ベッド争奪戦 家に帰ると、すっかり顔なじみになってしまった猫又が我がもの顔で熟睡していた。
俺の部屋で。
俺のベッドのど真ん中で。
「……起きろ、猫又」
「んにゃむ……」
声をかけても、むにゃむにゃ寝言を言うばかりでいっこうに目を覚ます気配がない。うーん、腹立つな!
「だあーーーっ! 毎度毎度ひとの寝床を奪いやがって! おら! どけ!」
猫又をベッドから追い出そうとするが、小柄とはいえさすがは妖怪。まったくもってビクともしない。
しかし、ビクともしないということは。
「……おい、お前起きてんだろ」
「おや、バレましたか」
狸寝入りをかましてやがった猫又が涼しい顔でベッドから降りていく。
これにて、本日のベッド争奪戦は終了だ……やれやれ。
お題【奪う】
(三〇〇字)