「何やってんだあの馬鹿っ!!」
吸血鬼の大群衆の中に幼馴染を見つけて、思わず俺はそう呟いた。
突如現れた吸血鬼侵攻に迎え撃つ為、俺達吸血鬼退治人は収集された。その中でも厄介だったのは吸血鬼ロナルドだ、アイツは残念な事に俺とは中高と付き合いがある言わば幼馴染って奴だ。卒業と同時に疎遠になっていたが、まさか大暴れしに帰って来るとは思いもしなかった。アイツは普通の吸血鬼とは違い、吸血鬼の弱点がない。頭は弱いが怪力でいくら凄腕の退治人や吸隊を集めても倒す事は不可能だろう。それでも吸隊とも連携を取る事で何とか食い止める事はできた。
俺は捕まえた吸血鬼をVRCへ連行して引き取ってもらいさっさと帰ろうとしていた時だった、聞き覚えのある声がして振り向くとそこには吸隊の隊長ドラルクがいた。ドラルクは長椅子に座り、膝上に黒い塊を乗せていた。
「半田くんじゃないか、君もお疲れ様。君の活躍のおかげもあって助かったよ」
「こちらも、アンタん所から支給された麻酔銃が役に立った」
「それは何より」
「それよりドラルク、膝に何乗せて…って、ロナルドっ!?」
まったく気づかなかったが、ドラルクの膝上の黒い塊は真っ黒いマントに包まれる様にくるまって眠るロナルドだった。一応処置として特製の手枷が嵌められているが、コイツにとっては無意味だろう。
「何でコイツが!?いや、何でVRCはさっさと引き取らないんだ!!」
「それがねぇ困ってるんだよ」
ドラルクの話によると、ドラルクもさっさとVRCで引き取ってもらおうとしていたのだが、あまりにもロナルドが強力な吸血鬼の為VRCでも収容する場所がないと言われ困り果てていたのだと言う。
「野放しは流石に出来ないからね、今こっちで上司からの報告待ちだよ。でも、最悪行く宛ないなら私が引き取るしかないかな…」
その言葉にギョッとした。
「いや、流石にそれはダメだろ!?アンタが強いとは言え女なんだし…」
「あはは、こんなオバさん相手にする吸血鬼いないだろうよ」
オバさんなどと自虐ネタを言うが、ドラルクはダンピールだから40代とはいえ姿はまだ若々しく、どちらかと言うと年上のお姉さんの様な感じだ。
ドラルクは膝上で眠るロナルドの白銀の髪を優しく撫でながら、話を続ける。
「どのみちこのこを預かるのは私になるだろうね、上は私に厄介事を押し付けて楽したいのさ。私が吸血鬼に襲われようが殺されようが気には止めないさ」
内部事情までは分かりかねんし、深く関わるつもりは無いが、自分を無碍に扱うのはどうかと思う。
そうこうしていた時、ドラルクのスマホが鳴った。ドラルクは電話に出る為、ロナルドの頭をどかし席を外した。
「おい、いつまで狸寝入りしているつもりだ」
「なんだ気付いてたのかよ、半田」
「フンッ貴様の事だ、自分の性癖ドンピシャの年上お姉さんの膝枕を堪能してやがったのだろうっこのドスケベルドめっ!!」
「なっ!?う、うるせぇっ!!別に細いけど柔らかい太ももとか屈むとたまに柔らかいおっぱい当たって気持ちいいとか顔にたまに当たるいい匂いする髪とか思ってねーしっ!!ってゲボラバャッ!!」
ムカついたので、いざという時にと用意しておいたセロリをヤツの口に突っ込んだ。久しぶりに会ってなんて仕打ちだと吐きながら訴えるロナルドを鼻先で笑ってやってると、電話を終えたドラルクが帰ってきた。
「お待たせ…って、何この状況!?」
「ドラルク、ロナルドはセロリが嫌いだ!!」
「半田テメェ言うなっ!!」
「もしロナルドに襲われそうになったらセロリを口に放り込めっ!!もしくは俺を呼べばすぐ駆け付けてセロリを放り込む!!」
「セロリね。いい情報をありがとう半田くん」
結局、ドラルクは上司からの命令で、ロナルドの監視役になったと言っていた。ロナルドの扱いは骨が折れるだろうが、それ程手を焼く事はないかと思う。
「アイツ…ドラルクに惚れてるな」
一目見てわかった、ロナルドはドラルクに惚れてる。ロナルドがそれに自覚しているかはわからないが長年の付き合いで、アイツの思考はよくわかっているつもりだ。
とりあえず暫くは様子見だ、幼馴染のよしみで援護はしてやろう。
俺はウキウキとした気分で、もう1人の幼馴染に連絡を入れた後深夜に空いているスーパーへ駆け込み、ありったけのセロリを買い漁った。