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    hujino_05

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    hujino_05

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    ※書き途中なので急に終わります/猫に狂う人々と戸惑う五と猫/五の最強感がまったくない

    ノワール ソレにいちばん最初に気がついたのは虎杖悠仁であった。彼のズバぬけた身体能力のひとつである動体視力は、木々や草むらの間を走りぬけるモフモフしたナニカを捉えたのだ。シルエットや尾の長さかたちからして、おそらく猫か、ばあいによってはタヌキではないかと思われた。しかし警戒心が強いのか虎杖以外の視界にはかすりもしないモフモフは、ながいこと、虎杖の気のせいか見間違いということで片づけられていた。なにせ此処は呪術高専。結界も貼られている上、おどろおどろしい呪具も呪物も呪いそのものも山ほどある空間で、基本的に野生動物は寄り付かないらしいのだ。野生動物は呪力を感じ取り逃げるものらしい、と言ったのは誰だったか、虎杖は記憶を探りながらも「でもやっぱ気のせいじゃないと思うんだよなぁ」とくだをまいては、釘崎と伏黒に「疲れてんのよモフモフと癒しが足りないんでしょ。ホラ、脱兎だしてやりなさいよ」「そういう用途じゃないんだが…」と言われながら脱兎を出してもらったりしていた。ちいさくて目がくりくりしていて耳の長いモフモフがかわいいので、虎杖はわりとすぐに自分しか見かけないモフモフのことを忘れたが、そういう時に限ってすぐに視界の端にモフモフが入り込んでくるので「やっぱ気のせいじゃない!」となるものだから、この話は結末を迎えず永遠同じところをぐるぐると回っていた。
     だが、家入がとつぜん持ってきた猫が喜ぶ液体状のオヤツによって、話の流れが変わり始める。家入によれば「居酒屋の帰りにやたらなついてくる野良猫がいたのですぐ横にあったコンビニでオヤツを買ってやったが、大容量パックを買ってしまったのでもてあましている」とのことで、それを聞いて「大人ってどうして酔うとこうなるんだ」と顔をしかめた釘崎と伏黒の横で喜んだのは虎杖だった。虎杖はさっそくその日の昼過ぎ、猫のオヤツを持って高専をウロつきはじめ、その後ろを釘崎と伏黒が続く。そうして二時間ほどたったころ、虎杖のヒザほどの高さの植え込みにモフモフが入っていくのが(虎杖にだけ)見えた。虎杖はすかさずしゃがみこみ、服に土がつくのも気にせず、姿勢を低くたもったままじりじりと植え込みに近づいていく。途中でオヤツの封を切り、植え込みにむけてプラプラと左右に振ってみたりもした。それを後ろから眺めていた釘崎と伏黒はなんとも言えない顔をしていたが、数分後、植え込みから「シャー」となきごえがしたことで、虎杖の証言が誠であると判明し、ついでにモフモフが猫であったことも判明した。そしてそれらの事実は、
    「ねこ!」
    「ねこがいる!」
     釘崎と伏黒の上げた子供のような純粋な驚きの大声でもって、その時校舎にいた大半の人間に知れ渡ることとなった。


