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    キリサキヤエ

    @kiri_saki_0801

    ゲ謎の親父殿に沼って出られなくなった。
    水父だったり親父殿受け投げたりする予定。

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    キリサキヤエ

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    素敵企画に参加したいと思い、まだ未完成ですが途中のものをそぉい!
    五郎左衛門様の父父設定【https://twitter.com/56zaemon_goku/status/1753445542162739269?t=Hxp_m】をお借りしております。
    フライング+執筆途中です。完成したらR-18となります。

    紛らわしいかもなので一応説明すると『男』が受け父、『もう一人の自分』が攻め父となります。

    かがみの結【父父】「えっ───」
     “それ”に気づいた時は手遅れだった。音もなく近づいたそれは大口を開け、一瞬にして狙い定めた獲物を飲み込んだ。刹那の間に鋭い牙が見えたが、その牙は獲物を一切傷つけずに丸飲みにした。
     飲み込まれたのは幽霊族の男。丑の刻。とある妖怪に目をつけられ、仕方なくその身を性欲処理の為に身を捧げた後の帰り道の出来事だった。
     ただでさえ一方的で、男に大した快楽をもたらさなかった行為の後で早く帰って湯に漬かって体を清めたいというのに、何の前触れもなく災難に襲われた。
     泣きっ面に蜂とはこの事か。なんて思ってはいられない。自分を飲み込んだのは間違いなく妖怪だと男は理解する。
     荒事は好かないがこちらはいきなり飲み込まれた身。脱出のために多少手荒な真似は致し方ないと覚悟を決めた矢先、真っ暗だった視界が一転する。
     半球状の広く、周囲の壁が水ででき、いくつもの鏡が浮かぶ不思議な空間。その宙に男は放り出された。
     幽霊族の身体能力で男は地に落ちる前に体を捻り、安全な姿勢を維持して足から着地する。
    「……なんじゃここは?」
     確かに何かの妖怪に飲まれたはず。ならこの不思議な空間は自分を飲んだ妖怪の腹の中のはずだが、胃にしては奇妙な場所だと男は思った。消化器官らしいおどろおどろらしさは感じないし、壁となっている水からは内容物を溶かす液体が発するような異臭もしない。
     水はもしかしたら触れたら溶けるかもしれないが、確認する前に一度改めて周囲を見渡す。
     足元、床は全面、蛇の鱗に類似した形状の鏡がびっしりと並んでいる。他に目立ったものはないかと男は後ろを振り向いて、困惑した。
     おそらくこの空間の中心部。鏡張りの床の上に目測で畳が18畳ほど敷かれており、その上には布団が敷かれている。布団は通常より大きめの、二人入るのに丁度良いくらいのサイズ。臭わせるように枕は二つ連なって置かれている。
    「ッ……!」
     嫌な予感がする。絶対よくないことが起こる。男は経験から直感的にそう思った。
     男の直感が正しいなら、早くここから脱出しなければならない。急いで出口を探そうとするも。
    「おお、やはり来おったか」
     手遅れだった。
     声の主は男から見て畳の奥に設置された、2体の大蛇と波が描かれている衝立の向こうからひょっこり顔を出した。
    「また会えたのう、『わし』よ」
     嫌な予感に限って的中する。逃げ出したい時に限って八方塞がりになる状況が嫌になる。
     ひょっこり顔を出した後に嬉しそうな微笑みを浮かべて近づいてくるのは、前髪で顔の左半分を隠した白髪に、藍色の着物を着流しに着た、自分と寸分違わぬ容姿を持つ幽霊族の男だった。
     そう、もう一人の自分。偽物という単純な存在でなく、生きた過程に差違がある、あったかもしれない別の世界の自分。
     本来出会うはずの無い二人だが、以前から奇妙な縁で数回の邂逅を経ている。その時の経験から空間中央に用意された寝具を見た瞬間に、男はもう一人の自分が来る可能性を予期した───のだが、出会いを回避する方法はなかった。
    「……な、何でお主がここにおるのじゃ?!」
     男は吠えるように問い質す。この状況にもう一人の自分が冷静すぎて、それが腹立たしくて男の語気は強めになった。
     男が初めてもう一人の自分ど出会った時も似たような状況だった。なんの前触れもなく『まぐあわないと出られない部屋』に放り込まれた。その後も度々同じ部屋に唐突に放り込まれる事が不定期に起こった。
     今回も今までのそれと非常に類似した事態ではあるが、空間の風景がまるで違う。今までのはただまぐわうに必要なものしかない殺風景な部屋だった。
     それが今回は何かに飲まれるという事象の後にこの状況、この異様な空間。誰にでも妖怪の類いの意図によって用意されたとわかる状況に警戒すべきだというのに、目の前のもう一人の自分は飄々としていて緊張感がまるでない。
    「ん? なんじゃ、蛇殿から話は聞いとらんのか?」
    「蛇…?」
