記憶は秘色いろ 夕刻頃、鬼太郎がペタペタと歩いていると、古道具屋の店先で水木が店主と話し込んでいるのが見えた。その手に青い茶碗のようなものを持っているのを見て、鬼太郎は顔を歪ませた。
□□なんだぁ、アイツ、また食器なんて買ってもらってるのか。
南天柄の茶碗に杉材の椀、濃紺の箸。
どれも水木が選んで、“ニセ鬼太郎”に与えた品だ。それだけでは無い。薄いが一揃えの寝具もどこからか借りてきたし、届くまでの間は毎夜自分の布団に彼も寝かせていた。
その度に自分はチクリと文句を言い、水木と実父に嗜められていた。その間“ニセ鬼太郎”は、布団に潜り込んで知らんぷりだ。
むしゃくしゃして、蛙の目玉でも食おうかと、河岸を探してみたが不漁だった。湿った足で下駄を履くのを厭い、手にブラブラと携えていると、水木を見掛けたのだ。
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