     まるで子供のような声で猫がいることを叫んだ事実と、それによって虎杖ばかりか猫を驚かせ逃げられてしまったことに羞恥と自責の念を感じている釘崎と伏黒の顔を眺め、ひとしきり爆笑した五条は「猫かぁ」と思った。五条はあまり動物に関心がない。猫や犬という生き物はたいそう人間の心をつかむようで、事実、もとから動物好きだと知っている伏黒ばかりか、ふだんはたいして興味なさそうな釘崎までもが子供の声色で叫ぶほどだし、高専の教師陣も「ねこ?」「ねこがいるって?」とワラワラ集まってきたという。だけども五条はその気持ちをいまいち理解することができず、「猫かぁ」と思うことしかできなかった。
    「なにいろなの?」
    「黒かな? 足とかしっぽの先しか見えんくて」
     虎杖の言葉に、釘崎が「黒猫か…」と噛みしめるようにつぶやく。そんなに? と思う五条の横で、いつの間にか合流していた家入が野薔薇ほど感情はこもっていないが、確実に興味を持った声色で「黒猫か」と言った。
    「名前はクロがいいか? それとも他のがいい?」
    「梢子ちょっと待って早すぎまだ誰も全身見てもないんだよね? っていうか野良でしょ?」
    「はい! クロももちろんかわいいですが、もっと凝った名前を所望します!」
    「うわ野薔薇のこんな生徒然とした声初めて聞いた」
    「ノワール」
    「ノワ……なにそれ…?」
    「フランス語で黒って意味です」
    「かわいい」
    「オスでもメスでもいける」
    「伏黒天才」
    「採用」
    「えっいやだから…野良だよね…?」
     五条はおののいた。いつもは無視されたり流されたりあやされたりしている自分がツッコミを入れなくてはならないほど、猫という生き物は人間を狂わせるというのだろうか? 特級呪霊にすら恐怖を覚えない五条が恐怖を感じかすかにふるえ始めたところで、この中では比較的冷静な方の虎杖がなぐさめるように五条の肩をたたいた。だが声高に呼ばれる「ノワール」の名に、五条のふるえは収まらなかった。

     最近の呪術高専は野良猫の話でもちきりだ。「ノワール」と本猫のあずかり知らぬところで名付けられた猫は、本当に黒色かも分からないのにその美しさや愛らしさが人々の間で広がっていく。やれツヤのある黒い毛並みはベルベットのような上質なものだとか(誰も触ったことどころか全身を見たこともないのに)、目はこの世のものとは思えないほど澄んだ金色だとか(いやだから、誰も見たことなくて…)耳はピンとたって気品があるとか(このあたりで五条はツッコむのをやめた)鼻はたいそうあいらしいピンク色だとか(このあたりで五条は虚無というものを知った)、そういう話が。それらをてきとうに聞き流してはいたが、あまりにも上の空すぎると怒られるので(何故…? 誰も見てもいない想像上の猫の話を聞き流して怒られる筋合いは流石にない…と五条は思ったが人々の顔がマジすぎて怖かったので黙った)一応聞いているフリはしていたため、頭に入ってはいた。であるからして、高専の敷地内を歩いていたところ、まるっきり話どうりの猫が目の前に現れた時、いよいよ人々の狂気にあてられて自分も狂ったのではないか、と五条は思った。
     ちいさくて黒いモフモフは五条に気がついたとたん、背中をしならせて全身の毛をさかだてて威嚇しだした。だが五条という人間は、猫や人間どころかたいていの呪霊でさえ相手にならないほどの強者である。自分の何分の一程度の体積しかもたず、力も弱く、シャーと鳴いて爪を立てる以外に威嚇の術もない生き物のことを恐ろしく思うことはない。ないが、あまりにも猫に狂っている人間たちと接しすぎたため、頭の方がちょっと混乱していた。なにせ五条の周りの人間は「五条、猫にむやみやたらに触るな」「五条、お前はデカいんだから猫を怖がらせるな」「五条、お前のせいで猫がいなくなりでもしたら……」とさんざん脅されていたので、猫に対して慎重にならねばなるまいと思っていたのだ。いかんせん、猫に狂った人間は五条がふるえるほどおそろしいので。
     そうやってしばらく、猫と五条の無言のにらみ合いが続いた後(五条はにらみ合っているつもりはなかったが)、猫の方が先に不審そうな態度で五条に近づき始めた。あまりにも五条がデカすぎて人間として認識できなかったのかもしれないし、あまりにも黒ずくめだったので壁かなにかと思ったのかもしれない。あるいは、動かなさ過ぎて木かなにかと判断したのかもしれない。とにかく、猫は動いた。動いて、五条の足もとまでやってくると、ズボンの裾ににくきゅうのついた手を近づけた。
     ぽふ、と猫の手のやわらかい感触を受け止めたのは、五条の足ではなく、無限だった。
     猫のにくきゅうつきの手などというものを五条のオート無限は害とはみなさなかったし、猫の爪なんてものも服の繊維にひっかかるぐらいで傷をつけようもないため、ふだん通りの五条であれば猫の手をはじくことはなかった。
     だけども五条は無限を張った。
     猫に触るな、猫を怖がらせるな、猫を、猫を―と言い聞かせられたがゆえ、猫と、猫に狂った人間たちから己を守るためにとっさに張った、無限であった。
     猫は、五条に触れるすんぜんで止まった自分の手を何度か動かしたあと、噛みつこうとした。はばまれる。きょとんとした顔で五条の足を眺めたあと、猫パンチをした。はばまれる。足もとがだめならと飛び上がって膝あたりにたいあたりした。はばまれる。ぽてんと土に落ちて転がった猫は素早く立ち上がると、五条をきょうみしんしんの顔で見つめた。
     それはあきらかに、新しいオモチャを見つけた顔だった。
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    hujino_05

