「……山崎いくら監察といってもなぁ。そういうプライベートな?性的な嗜好?そういう所まで探りを入れて介入するというのはいかがなものだろう。」
夏の太陽の光が差し込む副長室で、扇風機の風を浴びながら、部屋の主である土方 十四朗が答えた。
「ですが、沖田隊長……相当な額をつぎ込んでるようなんです。」
縁側で山崎の隊服が日光を吸収していかにも暑そうだ。
「だがなぁ、総悟も21、女の一人や二人いてもおかしくない年齢だ。女ができればそれなりに出費もあるだろう。」
中身を知っている俺たちからすれば、総悟は欠陥だらけだが、外から見れば爽やかな好青年。今まで浮いた話のひとつもなかったことが異常なのだ。
今まで剣術一筋で近藤さん、近藤さんであった総悟が、なんやかんやあって世の中、政情が落ち着いた今、女に目が行くのは喜ばし事だ。
男女平等が声高に叫ばれるようになった昨今でも、男が会計を持つというしきたりが根強く残っている以上出費は致し方ないものであろう。それに、言及するのは、いささか、過保護が過ぎるというものだ。
「今、勘定方にいってしらべてもらったんですが、去年の11月から急に出費が増えてるです。額も、給料の大半使っちゃってますよ。それまでは、今時の学生でももっと使ってるよって言いたくなる額しか使ってなかったのに。」
真選組は、危険手当てがつき、幕府直参のなかでも高給とりではあるが、中身はそこら辺のチンピラの寄せ集めである。職についたとたん気が大きくなって、金使いが荒くなり、借金をつくり、そこに譲位志士に漬け込まれ、裏切りや逃亡ということがあった。
それを機に、勘定方に隊士の金の流れには目を光らさせている。
支払いはガード払いを推奨し、高額の引き出しもできないようにしている。
隊士には知らせてはいないが、何にいくら使ったか全て調べられるようになっている。
「勘定方から報告が上がってきてねえってことは、借金があるわけでもないだろう。」
勘定方がだした資料にはこれでの金の使い道がかかれている。
最初は、定額の仕送り、武州の診療所への支払い、装飾品、着物、高級果物等全て姉への出費だ。たまに、刀の修理代が入っている。残高は常にほぼゼロだ。
ある時を境に残高がほぼ右肩上がりになる。
出費の大半は、タバスコ、バーズーカのたま、地愚蔵の時の経費と思われるもの、つまり、総悟のいう土方暗殺のためのものだ。
山崎の言うとおり、去年の11月からほぼ横線だ。女もんの装飾品に洋服もあるが、出費の大半が食費だ。高級レストランでもそこまではいかないだろうという額の金額がかかれていた。
ここ最近、穏やかな日々が過ごせていがそういうことか。金も興味も注げる女を見つけれたわけか…。
その女が誰かは知らないが、心のそこから感謝した。悪女でもなんでもいいからそのまま貢がせといてくれ、このまま俺の穏やかな日々がつづけば言うことなしだ。
あの総悟が、貢がせられるとは、クク、いい気味だ。
「まだ貯金はありますが、この使い方はちょっと問題があるかと。」
山崎が汗をながしながらいう。
「総悟ももう大人だ。いちいちこういうもんに口出すもんじゃ」「ウソだぁ!!」
山崎の報告と土方の返答を隣で聞いていた、近藤が叫んだ。
「近藤さんいきなりなんだよ。」
「局長、突然大きな声を出さないでくださいよ。ビックリするじゃないですか。」
「総悟が、総悟が、女に貢ぐワケねェ。なァ、トシ。」
いや、小さいときからあんたの背中を見て成長してきたから、それを当たり前だと思てる可能性あるぞ。それに、総悟は尽くすタイプだ。近藤さんに対しても、姉に対しても。
「総悟はウチの道場でも覚えが早くてよォ。あっという間にみんな追い抜いていってよォ。」
まあ、そうだが、剣術と恋愛は違うからなぁ。
なんでも器用にこなすやつだが、人間関係については自分の殻に閉じこもりがち、さらに恋愛ともなると芋の中の芋だからなぁ。
「許せねェ、絶対許せねェェェェ‼」
何にそんなに怒ってるんだ。あんたの嫁さんがやってたこととあんま変わらしねぇぞ。
「こんなに貢がせる必要あんのかよォ。総悟まだ童貞だぞ。こんだけ貢いでるんならヤらせてくれたっていいじゃねェか。貢げなくなったらポイか、ポイなのか。」
いや、それはさすがに近藤さんでも、総悟に聞かれたら、バーズーカ撃たれるぞ。いや、俺か、全責任を俺が持たされて打たれるのか。
だいたい、なぜ、総悟捨てられる設定!
