アルテとハイジョのポケモンパロ⑦終暫く歩くと、いつしか通った湖に出た。
セレビィが水面を撫でるように飛ぶと、飛沫はきらめき、蕾の小花に触れると次々と綻ぶ。
次第にセレビィにも活気が見られ、野生のポケモンたちも顔を出し始める。
その中に野生のヒメグマを見つけると、隼人くんも、お前も遊んでおいでってヒメグマを出すし、春名もモルペコとかに木の実がなってるぞーって勧めるし、夏来は冬美に、ジュゴンって淡水でも大丈夫かな?とか聞いて、短時間なら問題ないんじゃないか、心配ならヌオーにしとけよ、ヌオーは見るからに淡水だろ?なんて変な議論してる。
伊瀬谷は迷いに迷って全部出す。
麗さんはそんな賑わう様子を、倒れた大木に腰掛け眺めていた。
高年の男性から話を聞いてから、麗さんもどことなく元気がない。
元気が無い理由が明白なだけに、隼人くんたちもどう声をかけていいものか迷っていた。
伊瀬谷は道中、態度を変えず話かけてたし、若里もお腹空いてない?ドーナツ食べる?とか普段と変わらず聞いてたが、都築さんの話題には触れられなかった。
隼人くんのヒメグマと遊んでいた野生のヒメグマの親か?一体のリングマが麗さんに近づき匂いを嗅いでいる、襲ってこないか心配で見てるも、リングマは麗さんの傍に伏せ、他、何匹かの野生のポケモンも近づいてきた。
「麗っちモテモテっすね!」
「もしかしたら、この子たちも麗さんのこと、覚えてるのかも……?」
「そんな……確かに、野生のポケモンたちもよく家に餌をねだりに来ていましたが……あれから20年も経つのに」
「大切な人のことって、どれだけ時間が経っても忘れないものですよ。きっとそれは人間もポケモンも同じなんですね」
ポケモンたちも微笑んでいるような気がする。
冬美の言葉を皮切りに、麗さんはポツポツと話し出した。
ハイジョも、麗さんの言葉に耳を傾ける。
「仮にそうならば、この子たち(野生のポケモン)も、街の人たちも、⚪︎⚪︎さん(高年の男性)も、ギャロップも、みんなわたしのことを覚えていたってことですよね……特別なことなど、したことないのに、わたしを。なんだか、思いがけないことばかりで、わたしは自分が愚かなんだとようやく自覚しました」
「なんで?麗っち全然愚かなんかじゃないっすよ?」
「そうだよ、どうしてそう思うの?」
「……陰気くさい話になってしまうのですが」
そう前置きするが、ハイジョは聞く姿勢を崩さない、いいよ話してと、ゆっくり促した。
ーーわたしの存在が、これだけの人の記憶に跡を残しているのにも驚きましたし……
都築さんが、あそこまで悲しんでいただなんて……
人の心を軽視し、想像力に乏しかったわたし自身が情けなくて……っ
昨日、皆さんから都築さんのお話しを聞いて、わたしは都築さんが今でも生きていることが分かって安心していたんです。
わたしが突然行方不明になって、心配をかけたり、寂しい思いをさせているなとは思っていたのですが、それでもわたしは、彼に生きていてほしかったから。
けれど、⚪︎⚪︎さん(高年の男性)のお話しを聞いて、わたしは酷く身勝手だったと思いました。
……わたし達が幼い頃の話です。
都築さんのお母様は都築さんのお父様ーー旦那さんのことをとても愛していたようなのですが、どういう訳か離れ離れになってしまい、その胸を裂くような悲しみを毎日アルコールで癒していました。
過剰なアルコールの摂取でお母様は急逝され、その時、都築さんはお母様との別れを悼んではいましたが、それよりもお母様がやっと毎日の悲しみから解放されたことに安堵していたのです。
大切な人に会えない寂しさで、身を滅ぼす様を間近で見て知っている都築さん……
果てのない悲しみが何よりもつらく、苦しいものだと知っている都築さん……
そんな都築さんが、わたしが「水分だけはしっかり摂って、ポケモンたちの言うことは聞け」だなんていつものお小言をまるで約束ごとのようにして、わたしのポケモンたちのことも大切にしてくれた。
彼は、もしかしたら天使になってしまいたかったかもしれない。
でもわたしは、話を聞くまで、都築さんがそのような経験をしてきたことも考えず、呪いのような言葉を最後に別れたことも忘れていました。
