ちょっとしたお話 よいしょっと、小さく気合を入れ洗濯籠を抱える。縁側から庭に降りて、籠の中の洗濯物を一枚ずつ干していく。よく乾きそうな高く澄んだ空に目を細め、空になった籠を手に家に戻る。
籠をおいて家主の部屋に向かうと、案の定というか未だに布団の住人な姿に小さく息をつくと枕元に膝をつく。
「先生、朝ですよ」
ゆさゆさと肩を揺するが微動だにしない。予想の範囲内である。少しだけ膝を後ろにさげて耳元に口を近づける。
「おはようございます、先生。今日は鮭ですよ、一緒に朝ごはん食べましょう」
そう言いながら、枕元から体を逃がす様に離す……がそれよりも早い動きで手首を捕まれ、布団の世界へと連れ込まれる。なんとか抜けようと手を動かすが、後ろから抱き込まれる形で絡められる。
1973