ファスト・フレンド(花見)「お花見に行きませんか」
頭上から降ってきた空気に溶け込むような柔らかな声に、睡魔に誘われて意識が波間を揺蕩っていた浦原はすぐに反応できなかった。
「…え?」
少し重い目蓋を押し上げて布団にうつ伏せて枕に顎を突いていた体勢から目線を上げると、こちらを伺うように見下ろす藍染の澄ました笑顔。
パチ、と音を立てて左手の小指の爪が切られ、鑢が皮膚に当たらないよう慎重に、丁寧に整えられる。右手の爪を切ってもらっていたはずなのに、いつの間にかうたた寝していたらしい。
「他人に爪を切られているのに、よく眠れますね」
「藍染サン、器用だから深爪しないでしょ」
「…まあ、そうですね」
「最近忙しくて寝不足ひどいんスよ…。そのせいで疲れマラ?になるし」
6569