都築さん、ごめんなさい。
たくさん悲しい思いをさせて。
あなたの前から突然姿を消してしまって。
なのにわたしは自分のことばかりで……ごめんなさい都築さん、ごめんなさい。
話をしているうちに感情が昂ってきたのか、大粒の涙がとめどなく麗さんの頬を伝う。
涙を拭いてと、ハンカチを差し出すのは夏来。
伊瀬谷と隼人くんはポロポロと泣き出した姿にうろたえる。
若里は思うところがあったのか、違うよ麗さんと声をかけたが、被せるように同じ言葉を強く投げかけたのは意外にも冬美だった。
「違いますよ、麗さん。……確かに、大切な人がいなくなるのはとても寂しくて悲しいもので、もしかしたら生きることが死ぬことより辛いと思ったことも、あったかもしれません。でも、それでも圭さんが生きていたのは、あなたの呪いなんかじゃない、あなたにただ会いたかっただけなんじゃないですか?大好きだった故人を偲んで、会いたくて堪らなくなることもある。けれど、そもそもあなたの生死は誰にも分からなかった、だから偲んでなんてられない、ずっとずっと諦められなかった、会えると信じたかった、それだけだと思います」
「……オレも、ジュンとおんなじ。圭さんが今もあそこで暮らしてるのだって、生きるのを諦めなかったのだって、そういうことだと思うぜ?あとさ、麗さんが、圭さんが生きててくれて嬉しかったって、そういう感情だって、オレは否定することないと思う。辛くて悲しい思いをしてるかもしんなくてもさ、誰だって大好きな人には生きててほしいじゃん。それが愛だって、少なくともオレたちは分かってる。だからあんま自分を責めないでやってよ」
「そう、だね。麗さんが、元の時代に戻ろうって頑張ってるのも、俺たちは知ってる……圭さんの中で、どれだけ麗さんが大きな存在だったかって……こうして気づけたのも、麗さんがこれまで頑張ってきたからだよ?ね?」
ハイジョの言葉に、麗さんの涙は止まるどころか何粒も何粒も頬を伝って、冬美も自分のハンカチで溢れる涙を掬い上げる。
宙で様子を見ていたセレビィも近づいて、心配そうな顔をして麗さんの頭を撫でた。
そうして暫く、麗さんが落ち着くまで見守るハイジョとポケモン各位、もうすぐ日が沈む頃だ。
「すいません、取り乱してしまって……」
泣き腫らして赤くなった目尻と、恥ずかしげに染まった頬。
若里のモルペコが自分のほっぺを押さえておんなじだねーみたいな仕草をして皆で笑うみたいな、穏やかな時間が流れる。
暗くなりつつある空を仰いで、冬美がそろそろ街に戻ろうと声をかける。
もう小一時間も歩けば、麗さんと都築さんの屋敷だが、引き返すのか……隼人くんはどうしても都築さんのことが気になって、口籠もりながらも麗さんに尋ねた。
「麗さん……あのさ、圭さんには……」
会わなくていいのか、それは声には出せなかったが、そんな隼人くんの気遣いにも、麗さんはしっかり汲み取り返答できるまでに、メンタルは落ち着いていた。
「わたしは、どうしたってこの時代に留まることは出来ません。わたしが共に時間を歩みたいのは、自由で甘えん坊で、綿毛のようにふわふわしていて、音楽を愛し、愛されている、大切で大好きな、歳下の男の子なのですから」
だから、この時代の都築さんには会いません。
この時代の都築さんの心に寄り添うべきは、今の未熟なわたしではなく、共に20年歩んだわたしでありたい。
はっきりとした物言いと優しげな瞳に、隼人くんも「そっか」と、野暮な質問をしてしまったことを恥ずかしそうに、それよりも嬉しそうに笑った。
ええ。
けれど……少しだけ残念にも思ってしまいます……
会いたいです、都築さん。
会いたい。
心ともなく、ポツリと溢れてしまった本音。
その言葉に反応するかのように、今まで麗さんの腕の中にいたセレビィが青い光を身に纏った。
突然視界が眩しくなり、反射で目を閉じてしまった間に、セレビィは宙に。
淡い輝きを灯し始めた星々も霞む程の眩い光は、麗さんも十分に知っているものだった。
ーー時の波紋。
時空の隙間に浮かぶワームホール。
セレビィはこの時の波紋を通って、ときわたりをする。
麗さんも、何度も何度も共に潜ってきた。
