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    su_o5i

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    su_o5i

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    【両片想い】のリクエスト送って下さった方、ありがとうございました☺️

    #lucashu
    #mafiyami

    寒さを理由にアーケード街に飾られてる装飾の光が、陽の落ちかけてる暗がりの道を照らし、そこに群がってる雑踏を避けながら

    「シュウ、大丈夫?」
    「うん、はぐれてごめんね」
    「ううん、俺こそごめん!」

    2人は、今夜皆で行うクリスマスパーティーの買い出しに来ていた。

    だがやはり、イベント事はどこも混んでしまう。
    なるべく人通りが少ない所を、と選んだものの皆考えは一緒のようで

    つい先程、またシュウとはぐれてしまったルカは
    やっと合流したシュウに「行こう」と笑い、来た時よりも漸く人が少なくなった道を進んでいく。

    「今日、やっぱりすごく冷えるね」
    「ほんとだね。シュウ、平気?」
    「うん、今のところ大丈夫だよ」

    鼻を少し赤くしながら、笑って答える。




    シュウは寒いのがすごく苦手だ。

    本当なら今頃、こんな寒空の下を歩かずに暖房がついた家でゆっくりコーヒーでも飲みながら、ヴァロラントでもしているはずだったが

    ルカが、ヴォックスから買い出しを頼まれた時
    ダメ元で、部屋で寛いでたシュウに『一緒に行かない?』と声を掛けたら

    『もちろん、僕も行くよ』

    と、答えてくれたのだ。

    まさか即答してくれるとは思っておらず、予想外の事にはしゃいで喜んだルカは

    今こうして、シュウと束の間の2人きりでの"クリスマス"を楽しんでいた。


    けどそんな中、ルカはすれ違う人一一特に恋人達を横目で見ては

    (俺も、シュウと手繋ぎたいな)
    胸の中に、小さい願望を抱いていた。


    幸せそうに手を繋いでは、まるで他人なんか眼中に無いとでもいうように 自分たちの世界を歩いてる彼らが羨ましくて

    ルカは、何度かどさくさに紛れてシュウの指先にちょん、と触れたりもしたが掴むことは出来ず

    今も ちらちらと目線をシュウの方に向けては、手を伸ばしたり引っ込めたりしていた。


    (もしここが外じゃなくて、家の中だったらシュウから手を繋いでくれたのにな)


    本人曰く

    『ルカの方が、カイロより温かいんだよね』

    体温が人より少し高かったお陰で合法的にシュウと手を繋ぐことが出来たし、自分の熱で温まったことによりほっとしたのか

    ルカの肩に体を預けて、隣で眠るシュウを以前からずっと

    そういう意味の"好き"で見ていた。


    そして同時に
    (……これ、俺だけにして欲しいな)

    なんて、醜い嫉妬も芽生えさせて。


    だが当然、ルカにシュウの手を強引に繋ぐ勇気は出ること無く

    未だにすれ違う恋人達を目で追っては、残念そうにため息をつくと冷えた空気により 白息がほわん、と目の前に現れる。

    しかもそれは、出る時は勢いがいいくせに消えるのは一瞬で

    ルカはまるで、今の自分を見ているようだった。

    相手から何かのきっかけが起こるのを期待しては、自分から動こうとしない。出来たのは、せいぜい誘うことだけ。

    (こんなんだから、俺は恋愛が下手なんだ)

    ますます、気分は落ち込み悶々とした気持ちを抱えて歩みを少しだけ早めた。


    すると

    (ん…?)

