白昼夢夏の日差しから逃れるように木陰に座り込んだ魏無羨は、目の前に広がる蓮池を見渡していた。空の色を溶かし込んだように青く澄んだ水面の上で、濃く大きな緑の葉とその合間から天へ向かって伸びる薄紅色に染まった花弁が、ただ風に揺られていた。
時折いたずらに吹く風が、魏無羨の頬や黒一色の衣に寄り添うように流れる黒髪をくすぐるように撫でていく。
蓮花塢に帰ってからしばらく経った。
日が出ている間は自室で鬼道の術を思案し試すか、気の向くままふらりと外へ足を運び、思うままに動く。日が出ていない夜は相変わらずまともに眠ることはできていない。
この日はなぜか蓮池が見たくなり、屋敷を出てからどこにも立ち寄らず懐かしい場所への道を歩いた。
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