ハイジョは初めて目撃するが、なんとなく、セレビィはときわたりをするのだろうと思ってしまう、不思議なエネルギーを感じていた。
「麗っち……行っちゃうんすね」
麗さんに向き直る伊瀬谷の表情は、寂しそうに眉根が下がっていた。
「伊瀬谷さん……(パロディだから距離感演出で敬語にしてるけど、呼び捨てで呼んでほしいしカラオケ行ってほしい)皆さん、本当に色々とありがとうございました。皆さんがいなければ、セレビィは助けられなかったでしょう。あの時、皆さんが戻って来てくれたから……あなた方との出会いは、わたしの希望です。出会ってくれて、ありがとうございました」
深く頭を下げる麗さん。
あ、そういえば……と、ふと思い出したかのように、白いガウンに隠れた、僅かな荷物の入った小さなカバンから、ヌイコグマの顔のポーチを取り出す。
「あ!これオレのじゃないっすか!え?なんで麗っちが??」
「ジョーイさんから預かったんです。よかった、うっかり持ち帰ってしまうところでした」
(ハイジョと別れてから、ねぇあなた、あの賑やかな子達(ハイジョ)とお知り合いなのよね?部屋を掃除してたらかわいいポーチの忘れ物があってね。もしかして取りに戻ってくるかもしれないから、もし会えたら渡しといてくれる。私、これから往診に行かなきゃいけなくて、とか言われてジョーイさんから預かっていた(もし会わなかったらセンターで預かるわねって言ってた))
「よかったなーシキ!そういやオレたち、シキの忘れ物取りに戻ったんだもんな!」
「俺達も……忘れてた、ね」
「そういえば、あの夜(麗さんと初めて遭遇した時の夜)なんだかしきりにそのポーチを眺めていたみたいですけど。そんなに大事なものでしたっけ?」
「ポーチも大事っすけど……どちらかと言うとーー」
チャックを開けると、小さく折り畳まれた一枚の紙を取り出した。(ポーチの中身は、隼人くんに貰ったピックとか、ヤンチャムの葉っぱとか、夏来が適当に落書きしたエネコの切れ端とか多分色々入ってる)
これを麗っちに渡そうかなって考えてたらそのまま寝落ちたんっす。
紙を開くと、そのまま麗さんに手渡した。
全てが手書きの、おそらく採譜されたのだと思われる楽譜。
線はガタガタだし、音符なんてただの点だし、演奏記号の字も汚い(のではなく、恐らく筆記体がうますぎる)し、中途半端なところで終わっている。
見覚えがありすぎる手癖に、麗さんは目を見開いた。
楽譜の読める冬美が覗き込むと、その音楽が、あの日無理を言って聞かせてもらった、都築さんと麗さん(仮)の二重奏だと気づいた。
「これ、まさか圭さんの……?四季くん、まったくあなたは!人の物を勝手に持って帰ってはいけないでしょう!?」
「勝手にじゃないっすよ!!すっごい感動したから、曲名教えて?ってこっそり圭っちに聞いたらね!その場ですらすら〜ってこれ書いて、"僕が一番気に入ってる曲なんだ。感動してくれてありがとう"ってくれたんっす!」
図々しさというか、人懐っこさというか、決して自分には真似できないコミュニケーションの取り方にぐぬとなる冬美。
いつの間に、抜け目ないな、と感動すらする若里とか隼人くん。
実は見ていた夏来。
「……麗っち?」
音符をなぞりながら押し黙ってしまった麗さんの顔を覗き込む。
麗さんは思い出していた、よくその曲を二人で弾いていた日々と、初めて都築さんが作曲した音楽に名前をつけてみたあの幼い日を。
〜〜♪
最近、そのメロディばかり歌っていますね。
いつもは楽聖たちの作品だとか、その時思いついて適当に歌ったその場限りの曲とかを口ずさむことの多い都築さん(幼い頃の姿)に麗さん(幼い頃の姿)はただ素直に思ったことを口に出した。
一度聞いた音楽は忘れない麗さんは、このメロディが気まぐれに歌われているものではないことに気づいていた。
うん。麗さん、作曲とかしてみたらどう?って前に勧めてくれただろう、だからやってみようとしてるんだけど……綺麗な五線紙に音符を並べるのが楽しくて、全然終わらないんだ。
ちなみに今第五楽章、だなんて茶目っけに笑っている。
そうですか、壮大な曲になりそうですね。ちなみに題名とか、テーマとかは決まっているのですか?
