メスガキ「お好み焼きも焼けないなんておにーさんざぁこ♡」 大学が終わり家でくつろいでいると、呼び鈴が鳴った。何か宅配されるようなものでもあっただろうかと思いつつ、インターホンへと向かい、ボタンを押す。
「おにーさん♡」
えらく媚びたような声が聴こえた。が、まあ幻聴だろう。
「おにーさん……♡」
せつなげな声が聞こえる。先ほどよりも声が近くなっている。まさか俺に話しかけられているわけじゃ……
「おにーさん! 聞いてるの、お・じ・さ・ん!!」
そこでやっと後ろへと目を向ける。赤いランドセルを背負い、長い黒髪を揺らして半泣きでこちらを見つめる少女。見覚えのありすぎる少女だった。
「まだおじさんって歳じゃないからな? ……ないよな、ないと信じたいんだが……」
まだ20代だし、どう考えてもおっさんではないはずだ。……泣きたいのはこっちの方なんだが。
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