Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    yuki_no_torauma

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 16

    yuki_no_torauma

    ☆quiet follow

    バンモモWebオンリー「百の恋と万の愛情を2」で企画されたウェディングプチアンソロジーへの寄稿作品です。

    万理さんと付き合ってる百ちゃんが、万理さんからどれだけ愛されて必要とされているのかを万理さんに理解せられるお話。

    年齢制限の問題で、肝心の理解せ部分の描写はぬるめです。

    お題はプロポーズを使用しています

    #百の恋と万の愛情を2
    #バンモモ

    わからないなら教えてあげる 今日は仕事終わりに恋人であるバンさんの家に来ていて、バンさん特製の手料理を食べてお風呂に入って……そのあと程よくお酒を飲みながら、二人で映画を観ようということになった。
    「僕は欲張りだから、キミの全てが欲しくなってしまったんだ。お願い、僕と結婚してくれないか──」
     映画を観るために部屋の明かりを極限まで絞って暗くしたワンルーム。
     爛々と照らされたテレビの中では、『結婚適応期にいる不器用な男女が運命的な出会いを経てからお付き合いし、時にはすれ違いながら、最後は結婚というゴールで結ばれる』という恋愛物にしてはありきたりなお話だけど、主人公たちの心情描写がリアルで、結ばれるまでの道のりが感動的なため、万人の心を掴み去年大ヒットした恋愛映画が映し出されていた。
     映画はちょうど終盤を迎えていて、ずっと彼女に素直な気持ちを伝えられなかった主人公がヒロインにプロポーズするシーンだった。
    「いいの…? 私もあなたみたいな素敵な人を手に入れてしまっても…っ」
     彼女が震える声で主人公にそう問いかけて、主人公は「もちろんだよ」とにこやかに返しながら彼女の指に銀色に光る指輪を通す。
     最初から映画を観ていた側としては、紆余曲折ありながらもずっと不器用に愛し合っていた二人が結ばれて、「本当に良かった…!」という想いが込み上げてきて泣いてしまう。
     主人公のプロポーズが成功し、主人公たちが両親や友人たちに目一杯、祝福されているウェディングシーンと共にスタッフロールが流れ始める。
     自分はこういう感動系には弱いから、ポロポロと流れ出てくる涙をルームウェアで拭いながら、幸せいっぱいのウェディングシーンを眺める。
     主人公たちのウェディングシーンが終わり、文字だけ流れるスタッフロールのみになる。
     そして、文字だけのスタッフロールが終わると、ウェディングシーンから数年が経過したのか、主人公たちは二人の間に生まれた小さな命を大切に抱えて幸せそうに顔を見合わせて笑い合い、唇を寄せ合ったところで映画が終わった。
    「良い映画だったね」
     最後の最後まで、好きな人と付き合って結婚して、好きな人との子宝に恵まれて幸せな家庭を築くという、この世の中で俗に言われる“幸せ”を手に掴んだ主人公たちの物語の余韻に浸っていると、バンさんが照明のリモコンで部屋を明るくしながらそう呟いた。
    「はい…っ! 主人公たちが幸せになって、めっちゃくちゃ良かったです…っ!」
     だいぶ泣いてしまったから、涙声になりながらバンさんの感想に共感すると、バンさんは「百くん最後の方、ずっと泣いてたね」と眉を下げて笑いながら、オレの涙をその大きな手で拭ってくれた。
     バンさんに涙を拭われて優しくなだめるようなキスをされて、(あぁ、この人のことが好きだなぁ……)と強く思うと同時に、オレは、さっきまで見ていた映画のような、好きな人と付き合って結婚して、好きな人との子宝に恵まれて幸せな家庭を築くという、この世の中で俗に言われる“幸せ”をバンさんにはあげられないんだなぁ…という考えが頭の中を過る。
    「……百くん?」
     自分は男だからバンさんの遺伝子を後世に残してあげることも、バンさんと法的に婚姻関係にあると認めてもらえることもできない存在だと実感すると、急に自分の存在がバンさんにとって“悪”であるかのように感じて、後ろめたさを覚えてしまい、先ほどから甘く優しい口付けを贈ってくれているバンさんから顔を背けてしまう。
    「……バンさんと結婚する人は、きっと、これ以上ないくらいの幸せ者になるんだろうな」
     自分でもよくわかっている。五周年を迎えて再会してからお付き合いを始めたバンさんとのこの夢のような関係が、夢と同じでいつまでも続く訳がないことを。
     バンさんも自分も一般世間からは“結婚適応期”と呼ばれる年齢で、バンさんはいつまでも生産性のない自分と一緒にいるのではなく、いつかはオレと別れて綺麗で可愛くて上品な女性と出会って結婚し、可愛い子供に恵まれる。そんな幸せな未来が待っている。
    「え…?」
     バンさんの将来的な幸福を願って思考の深みにハマっていると、頭上から戸惑った声が聞こえてくる。
    「百くん、それって…どういう意味?」
     訝しむような、怒っているような、そんな声が聞こえてきて反射的に顔を上げる。顔を上げると、眉を顰めて怖い顔をしたバンさんと目が合った。
     そこでようやく先ほどの発言が、無意識のうちに口から漏れ出ていたことに気が付いて慌てた。
    「あ、あは…っ、や、やだなぁ! バンさん! 別に今の言葉でそんな怖い顔しなくても…! ──ッ!?」
     オレが慌てて弁解しようとすると、バンさんは急に強い力でオレの両肩を掴んだ。
    「ねぇ、百くん。さっきの言葉、どういう意味かって聞いてるの。俺と結婚する人って百くんのこと言ってるんだよね? なのになんでまるで俺が別の人と結婚するみたいな感じで呟いたの?」
     バンさんに鋭く射るような瞳で見つめられて、オレはそれが怖くてバンさんと目を合わせずに視線を彷徨わせた。
    「だ、だって…バンさんは、いつかオレと別れて、素敵な女の人と結婚して……。好きな人との間に可愛い赤ちゃんができて…っ、それで、バンさんは幸せになって…!」
