そばにいて「一緒にいたい」
生まれて初めて、そう願った相手がいた。
でも、その人はそう願ってすぐに、エーベンホルツの前から消えた。手を伸ばしても二度と掴むことができないほど、遠く遠く、白い光に包まれていなくなってしまった。
だから、怖かった。
「そばにいてほしい」
そう望んでしまったことが。望んでも叶わないのではないかと、いやむしろ望んだからこそまた失うことになるのではないかと。そんな根拠のない恐れが頭をもたげて心を蝕んだ。
だから、伸ばしかけた手を静かに下ろすしかなかった。
それなのに——
「フランツ」
名前を呼ばれると同時に、右手を柔らかく握られた。微睡みの中にいた意識が、徐々に明瞭なものになっていく。瞬きを数回、クリアになった視界にこちらを覗き込む見慣れた顔があった。
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