猫(又)のくせに すっかりおなじみになってしまった猫又が、今日も今日とて俺のベッドの上ですやすやと寝息を立てている。
昨日は今の時期にしてはずいぶんと暖かかったからか、日中は日当たり良好な玄関先で丸まっていた。
その前は、リビングのソファの上で。そのまた前は、ダイニングテーブルの上で。
いつの間にか、我が家のいたるところで猫又の寝姿を目撃するようになっている気がする……なんだか、こいつが妖怪だってことを忘れてしまいそうだ。
「猫はコタツで丸くなるんじゃなかったのか?」
「ボクは猫じゃなくて猫又ですよ、少年」
「……」
独り言だったはずの揶揄に返事をされ、俺は思わず顔をしかめた。
忘れてたけど、お前は狸寝入りが得意なんだったな!
お題【忘れる】
(三〇〇字)