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    梵天ホラー、増えろ〜という気持ちで見切り発車で書き始めた

    「げぇっ、蘭お前余計なモン連れてきやがったな」

    事務所に戻るなり、ドア正面に立っていた九井に苦い顔で言われた。視線はオレの背後に立つ兄に向いている。まさかこの兄、反社の事務所に好みの女でも連れ込んできたのか、いつの間に。一言文句でもつけてやろうと振り返りキッと睨みつけるが、しかしそこには兄の姿しかなく拍子抜けしてしまう。当の兄も、九井の言う"余計なモン"に心当たりが無いようでキョトンとしていた。

    「ん〜ココちゃん?俺の事からかってる?」
    「いや……まあ。気づいてないなら別に良い」
    「え、何?九井何が見えてんの?まさか三途に薬でも盛られた?」
    「あらら、キメちゃったの」
    「ちげーよアホ兄弟。まあでも、ンなもん引き連れられてても迷惑だから、近々神社でも行って"ソレ"、どうにかしとけよ」

    と、やはり誰もいない方向を指さし、仕事があるからと九井はそのまま部屋を後にしてしまった。
    残されたオレと兄は呆然としたまま互いに視線を交わす。この兄の事だ、オレの視界に入らないよう女を背に隠し、動揺するオレを見て楽しんでいるのでは。そんな疑念も捨てきれず兄の周囲をぐるりと回ってみるが、案の定それらしい人の姿は無い。
    と、なると。残された可能性は。

    「……兄ちゃん、幽霊に取り憑かれてんじゃない?」
    「やっぱ竜胆もそう思う?」

    神社とか言ってたしな〜、お祓い行ってこいって事だよな〜、と何がおかしいのかケラケラ笑っている。まるで他人事だ。
    かく言うオレも、目の前であっけらかんとしている兄を前にいきなり幽霊の存在を疑えと言われても無理な話で、全く現実味が湧かなかった。

    「なあ、霊障?て言うんだっけ。なんかなかったの、最近。変な声聞こえるとか、肩重いとか」
    「いや全く」

    バッサリと切り捨てられてしまう。
    ではやはり幽霊なんて九井の幻覚で、自分でも気づかないうちに三途に薬を盛られていたのではないか。そう結論づけて、可哀想だから明日三途の奴を絞めておこうと2人で決め、その後マイキーに今日の報告を済ませ、事務所を後にした。



    「いでででででヤメロヤメロ折れる折れる折れる!!」

    翌日、三途が出社してきたと同時にオレは三途にタックルを仕掛け、そのまま関節技を決め込んだ。最近は拳銃を使って始末する事が多いため、昔のように出来るだろうかと僅かに不安に思っていたが、杞憂だったらしい。身体に染み込んだ動きで不意打ちを食らった三途の動きを封じることに成功した。ミシミシと良い音が鳴り、三途は悲鳴を上げ兄は愉しそうに口笛を吹いた。

    「なー三途。なんでこんな目に遭ってるか気づいてないわけじゃねーんだろ?」
    「心当たりありすぎて分かんねーよカス!殺すぞ!!」
    「逆ギレが過ぎるだろ」
    「まー思い当たるやつ白状してみろって」
    「クソッ……あー、先月間違って敵のアジト全焼させたの、お前らがやらかしたって事にしたからか」
    「は?オレらそれ知らねーんだけど。アレお前だったん?」
    「俺たちそのせいでココちゃんとモッチーにめちゃくちゃどやされたし始末書も書く羽目になったんだけど。竜胆ー、こいつ折っていいよ」
    「は!?おい待て、悪かったって!待て待て待て待て」

    兄のゴーサインに三途は顔をサッと青くする。実際先程よりも僅かに力を込めたので、本気で折られると危惧したのだろう。
    素直に白状してしまったばかりに罪状が増え、部下に組み敷かれる哀れな年下上司を不憫に思わなくもないが、こればかりは自業自得だ。
    あくまでも可哀想な九井のためにと三途を襲っただけなので手加減してやっていたが、自分たちまで迷惑をかけられていたと知ってしまった以上、落とし前はつけなければならない。
    というのは建前で、自分の下で半泣きになっている三途の姿が面白いものだからつい弄りたくなってしまうだけだ。兄もあんなこと言っているが、もう1ヶ月も前の話だし本気で怒ってはいない。むしろ楽しんでいる。面白いのでこのまま本当に折ってやろうかと更に力を入れたところで、突然響いたノックの音で若干拘束が緩んでしまった。

    「あっ」

    一瞬の隙をついてオレの腕を抜け、すぐさま距離をとった。あと少しだったのに。

    「三途、ここか?入るぞ」

    そう言って入ってきたのは鶴蝶だ。その視線は手元の資料に向けられている。

    「少し確認したい事があるんだが……」

    と、資料からオレたちに視線を上げ__ギョッとしたように目を見開いた。視線の先には兄の姿がある。鶴蝶の目は兄に釘付けになっており、額に汗を滲ませながら口をはくはくと動かしていた。
    途端、昨日の九井の言動が脳裏に過ぎり、とっくに捨てていた可能性が再度浮上した。それこそ相手が三途や武臣だったら違っただろうが、梵天の中で唯一と言って良いほど素直で純粋な鶴蝶だ。明確な根拠なんか無くても、彼の言動そのものが裏付けになってしまう。
    悪寒がした。背中にじんわりと嫌な汗が滲む。
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