これ?うーん……題名とか、そっか必要か……あっ!ふふ、じゃあね、これは”麗さんに出会えて幸せだな♪の歌"にしようかな。
え?タ、タイトルですか?わ、わたしも嬉しく思っていますけど……もしかしたら世に出るかもしれないんですから、もっと世間並みにしてはいかがですか?
ダメかい?
いえ、その、ダメというか……
ふふ、第五楽章の副題はヨマワルに懐かれて号泣。
なんでそれを都築さんが知ってるんですか!もう!
「ーーいえ、昔を、懐かしんでいただけです」
「やっぱ二人でよく弾いてたんっすね!」
じゃあこれ、麗っちにあげる!と、楽譜を持つ麗さんの手を握りしめた。
でもこれは伊瀬谷さんが貰ったものでしょう?そう返そうとするけれど、伊瀬谷は。
「また圭っちに会ったらおねだりするし!それに、なんだかこれ(楽譜)持ってたら、圭っちに会える気がしないっすか!?」
だからお守りと、再度手をぎゅっと握られた。
ありがとうございます、本当にーー
ーーセレビィが麗さんに近づき手を取ると、(きっとサイコキネシス/技)麗さんの身体も浮かび上がる。
これから、二人で時の波紋をくぐるのだ。
「麗さん、俺たち、二人が絶対会えるって信じてるからね!」
「また俺たちに……素敵な音楽を、聞かせてね……!」
「セレビィも!今度会えたらたくさんマラサダ(ドーナツ)食べさせてやるからな!」
「……麗さん!あの、僕たち……僕は、あなたに一つ、嘘を吐いていました……っ、そのーー」
各々が別れの言葉を投げかける中で、一人、神妙な顔をした冬美が一際大きな声を出した。
しかし、いざとなったら言葉が詰まる。
その先を見越してか、否か、麗さんは優しく微笑みながら。
「言わなくて大丈夫です。きっと優しいあなたが、わたしのことを思ってくれたからなのでしょう?だから、どうか気に病まないでくださいね」と。
「麗っち!セレビィ!オレたち、ずっと友達っすからね!!!」
あの時、悪役にお前はセレビィのなんなんだと問い詰められた時、実は麗さんは戸惑っていた。
しかし、伊瀬谷の言葉で、その戸惑いの正体に気づく。
友達。
そうか、わたしたちは、そしてあなた方はーー
いつか浴びたスポットライトのような眩い光と共に、麗さんとセレビィは旅立っていった。
波紋一つ無い、なだらかな湖と、どこか寂しげな丸い瞳で空を見上げる野生のポケモンたち。
若里が一つ、大きな伸びをすると、くるりと身体を翻した。
続いて夏来や冬美も歩を進める。
「えっ!?三人ともどこ行くのさ、街は反対……」
「どこって……なんだよハヤト、圭さんのとこ行かねーの?」
「てっきり、ハヤトか、シキが、言い出すかと思ってた……」
「いつのまにか日も暮れちゃいましたし。あ、もしかして二人は野宿希望ですか?」
「!?こんなとこで野宿なんていやっす!」
「だよなー笑 麗さんにも、圭さんに会ってくれって頼まれてたし、今日は圭さんにまた泊めてーってお願いしに行こうぜ!」
「へへっ、ふふふ、だからオレ、みんなのこと大好きっす!!」
こら四季くんくっつきすぎです、重い……ははっ夏来しっかりしろーとか、ワイワイやってる四人の背中を眺める隼人くん、ほらハヤト、置いていきますよと冬美に声をかけられハっとする。