     バンさんといつかは別れる未来の話なんて、本当は話したくない。でも、将来幸せになっているバンさんの隣に自分がいるところを、想像なんてできなかった。
     バンさんには、さっきの愛と幸福で満ちていた映画のような人生を送って欲しい。オレといたら、世間に偏見の目を向けられたりして、しなくてもいい苦労をさせてしまうし、仮にオレらの関係がスクープされたら、双方の事務所に迷惑がかかるスキャンダルは避けられない。
     ハッキリ言うのなら、オレとバンさんは、本来なら付き合うべき関係ではなかった。なのにオレがバンさんに告白されてその告白を受け入れてしまったのは、オレがみっともなくバンさんを欲しがってしまったからだ。
     バンさんを独り占めしたいという子供みたいな独占欲。最後はお互い傷ついて、周囲に迷惑がかかることをわかっていたのに。
     愚かで欲張りなオレは、この恋人という関係性にバッドエンドが待っていることを知っていて、大好きで憧れだったバンさんを欲しがってしまった。
     オレは、バンさんがいくら好きでも、バンさんのために何もしてあげられない。何も残してあげられない。そんなオレをバンさんがいつか見限るのはわかっているから、最初からバンさんと別れる覚悟で、この甘くてぬるま湯のようにずっと浸っていたくなるような恋人関係になったのだ。
    「……なにそれ」
     オレの話をバンさんは最後まで黙って聞き終わると、怒りを露わにしたように低く呟く。
    「なんで…? なんで俺が百くんをいつか見放すと思ってるの? 俺がいつ、子供が欲しいなんて言った? 俺は百くんさえいればいい。百くんがいなくちゃ意味ないのに。なんで俺といつか別れるなんてそんな悲しいことを言うの? 俺は百くんを手放す気なんてさらさらないのに」
     バンさんが怒ってる。怒ってるのに泣きそうな、今まで見たことのない表情をして、早口でオレを捲し立てる。
     バンさんが今はオレを手放す気なんてないと言ってくれていても、明日になったら正気に戻ったバンさんがオレに別れを切り出す可能性だってある。だから、そんな考えを持つオレにはどう声をかけたら良いのかわからなくて、ただひたすらにバンさんの悲痛な表情を見ていたくなくて俯いた。
    「……百くんは俺のこと、本当はそんなに好きじゃない…?」
    「──ッ、そんなわけ…!!」
     バンさんに「俺のこと、好きじゃない…?」そう問いかけられて、咄嗟に顔を上げて大声で叫んだ。
    「そんなわけない…っ! オレが、バンさんのこと好きじゃないなんてこと、ないに決まってる…!」
     バンさんのことは、好きだ。大好きだ。好きなんて言葉じゃ言い表せないほど、心の底から愛してる。
     だから、だからこそ、オレはバンさんに世の中でよく言われる“幸せ”をあげられないことに苦しんでいるし、オレといても一生幸せになれないと気がついたバンさんに、いつか捨てられると思っているのをわかってほしい。
    「俺だって百くんのことが好きだ。百くんがいなくちゃ俺は幸せにはなれない。百くんがいるから俺は今、幸せなんだよ? ねぇ、俺の気持ち、わからない…?」
     強く握られていた肩から両手が離れて、片手を取られて指を絡めるように繋がれる。バンさんはオレの気持ちを確かめてくるような、伺うような目をしてオレを見つめた。
     オレは、バンさんの主張しているオレを想う気持ちは、永遠を約束できない今だけのものとしか思えなくて、泣きそうな声で「わかりません…っ」と否定する
    「ねぇ、百くん」
     オレの言葉を聞いてバンさんは苦しそうに表情を歪め、今まで聞いたことないようなこちらを問い詰めるような声で、バンさんはオレの名前を呼ぶ。
    「百くんがどれだけ俺から愛されてるのを自覚してないのか、よくわかった」
    「え…? バン、さ…っ !?」
     繋がれていた手を急に引かれてバランスを崩した体を引き寄せられ、体の距離が近いと感じるよりも先に荒々しく唇が塞がれた。
    「ん、ふ…っ、う、ぅ…っ」
     バンさんは怒っているからなのか、怖いくらい力強く体を抱き込んできて、有無を言わさずにキスしてくる。
     普段優しくてジェントルなバンさんとは様子が違うことに怖がったオレがいやいやと首を振って抵抗しようとすると、「逃げないで」と鋭い目つきでこちらを睨んでから舌先を口内に侵入させ、さらに深く口付けた。
    「んん…っ、むぅ…っ! ん、ん…っ!」
     くちゅ、ちゅ、と口元から水音が鳴って、長いバンさんの舌に奥で縮こまっている舌を絡め取られる。
     普段のバンさんなら絶対にしないような、舌がもつれて酸欠になってしまう深くて直情的なキスに頭の中がクラクラとしてくる。
     決して乱暴ではないけれど、思いを丈をぶつけられるようなキスから逃げたくて身を捩る。
     けれど、その抵抗も虚しく、ゆっくりと体をソファに押し倒されて本当に逃げ場が無くなってしまい、バンさんからのキスを受け入れるしかなくなってしまう。
    「ふふ、百くん。キスしただけなのにすごい顔」
     バンさんからのキスひとつでくたりと体の力が抜けてしまったオレを見て、バンさんが悪戯な笑みを浮かべてオレを見下ろす。
    「ねぇ、俺の幸福も人生の意味も、全部百くんから与えられるモノだけで成り立っているし……。百くんが恋人の俺にしか見せない声も顔も言葉も全部、俺だけのモノだって、百くんがいないと俺は幸せにはなれないって、ココに、刻みつけて教えてあげるから……」
    「ぅ、あ…っ、バン、さ…っ」
     するりと下腹部辺りを服の上から撫でられて、くすぐったさからビクリと体が跳ねる。
     そのまま下腹部をさらさらとなぞるように触れていた手が、いつも行為の時にバンさんのモノが突き当たる辺りをグッと軽く押し込む。
    「──ベッドに行こう」
     そう耳元で吹き込むように囁かれて、息を呑む。
     オレが返事をするよりも先にバンさんに体を抱き込まれて、決して軽くないオレの体が、バンさんの手によって宙に浮いた。