     シュルル、と、もう一人の自分の肩に、赤い眼に金色の鱗を持つ半透明の蛇が姿を現す。普通の蛇ではないのは明らか。妖怪ではあるが男にとって初めて見る妖怪だった。
    「ふむ……とりあえずあそこに腰を据えてゆっくり話そうではないか」
     もう一人の自分は顎で用意された布団を指した。拒む言い訳が見つからず、こうなった理由も知りたいわけで、男は渋々もう一人の自分からの提案を受け入れた。
     下駄を脱いで、畳の上に敷かれた布団へと先にもう一人の自分が胡座をかいて座る。男も後から同じように布団に座るが、もう一人の自分とはあえて距離をとる。
    「で、話とはなんじゃ。わしがどうしてこんなけったいな場所に放り込まれたのか、お主は知っておるんじゃろ」
    「お主今日は機嫌が悪いのう。何かあったかのか?」
    「話を逸らすでない!」
     機嫌が悪いのは今日は今の状況含めて災難が続いたことなのだが、いちいち説明するのが面倒な上に話が拗れそうなので、男は話を急かした。
     もう一人の自分はやれやれと肩を竦めてから説明をはじめた。
    「こちらの蛇殿、もとは西洋に住んでおったが、人間に狙われて狩られそうになり、この国に逃げてきたそうじゃ」
     自身の肩にいる蛇へともう一人の自分が指を伸ばすと、蛇は舌を伸ばしてチロチロと指を舐める。仕草は犬猫が懐くそれに近く、語られる境遇からして悪意をもってこの状況を作ったわけではないのは早急に理解できた。
    「ところがその途中、人間の術によって片割れと別々の世界に飛ばされ、離れ離れにされてしまった。蛇殿にとってその片割れは半身、二匹で一匹となる存在である故、離れたままではいずれ双方消滅してしまう。そこで儂に助けを求めてきたのじゃ」
    「それは……難儀じゃな」
     片割れ、というワードに思い浮かんだのは妻の顔。もしも彼女と離れ離れになってしまらったらと、想像するのも嫌になる。
     想う相手と会いたいときに会えない、傍にいてほしい時にいない。その辛さは嫌という程、目の前のもう一人の自分によって思い知らせている。
     片割れとはぐれてしまった蛇に対し同情し、共感もする。出来ることがあるなら助けたいと男は思い始める。
    「どうすれば蛇殿を助けられるのじゃ?」
    「蛇殿がそれぞれ飛ばされた世界にいる同一人物を体内に取り込み、儀式を行う必要があるそうじゃ。そうすれば蛇殿は元の一匹に戻れる。儂らがここにおるということは既に条件の半分は満たされているということじゃ」
    「ではその儀式とはなんじゃ? わしらは何をすれば良いのじゃ?」
    「簡単な話、まぐわえばよいのじゃ」
    「っ…!」
     あっけらかんと言うもう一人の自分に男は唖然となる。この事態はセッティングされた布団から予想は出来ていたが、いざ突きつけられると驚愕から言葉を失ってしまう。
     そしてある推測が閃き、男はもう一人の自分へとそれをぶつける。
    「お主! こうなることがわかっていて安請け合いしおったな!」
    「安請け合いとは人聞きが悪い。同じ妖怪が人間のせいで命の危機に貧しておるのじゃ。話を聞いて助けたいと思ったのはお主も同じであろう?」
    「それは……そうじゃが…!」
     理不尽にも人間に襲われ、死にかけている妖怪を助けたい。事情を聞かされても男のその気持ちは変わらないのだが。
    「せめてわしの了解を得てからせんか! こっちは背後からいきなり飲み込まれて吃驚したんじゃぞ!」
    「どうやら蛇殿の片割れは人見知りが激しいようじゃ。事情の説明は儂に任されたというわけじゃが───今更助けないなどと言うまいな?」
    「ぅ……ッ…!」
     妖しい微笑みを浮かべて、もう一人の自分は身をのりだし、右手で男の顎にそっと触れる。男は相手のその動作一つさえ艶かしいと思ってしまう自分が憎くなる。
    「彼らにとって切羽詰まった状況、藁にも縋る思いで儂にすがってきたのじゃ。見捨てるわけにもいかんじゃろう。
     それに、考え方によっては一石二鳥ではないか。お主とこうしてまた出会うことができ、儂らが愛し合うことで誰かが救われるというなら」
     良いこと尽くめじゃろう?
     そう耳元で囁かれ、男の背筋はゾクゾクする。恐怖でなく興奮で。
     既に顔は熱を持ち、鼓動が早鐘を打つ。男の理性とは裏腹に体は期待してしまっている。もう一人の自分に愛されることに。
     もう数回繰り返されていることなのに、慣れる事がない。単純な性欲処理ではない行為に、男はいつも心身を酷く乱される。その上で必ず別れが来るのが男には胸が苦しくなる程に辛い。苦しさと辛さと寂しさのあまり、一人涙を流したこともある。
     だからこの時も羞恥心から思わず、殆ど考えなしに、反射的にもう一人の自分を一旦拒んだ。肩を掴んでぐいっと押して、離れてくれと行動で意思を示した。
    「な───何が良いことずくめじゃ!」
     それがよくなかった。片割れの蛇の機嫌を損ねた。
     男の背にいつの間にか宙に浮かぶ鏡が一枚。二匹目の半透明の金色の鱗に赤い眼の蛇が鏡の中から出てくるなり、もう一人の自分が止める間も無く、男のうなじに噛みついた。



    <続>
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