    DOODLE七と五が食べてるだけの七五未満はなし
    たべるときは その日、七海は名前以外は何も知らぬ街にいた。出張である。さっさと任務を終えたはいいが、迎えの車がくるまで時間もある上、昼すぎという時間を一度確認してしまうと腹が減ってしかたがない。とにもかくにも腹を満たさなくては。七海は店を探しに街をうろつきだした。
     今日の任務はそこまで激しいものではなかった。スーツもほとんど汚れていないし、ジャケットとスラックスを軽くはたけば眉間の皺の深さとネクタイの派手な柄以外に気になることはないサラリーマンのできあがりである。ただし、生まれつきの鮮やかな金髪やサングラス越しの瞳の色などは目立つとも言え、時折うっとりとした視線や感嘆の吐息がもれることもあるが、七海はそういったものに一切気がついていなかった。なにせ今の七海とって重要なのは昼食である。はらがへっているのである。人々の視線を切るように大股で歩き、人々の吐息をものともせず視線をめぐらせていると、ふと、大通りに面したビルの一階に入っている店が目に入った。目立つ場所にあるわりに看板はちいさくひかえめで、外観はむき出しのコンクリートに細長い板が数枚はられている、シンプルでありながらこだわりが見えるものだ。大きな窓ガラスから見える店内はあたたかい明かりと立派な木目のテーブルが目立ち、奥に見えるカウンターを見るあたり、コーヒーがメインのカフェであることが分かる。カウンターの背面の壁にそなえつけられた板を渡しただけの棚にびっしりと置かれたコーヒー豆を眺め、ここにしよう、と七海は思った。
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    hujino_05

    DONE前載せたものの一応完成版/猫に狂う人々と戸惑う五と猫/五の最強感がまったくない
    ノワール ソレにいちばん最初に気がついたのは虎杖悠仁であった。彼のズバぬけた身体能力のひとつである動体視力は、木々や草むらの間を走りぬけるモフモフしたナニカを捉えたのだ。シルエットや尾の長さかたちからして、おそらく猫か、ばあいによってはタヌキではないかと思われた。しかし警戒心が強いのか虎杖以外の視界にはかすりもしないモフモフは、ながいこと、虎杖の気のせいか見間違いということで片づけられていた。なにせ此処は呪術高専。結界も貼られている上、おどろおどろしい呪具も呪物も呪いそのものも山ほどある空間で、基本的に野生動物は寄り付かないらしいのだ。野生動物は呪力を感じ取り逃げるものらしい、と言ったのは誰だったか、虎杖は記憶を探りながらも「でもやっぱ気のせいじゃないと思うんだよなぁ」とくだをまいては、釘崎と伏黒に「疲れてんのよモフモフと癒しが足りないんでしょ。ホラ、脱兎だしてやりなさいよ」「そういう用途じゃないんだが…」と言われながら脱兎を出してもらったりしていた。ちいさくて目がくりくりしていて耳の長いモフモフがかわいいので、虎杖はわりとすぐに自分しか見かけないモフモフのことを忘れたが、そういう時に限ってすぐに視界の端にモフモフが入り込んでくるので「やっぱ気のせいじゃない!」となるものだから、この話は結末を迎えず永遠同じところをぐるぐると回っていた。
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    hujino_05

