それはいつものように審判を終え、パレ・メルモニアへと帰ろうとした時のことである。
歌劇場の表玄関前の階段を降りようと足を上げたのを見計らったように、物陰から飛び出してくる影があった。
手元で鈍色に輝くそれは隠しきれない悪意の塊で、気がついた周囲の人の静止を振り切りヌヴィレットへと迫っていく。
今回有罪判決を受けた人物の仲間か恋人か。
怒りに満ちた表情の相手に、一歩遅れて気が付いたヌヴィレットは神の目を起動させ抵抗しようとしーー。
歌劇場前に響き渡る悲鳴。
飛び散っていく赤。
派手に転がり落ちた音。
水元素力による反撃を受けて怯んだ犯人を、急いで駆けてきた護衛が取り押さえる。
彼は他の警備兵達へ指示を飛ばしながら、無力化した相手を兵の一人へと受け渡す。
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