砂の城「なあ…ここじゃ近すぎんじゃねぇ?」
「やっぱり?オレもそう思うね」
目線は両手で砂を寄せて盛り上げる手元のままそう返事をすると、ノクトは向かい側にしゃがみ込んで来た。
別荘から歩いて行ける距離にあるこの浜辺は、裸足が心地いいだろうと思わせるきめの細かな白い砂と、時刻によって変わる海の色とのコントラストがとても絵になっていて、ここに来てから何枚もカメラに収めている。
ただし、ノクトの目的の磯釣りができる岩場がその少し向こうに行った所にあるために、何度も横を通るだけで、今日初めて砂浜に足を踏み入れることができたのだ。
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その日、いつも通りノクトより先に起きた俺は、天気予報サイトをチェックして、今日の午後からしばらくの間天気が崩れがちになるのを知った。
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