出逢い初め 初詣で、猫又に出逢ってしまった。
「こんにちは、少年」
参拝中――突然の呼びかけに顔を上げてから、やってしまったと後悔した。
思わず渋面になる俺を面白がるように、目の前では声の主――賽銭箱の上に行儀よく座る小柄な三毛猫が目を細めて微笑んでいる。猫が小首をかしげると、首輪についた小さな鈴が、ちりん、と軽やかな音を響かせた。
「妖怪の姿だけでなく言葉まで認識できる人間なんて、何百年ぶりでしょう。ねえ、お友達になってくださいよ」
にこやかな声音とともに、二股の尻尾が嬉しそうに揺れている。
――ああ、神様。たしかに俺はついさっき、出逢いが欲しいと願ったけれど。
「……人外のオスとの出逢いなんて求めてねえーーー!」
お題【初】
(二九九字)