりだぜ」
    「…ですが」
    尚も言い募ろうとする姉女郎へばくばく 1159