お題 ソウルメイトお題「ソウルメイト」
おふたりは研究生時代からの仲なんですよね、と担当のライターが言う。ふと隣を見るといつもよりやや口元が綻んでいる男がいる。ええ、と答えるも口の端がやや引き攣る感覚を覚えた。仲の良い同期の『お友達』では、無い。
「はじめて出会った時から亜蝶は完璧でした。」
ライターに答える声の主を、亜蝶は横目で見た。
ライターの質問が終わり、
席から居なくなると亜蝶は口を開いた。
「炎のせいで記憶までいじられたのか?」
亜蝶は、あえてルイの方を向かないでいた。
出会ったときの、燃えさかる札束を見た感想がそれか、と頭の中で呟き、紅茶の水面に映る自身を見た。時間が経った紅茶は少し渋い。
「俺の記憶は確かで、嘘も言っていないはずだが。」
こいつは、と思い言葉を言いかけたが、口がパクパクと動くだけで音は発しなかった。
「完璧で、不完全」
ルイがそう言った後、しばらく沈黙が続いた。
言葉を反芻しているわけでも、返事が嫌になったわけでもなく、思考が水面に落ちたかのようだった。
仲が良いというのは鬨も度々口にするが、良い悪いという以前に、ずっと居る朴念仁のような男である。正直何を考えているのか未だによく分からない。
「亜蝶、多分俺は、
そこまで大したことは考えていない。」
辺りを見渡したが、やはりルイしかいない。
「急に何だ」
「分かりやすいだけだ。」
ルイがフッと笑った後、
肘をどついたような音がした。