展覧会の炎その博物館には炎がある。
厳密には、博物館の外れに建つ鬼狩りの資料館に展示されている。
炎は羽織の形をしていた。
真っ白な羽織の裾には、燃え盛る炎の如き朱色の紋様があしらわれている。
薄暗い展示室で照明を浴びたそれは、淡い光を帯びて静かに佇んでいた。
まるで絶えず炎が爆ぜているような、力強さを内に秘めて。
そんな羽織をガラス越しに熱心に見つめる少年の姿があった。
竈門炭治郎。幼い頃から足繫く博物館に通い、今年17歳になる。
6人兄弟の長男で、毎朝早くから家業のパン屋を手伝っている。しっかり者の高校生だ。
キャプションに「炎柱の羽織」と記された展示物は、炭治郎にとって縁もゆかりもない誰かの私物らしかった。けれど、幼い頃にそれを見て以来、炭治郎の心には確かに炎が宿っている。
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