ハロウィンパロ「ネロ。口あーってしろ」
ブラッドリーは膝に載せた子どもに向かって厳しい声で命じた。しかし子どもは琥珀色の瞳に涙を溜めたまま、ふるふると首を振って頑なに唇を開こうとしない。細い両腕でコウモリのぬいぐるみをぎゅっと抱え、その頭に口元を埋めてしまう始末である。ブラッドリーはため息を落とした。
年の頃は十を過ぎたあたりだろうか。何しろ拾ったときの年齢が定かではないので、正確なところはブラッドリーにもわからない。薄青い髪に豊穣の麦穂を思わせる瞳。肌はもとより魔族らしく白いが、今は血が足りていないせいでいっそう青白く、病的なほどであった。
子どもは―――ネロは吸血鬼なのだ。
「………ネロ、」
呼びかければ、条件反射的に泣き腫らした顔が上を向く。その機を逃さず、ブラッドリーは華奢な顎を掴んでかぱりと口を開かせた。閉じられないように親指を割りこませ、そのまま咥内を検分するように覗きこむ。
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