Happy wedding 雨。さーっと細かく静かに降り注ぐ窓の外。雨雲が月をすっかり隠してしまっている。雨を嫌いだという人は多い。特に結婚式の日は晴れを望むだろう。ジューンブライドと言うけれど、梅雨のある日本には適さないのかも。
僕も雨はあまり好きではなかった、あの日までは。今は雨も悪くないと思える。彼と僕が出会ったあの日を思い出せるから。きっと、今日の雨も彼との距離を縮めるためのものなんだ。
結婚式場の控え室で僕はふーと息を吐いた。鏡を見れば白いタキシードを着て硬い表情をした自分の姿があった。ヘアメイクさんが髪をオールバックにセットした分、その表情がはっきりと見える。
コンコン
「どうぞ」
ドアのノックに応えれば、室内に待機している式場スタッフさんがドアを開けた。中に入ってきた麻里が僕を見るなりわぁっと声を上げた。
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