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    k_ikemori

    遙か7メインで過去作ポイポーイ。

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    過去作_遙か3/現代ED後景望

    ##遙か3

    甘やかに刻は流れる


    互いにゴールまであと二段。
    次で勝負が決まるこの場面譲る気は更々無い。

    「準備はいいですか、景時さん!」
    「いつでもいいよ~!」
    その場に似つかわしくない明るい声が響く。
    「……さいしょはグー、じゃんけん…ポン!」

    「キャー!やったぁ~」
    「あぁぁ~…。負けたァ……」
    景時がその場に座り込み落ち込んでいるその横では、望美が勝ち誇ったにこやかな笑顔で景時を見下ろしていた。
    「グ、リ、コ…っと~。ゴール!」

    「やったぁー!ケーキセットケーキセット~」
    この勝負を始める前に景時と望美は互いに賭け事をしていた。
    景時が勝ったらコーヒー豆の詰合せセットを。
    望美が勝てばケーキセットを奢るという約束事を。


    子供のように喜ぶその様は景時の心を温かくする。勝負事に負けたというのにどこか満ち足りた気分になった景時は知らず微笑んでいた。

      
    ──女の子って砂糖菓子で出来てるってホントかもしれないねぇ~

     
    こんな他愛もない約束事や賭け事に嬉しそうにはしゃぐ望美を少し下から見上げ景時はどこかで聞いた事のあるフレーズが頭を過ぎった。

    どこか嬉しそうに笑いかけてくる景時に望美は訝しげな視線を向ける。
    「な、なんですか。景時さん……」
    「え?…いやぁ、可愛いなぁと、思って」
    ヒノエや弁慶のようにあの手この手を使ってアプローチをしない代わりに景時は時折ストレートな言葉を投げ掛けてくるものだからそういう色事に耐性のない望美は茹蛸のようにすぐに赤くなる。
    赤くなった顔を隠そうと俯くが二段下にいる景時からは赤く染まった頬がよく見て取れた。
    「……そんな事言って煽てたって、ケーキセットは奢ってもらいますからね」
    「もちろんだよ~。それに煽て、じゃないよ?…本当のことだもの」
    照れ隠しでそう言った事だと解っているから景時はからかう様な声色で言った。
    またも赤くなって黙ってしまった望美を見て、景時は耐えられなくなったかのように笑い出した。その様に望美はますます赤くなり景時を咎めるように手を上げる。しかしそれは子犬が親犬に戯れるかのように噛み付く甘噛み程度のようなもので景時にはたいしたダメージはない。景時もそれを笑いながら大人しく受け止める。


    と、その瞬間。望美がグラリとよろめいた。


    しかし幸いな事に望美がよろめいた先には景時が居り、一段だけ滑り落ちた望美は景時によって抱きとめられた。
    「ふ~。……もー、望美ちゃんってば驚かさないでよ~」
    景時が望美を抱きとめたまま腕の中で大人しくしている望美へと声をかけた。
    「うっ…。ご、ごめんなさい」
    少しバツが悪そうに望美が謝罪をするがそもそもの原因が景時にあるという責めるような目を景時に向けた。


    景時はそれを見てクスリと笑うと望美の腰を抱く腕に少し力を込め、景時は少し伸び上がる形で望美の唇に自分のそれを重ねた。


    いつもとは少し違う感覚―――
     

    「………こうやって見上げる望美ちゃんもいいもんだね…」
    啄むように触れる口付ける合間に景時は囁いた。
    望美がそれに反論しようと口を開けばまた唇が触れ合い、望美が発しようとした言葉は景時によって遮られ、景時の口の中へと吸い込まれていった。

     

    ひとしきり望美の唇を堪能した後、景時は望美の手を取る。

    「…じゃあ、行こうか」
    「え?」
    「ケーキセット、食べに」
    行かないの? と意地悪なことを言う景時に望美は赤い顔を膨らませる。
    「行きますよ!お店で一番高いの食べちゃいますからっ」
    そう言ってスルリと景時の拘束から逃れ、背を向け歩き出した望美の後姿に景時はクスクスと笑いながら望美の後を追いかけた。
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    k_ikemori

    DONE天文台で毎夜星を眺めてる長政さん超エモいなと思って荒ぶったけど自分で書くとそうでもないなと冷静になった…この冬の時期に七緒が出勤して初めに行うことは、分厚い上着を掴み取る事から始まる。
    裏口から入るのでそこからは望遠鏡が置いている部屋と、望遠鏡の前に陣取る人影がきっといるのだろうが、生憎とここからは見えない。
    小部屋にはそれほど大きくはない机と仮眠が出来るようベッドが置いてあり、部屋の隅にミニキッチンが付いている。凍えそうな夜はそこでコーヒーかホットココアを入れて寒空の下、それを飲みながら観測する事が至福のひと時である。
    小部屋に入って、壁に掛けてある上着が自分の物とは別にもう一つ残っていることに気付いて七緒はキュッと柳眉を寄せた。
    「…もう」
    手早く自分の上着を着込み、もう一つの上着を腕に抱くと七緒は小部屋を後にした。
    ある程度厚着をしているだろうが、分厚い防寒着があると無しでは雲泥の差だと七緒は思っている。
    小部屋のドアを閉めるとシンと静まりかえったこの場所によく響く。
    七緒が出勤した際にドアを開け閉めした音に気付かぬ人ではないのだが、放っておくと明るくなるまで望遠鏡の下から動かないような人だということを思い出す。
    ゆっくりと望遠鏡の下まで辿り着き、七緒が傍まで来たのに微動だにしない 3117

    k_ikemori

    MOURNING2015年に書き始めて放置してた景望ログを見つけました。タイトルは「まつり」ってあるのでたぶんこれから一緒にお祭りに行きましょうという話にしたかったハズ…。お祭りすら始まっていなかった…。供養供養。書簡を届けに行く道すがら、景時は馬の背から空を仰ぎ見る。
    澄んだ青空に幾つか雲が浮かび、夏らしい強い日差しが地上を照らし付ける。
    「いい天気だなぁ…」
    そう呟き、景時は暫くぶりにある休みを早々に奪取する為、馬の腹を軽く蹴って駆け出した。

    「朔ー? 朔ぅ?」
    彼女たちに宛がわれている部屋へ赴き、ひょいと覗き込む。
    連日動き回っている神子はいないだろうとあたりを付けてはきたが、妹である朔の姿がそこに無く、景時ははてと首を傾げた。
    「どこ行っちゃったのかなぁ…」
    けれど、館の外には出て行ってないようで先程まで裁縫でもしていたのか、しっかり者の妹にしては珍しく片付けもせずそのまま放置されていた。
    その時パタパタと軽やかな足音と共に咎める声が掛かる。
    「兄上! 女人の部屋を勝手に覗くなど、恥ずかしい事なさらないで下さいまし」
    「ああっ、ごめんごめん。朔いるかなぁって思ったし、戸も開いていたし…」
    妹の厳しい物言いに景時は肩を落とす。
    「もし着替えている途中だったらどうするのです」
    「いや、もう陽も高いしそれもないかなぁ…って」
    「例え話です」
    「ア、…ハイ。すみません」
    朔は大きく溜息を零すと 6990