「この女、貢がせるのを楽しんでるようにしか思えねぇ!」
それは、おめえの嫁だよ。あんたの女、ピンドン開けさせて楽しんでたよ。
「総悟と話してそんな女とは別れるよう言ってくる。」
近藤さんが立って部屋を出ていこうとする。
(総ちゃんのことお願いしますね。)
ふと、頭の片隅に思い出が通りすぎ、思わず立ちあがって、近藤さんの行く手をはばんでしまう。
「ちょっと待ってくれ、近藤さん」
「総悟が、総悟がだぞ。傷は浅いほうがいい。」
「総悟がカワイイのは、わかるがちょっと落ち着いてくれ。悪女と決まったわけでもねぇし、貢ぐことが悪いってこともねぇだろ。それに、反対したからって別れるかどうかもわからねえだろうが。反対したら逆に燃え上がるかも知れねぇぞ。現に近藤さん、俺ら何回、諦めろつっうた。」
「確かにそうだな。だがなトシ。俺は貢いだワケじゃないぞ、愛のハンターだっただけだ。そして捕まえたんだ愛を、今では、家に帰ったら「「近藤さんいらっしゃい」」ってお迎えしてくれるし、「「このブランドの着物がほしい」」とかおねだりしてくれるんだぞ!」
やってることキャバ嬢と客の時と同じ!
本人はのろけのつもりだが、聞いてる方は恐怖でしかない。聞いた話では、近藤家は給料全部嫁さんが管理することになっている。小遣い制で、その小遣いも微々たるもんで、時間があればキャバクラに通っていたのに、今では家に直帰の日々だ。
ケツの毛まで愛すどころか、むしりとられるじゃねえか!
「まあ、いい。この件は、俺が預かる。他言無用だ。いいな、山崎」
太陽の光をあびて滝のように汗を流していた山崎に目をやると汗が止まっていた。
「ハイ、報告と相談が終わりましたので失礼します。御話中お邪魔しました。」
と、立ち上がろうとしたとたん、山崎は崩れ落ちた。
「あちゃー、山崎、またオーバーヒートだよ。」
ロボコップでは、監察に向かないので、源外の爺さんに何とかもとの山崎にしてもらったが、体内のほとんどは機械であるため、夏の暑さに弱い。
「これは、たまさんと源外の爺さんに連絡して、修理に来てもらうしかないなぁ。アッツウ。」
山崎に肩を貸して立ち上がらせる。金属の多いと山崎の体は熱を蓄え屋外の車のボンネットのようだ。
山崎本人は、九死に一生を得、さらに心を寄せる女とほぼ、同じ体になれたと喜んではいるが、なかなか不便なものだ。
たまと同じ話題が持てるようになり、それなりのなかにはなれているようだが、カラクリのような人と、人のようなカラクリとはうまくいくのだろうか?
近藤さんが扇風機の前に山崎を寝かし、うちわであおぎ始めた。
「近藤さんやっぱ、ノースリーブの隊服じゃあ対応できねぇ、屯所全部屋にエアコンつけれるよう。勘定方に予算算出させるしかねえなぁ。こんだけ暑いとかなわねぇ。」
ここ数年での地球温暖化により、屯所は扇風機だけでは、対応できなくなってきた。屈強に鍛え上げられた隊士だが、この夏の暑さで熱中症で倒れる者がでてきた。
扇風機をつけ、障子や襖を開け放ち
「」