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    @side_full 添い寝鋭百

    ##鋭百

    ひとりとひとり 重なった手のひら。空いた方の腕は背中に回って、シャツの中に潜り込む。する、と肩甲骨から背骨の凹みに滑り落ちる滑らかな指先の感覚。半分霧がかかったような状態で、真似をするように相手の背中を撫でた。
     絡み合う脚。踵で相手のふくらはぎをくしくしと擦る。冬の空気に毛羽立った固い踵は、仕事で寄りのカットを撮られることも多いからとハンドクリームでケアをしている指先より刺激が強い。真似されなくてもわかる。
     どこかしらで触れ合って、どこかしらで撫であって。ん、とたまに洩れる吐息も枕に溶けていく。おちていく。そうやってぴったりと重なり合っていると、だんだん身体が液体になって、触れ合ったところから混ざり合っていくような。そんな錯覚が、ひたひたと脳みそを犯していく。

    (……ああ、)

     たまらなく安心する。身体を埋め込み合ってひとつに戻っていく錯覚。別に元々ひとつの生き物だったわけでもないのに。即物的にそれを味わえる、お互いを食い破って飲み込むようなセックスも好きだけど、こうして服を着た状態で触れ合ってるだけでも、じわじわ浸食し合える。そんなところまで、来てしまった。

     ――眠いのか。

     ぽとりと衣擦れと静寂の隙間に落とされた低い声。わざわざ聞かなくてもわかることを口にするのが好きだ。僕も、キミも。緩慢な動作とか閉じかかった目蓋とかを見なくても相手がどんな状態かなんて簡単にわかる。瞬きすら億劫なほど眠気に浸された世界を共有している。ねむいよ、と返せば俺も、と返ってきたから、知ってる、って笑った。
     眠って起きても僕達が別個体なのは変わらない。それでいい。どうやっても最初から二人に分かれてしまってる僕達がひとつに戻ろうとするのは間違っていて愚かで滑稽だけど、それなりに賢いはずなのにどうしてか馬鹿になってしまったキミと一緒に、どうにもならないことをどうにかしようと足掻いて求め合うのは、酔ってしまいそうなほど気持ちいいから。

    「おやすみ、マユミくん」
    「おやすみ、百々人」

     目蓋を閉じれば感じるのは温度と息遣いだけ。それでも同じ速度で眠りに落ちてるのがわかる。うとうとは二倍。すやすやも二倍。とろとろも、くすくすも。キミといれば、全部。
     シーツの温度が肌に同化して、お互いに体温を分け合って。自分の境界線が曖昧になる。ひっついたまま眠りに飲み込まれる瞬間は、昔より見る頻度の少なくなった嫌な夢の中で、あの人たちに突き飛ばされて底のない海に沈む時に似ている。あれと比べれば感情のベクトルは決定的に違ってる。でも。少しだけこわいと思ってて、それなのに抗えない。その感覚だけはそっくりだ。

    (……マユミくんは、どうなんだろう)

     キミが良い夢を見られるようにと願いながら深く息を吸う。
     じわ、と包まれるように上がった体温で、同じことを願ったのだと悟って口元が勝手に笑みを描いた。

     同じ夢を見られるかはわからないけど、同じ願いを持って、違う場所で同じ幸せを噛みしめてくれたなら嬉しい。目が覚めてこの部屋を出たら、どうしたって別個体のアイドルに戻ってしまうのだから。
     オーバーサイズのパジャマの中、ひたりと重なる温度に身をゆだねながら、僕達はとぷんと夢の中に沈んでいった。
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