    DOODLEコンビニ店員伏×リーマン五(未満)小話
     伏黒恵はコンビニでバイトをしている。
     理由は一人暮らしをしているアパートから近かったからである。それ以外の理由などない。伏黒は愛嬌があるタイプではないが、(昔はヤンチャもしたが)どちらかと言えば真面目な方である。遅刻もせずにきっちり働き、品出しを任せれば美しく棚が整える。レジではすこし不愛想に見える時もあるが、稀に浮かべるほほえみが一部の客にウケて人気にすらなっているし、たいていの客も伏黒の顔に笑顔が浮かんでいないことよりも、手際がよく礼儀正しいところを評価した。そうやって、伏黒はそのコンビニに、好意的に受け入れられていった。
     その日の伏黒は、先輩の代わりとして初めて夜勤に入っていた。日付が変わった直後のそのコンビニには、客はめったにこない。品出しや掃除、賞味期限のチェックも終わり、発注に関してももう一人のバイトが率先して行ってくれたおかげで、すっかり仕事は終わっていた。ホワイト思考な店長のおかげでワンオペは無く、必ず二人はいるのがこの店舗の良いところではあるが、今に限って言えば「良い」と言い切れないところがあった。つまりは暇だった。伏黒恵は暇をしているのである。暇すぎて、もうひとりのバイトとの会話も早々に下火になり、互いに黙っているのも気まずくなり、ふらふらと用もなくレジに立ちに出て来てしまったぐらいには暇だった。バックヤードでは上着をきていたが、空調の効いた店内ではすこし暑い。上着をバックヤードの入り口脇に畳んで置き、意味もなく店内を眺める。そんな時だった。入口に人影が見え、入店のメロディが聞こえてきたのは。
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    hujino_05

    PROGRESS※書き途中なので急に終わります/猫に狂う人々と戸惑う五と猫/五の最強感がまったくない
    ノワール ソレにいちばん最初に気がついたのは虎杖悠仁であった。彼のズバぬけた身体能力のひとつである動体視力は、木々や草むらの間を走りぬけるモフモフしたナニカを捉えたのだ。シルエットや尾の長さかたちからして、おそらく猫か、ばあいによってはタヌキではないかと思われた。しかし警戒心が強いのか虎杖以外の視界にはかすりもしないモフモフは、ながいこと、虎杖の気のせいか見間違いということで片づけられていた。なにせ此処は呪術高専。結界も貼られている上、おどろおどろしい呪具も呪物も呪いそのものも山ほどある空間で、基本的に野生動物は寄り付かないらしいのだ。野生動物は呪力を感じ取り逃げるものらしい、と言ったのは誰だったか、虎杖は記憶を探りながらも「でもやっぱ気のせいじゃないと思うんだよなぁ」とくだをまいては、釘崎と伏黒に「疲れてんのよモフモフと癒しが足りないんでしょ。ホラ、脱兎だしてやりなさいよ」「そういう用途じゃないんだが…」と言われながら脱兎を出してもらったりしていた。ちいさくて目がくりくりしていて耳の長いモフモフがかわいいので、虎杖はわりとすぐに自分しか見かけないモフモフのことを忘れたが、そういう時に限ってすぐに視界の端にモフモフが入り込んでくるので「やっぱ気のせいじゃない!」となるものだから、この話は結末を迎えず永遠同じところをぐるぐると回っていた。
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