それはきっと夢物語 ?日目-悪夢
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脳が浮く心地に苛まれるまま、六華は瞼を開く。
その眼前に広がるのは温度のない闇。自分の足元すら明瞭に見えず、少し手を動かすと生ぬるくまとわりついてくる黒。星のひとつも見えないことを除いても、夜空とは似ても似つかない奇妙な光景だった。
いや、訂正をしよう。彼の目の前には、星があった。その星がきらきら、ひらひらと舞うたびに奇妙なブレと共に空間が歪み、水中の様相を呈している。
海の星——Stella maris。聖母をかたどる人形は陶器の喉を震わせた。
「キラキラ輝ク小サなお星サま、あなたハどンな夢を見てイるの?」
邪気のない愛らしい微笑み。しかして無邪気たり得ない彼女の深淵を、六華は知っている。
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