    ルカの手に、覚えのある感触と知っている体温が触れる

    周りの恋人達から目を離し、歩みを止めて自分の手元を見ると

    「……シュウ?」

    シュウが、ルカの手を控えめに握ってきたのだ。
    ささくれ一つ無い、手入れされた綺麗な指が

    寒さのせいか、少し震えているのがよく伝わってくる。

    「…………寒い」
    首元のマフラーに顔を埋めて、聞こえないくらいの小さな声でボソッと呟いたつもりだったのだろう。


    でも、シュウの声を聞き逃さなかったルカは

    「ふははっ!ごめんシュウ、気付かなくて」

    先程の暗い気持ちをかき消す程の、抑えようのない喜びに耐えきれず つい笑ってしまう。

    と言っても内心、余裕は無く控えめに握ってきたシュウの指を離されないようにと、急いで上から温めるように包み込んでは、自身を落ち着かせるためにまた一つ息を吐く。


    隣を見れば、かじかんだ指先が温まって嬉しかったのか
    シュウが頬を緩ませては、いつもより満足そうな表情をする。

    それを見た瞬間
    ルカは、自分の望みが叶って嬉しそうなシュウに


    (……俺だって、ちょっとは欲張ってもいいよな)


    奥底にずっと押し込んでいた欲が、ほんの少しだけ溢れてしまい


    「あれ、ルカ?なんで手離す…わっ、!」

    ルカは、握ってたシュウの手を離すと

    自分の手をシュウの男にしては細い腰に強めに
    ぐっ、と回し、1ミリの隙間だって許さないとでもいうように抱き寄せれば


    「る、ルカ!?」
    なんか、すごく近くない?

    普段、ちょっとやそっとじゃ焦らないシュウが慌てた声を出す。

    ルカの髪が、自分の頬を擽るように触れた事と嗅ぎなれた匂いが強くなったことにより

    横を振り向けば、すぐにでもキスが出来てしまう程の距離だということにシュウは気付いたのだろう。


    ルカの方を見ること無く顔を少し下に向けたまま
    「………ねぇ、聞いてる?」

    弱々しい声で聞くと

    「この方がはぐれる事もないし、俺もシュウも寒くないだろ?」
    「そ、そうだけどさ…」
    「それとも、シュウは嫌だった?」

    俺と、こんな恋人同士がくっつく様な距離になるの

    ルカは精一杯、意地悪そうな声で
    マフラーに鼻だけではなく顔全部隠そうとしているシュウの耳元に、口を近づけて吹き込むように問い掛ければ

    「………っ、い、やじゃない…。確かにこの方が寒くない、かも」
    「ふははっ!声ちっさ!

    ……うん、俺もだよ」

    (シュウとなら、俺は勘違いされてもいいよ)

    鈍いシュウには伝わらないだろうけど、この距離が自分だけ許されたことに対して

    ルカは今まで"良い子"でいた褒美を、サンタから貰えた気分だった。

    「じゃ、早く行こ!帰りになにか暖かい飲み物でも買おうよ」

    止めていた足を、再び出しては歩きだす。
    今にでもスキップをしそうな程のテンションだったが、シュウと歩幅を合わせて歩ける楽しみを噛み締めながら歩いてると

    「………あのさ、ルカ」
    「ん?」

    「ルカは、いつもこうやって女の人にもしてるの?」
    「……どうして?」
    「うーん、やけに手馴れてるなって思って」

    さすが、モテる人は違うんだね。

    明るく言ったつもりなのだろうけど、そこには確かに
    寂しそうな響が含まれていることに

    (シュウ…?)

    変だなと、違和感を覚えたルカだが

    「……俺は、シュウ以外にはこんな事しないよ」

    ルカの答えに、どう受けとったのかは分からないが
    シュウは「そっか」と一言だけ呟き


    「僕、コーヒーが飲みたいな」
    「OK!後で店探そう!」
    「んははっ、大丈夫だよ。僕はルカが飲めそうな物も置いてある所を調べてきたから」
    「ほんとう!?さすがシュウ、POG!!!!」



    2人は、周りから流れるクリスマスの音を聞きながら
    すれ違う恋人達と同じように



    今だけしかない、自分達の世界を楽しそうに笑いながら歩いた。

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