Sun to Moon 啓吾と水色と別れてから、夕焼けを背負い、足早に人気のない路地を進む。最近足しげく通っている駄菓子屋はもうすぐそこだ。ここに毎日通う日が来るなんて、二年前の自分には想像もできなかっただろう。開いている戸を潜る。
「浦原さん、いるか?」
「いますよォ」
間延びした声とともに、浦原が店の奥から出てきた。帽子をかぶり直して笑う。
「最近、毎日いらっしゃいますねえ。そんなにうちは勉強捗るっスか」
「まあ、そんなとこ」
嘘だ。それだけじゃない。それを口にする勇気はなくて、適当に肯定する。浦原は、それに満足そうに頷いた。
「じゃあ、今日も頑張ってください。学生の本業は学業っスから」
「サンキュ。…また、分からないところ聞いてもいいか?」
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