「もう、やめようよ」「おかえりなさい。お義父さん。お夕飯できてますよ」
仕事から帰ってきた水木を出迎えたのは新妻のようなエプロン姿の養い子だった。
「…………ただいま」
幼い見た目に似合わない、なめらかしい微笑みを見せる養い子。もう生まれてから20年は経っているが、未だに彼は10歳程度の姿のままだった。妙に大人びたその眼差しだけが生きた年月を物語る。
「今晩はナスの味噌汁と鮎の塩焼きですよ」
養い子は嬉々としてちゃぶ台に料理を並べる。なんてことない日常的な光景だというのに水木の表情は不安げだった。ふと、料理を並べる養い子の細く華奢な手に目をやると袖口から痛々しい傷跡が見えた。
「…………っ!」
人間でない彼の治癒力は凄まじいため、おそらく切ったばかりだと思われる。
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