201話の行間 病院で尾形に逃げられてしまったのは後顧の憂いを残すこととなってしまったが、「荷物」が減ったと考えれば悪いことばかりではなかった。いつ傷が悪化するかわからないような重傷者を連れて北海道まで戻ることを考えると、今いる者だけで帰路を急ぐほうがずっと早い。
重傷者はもうひとりいるのだが、そちらも多少は回復をみせていた。
しかし、いざ出発という段になり、改めて橇に乗る人間を振り分けしたところ、ちょっとした問題が発生した。
「何故だ、月島」
もこもこの防寒着を身に纏った将校が、自分より頭一つ分近く小さい部下の片腕を掴み、詰問した。同じく、もこもこの防寒着に包まれた部下は、多少言いにくそうに下を向いた。
「……すみません、でも少尉殿では……」
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