待って!と、大事な仲間たちの影を追うが、ふと足を止め……あの、映画とかの最終回で主人公かキーマンが一人だけなんもない宙を振り返って、なんか慈愛っぽい笑みを浮かべて、仲間に早くって促されてまた走り出すあの感じ、分かる?それ。
んで、意味もなく風が木々と水面を揺らして場面転換。
深い森がそこだけ開けて、月光に愛されてるかのように淡い光を集めて花々が繁り、野生かと思われる森のポケとか飼育されてるように見えるポニータとかが自由気ままにしていて……みたいな、アルテ屋敷。
ギャロップが⚪︎⚪︎さん(高年の男性)に引き取られている事を知っているハイジョは、綺麗に佇む厩舎に違和感を多少抱くが、少し前とあまり表情の変わらない屋敷の様子に、いたって普通に扉を叩いた。
「ごめんください!前にもお世話になったことがある、秋山隼人です!他の皆もいます!」
圭さーん、圭っちー!と、扉越しに呼ぶと、まもなく扉が開いた。
やぁ、いらっしゃい。
そう優しげに微笑む都築圭の姿とは対照的に、一つの画角に収まる、ハイジョ五人の目を丸くして驚くショットで暗転、これが映画ならここでEDが流れて、意味深な感じで話が終わる。
ーED終わりー(ED??)
麗さんがここにいたならば、うっかりソファで微睡んでも、優しくタオルケットでもかけてくれただろう……そんな、のんびりとした空気が流れていた天気のいい昼下がり。
都築さんの傍で、いつも通り煙を出しながら眠っていたムシャーナの煙が突然止まった。
パチっと勢いよく目を開け、開きっぱなしの窓から外へ飛び出す。
初めて見るムシャーナの様子に、都築さんはどうしたんだろうと疑問にこそ思うが特に追いかけようとはしなかった。
するとムシャーナは怒ったような、興奮したかのような声を上げて都築さんをサイコキネシス(技)で無理矢理外に連れ出す。
様子を見ていた他のポケモンたちも、次々と外に飛び出した。
「いたた……どうしたんだい、ターピア(ドイツ語でバク)……他のみんなも」
ポケモンたちの声がしきりにこだまする。
空を指し、ギャアギャアと鳴くポケモンたちはどこか都築さんを急かしているようだった。
「そんないっぺんに話されたら困ってしまうな……ん?なあに?空……?」
都築さんが振り向くとほぼ同時。
雲ひとつない青を裂いて、時空の割れ目が顔を出す。
眩い光と共に、笑顔のセレビィと悲鳴のような声を上げる……あれは、麗さん。
落下する身体の衝撃を和らげたのは、アシレーヌのバルーン(泡風船)と、風船のように身体を大きく膨らませたプリンと、トリミアンのコットンガード(技)
何回か身体を跳ねさせ、最後の一跳ね、その着地点に都築さんは駆け出していた。
ほとんど無我夢中で、もしかしたらまだ、それが麗さんだとも分かっていなかったかもしれない、それでも体は動いていた。
都築さんに覆い被さるように落下した麗さん。
衝撃に軽く眩暈を覚えたが、自分が何かにぶつかったことに気づくと、慌てて身体を起こし、ごめんなさいと謝るが、すぐさま身体を抱き寄せられた。
胸元でふわふわと揺れる髪と、啜り泣く美しい声。
「ひゃっ……え?あ、つ、都築、さん……?」
「ーーっ、麗さん!」
私が監督なら、麗さんに縋り付く都築さんと、優しく抱きしめ返す麗さん、集まってくるポケモンたちを上空からのカットで映して、ここで本当に終わりにする。
妄想にお付き合いくださり、本当にありがとうございました。
ハッピーエンド!