     * * *


    「ん…、んぅ…っ」
     ベッドのすぐ側にある大きな窓のカーテンから漏れる光が眩しくて、寝ぼけたまま唸る。
     昨晩、散々バンさんに『オレがどれだけバンさんの人生における幸せに関与していて、どれだけオレがバンさんに愛されているのか』を理解させられた体と心がふわふわ漂うまま、ゆっくりと意識が浮上した。
    「おはよう、百くん」
    「おはよう、ございます…バンさん……。」
     眠たい瞼を擦ってぱちぱちと何度か目を瞬かせると、オレより先に起きていたバンさんと目が合う。
     昨晩バンさんがオレを抱く前に纏っていた怒っているようなオーラはもう無くなっていて、いつもの優しい瞳をしたバンさんがオレを見つめていた。
    「昨日はごめんね。百くんにたくさん無理させちゃって……。体、大丈夫…?」
     困ったような笑みを浮かべて、気遣うようにバンさんがオレの腰をゆるくさすってくれる。
     オレがバンさんにいかに愛されているのかを自覚していなかったから、いつもはジェントルで優しいバンさんをあんなふうになるまで追い詰めたのに、バンさんはこんな時でもオレに優しい。
    「えっと…正直体はだるいんですけど…でも、その、オレは嬉しかったです。バンさんにたくさん求められて、与えられて、オレってこんなにバンさんに愛されてるんだな…ってわかったから……。」
     バンさんが昨晩のことを申し訳なさそうにしてくるから、オレは精一杯の大丈夫と、たくさん愛を伝えてくれてありがとうの気持ちを伝える。
    「百くん……」
     バンさんはオレの言葉を受け取って、瞳を潤ませながらオレの名前を呼ぶ。
    「ねぇ、百くん。起きられる?」
     バンさんがゆっくりとオレの体を支えながら起き上がってから、オレを置いてベッドを降りた。
    「……本当は、いつか渡そうと思ってて、でもまだ早いかな…って思ってタイミングがわからなくて、ずっと渡せずにいたんだけれども……」
     バンさんはそう言いながらベッド横に付いている棚の引き出しから、見たことのない小さな箱を手に取った。
    「百くんが、ずっと俺のそばにいてくれるように…って、俺が百くんを不安にさせないようにたくさん愛を伝えて、百くんをこの世で一番の幸せ者にする。だから──」
     数々の恋愛ドラマや映画で観たこと、聞いたことのあるようなセリフがバンさんの口から紡がれていき、オレはこの後続く言葉を想像して、息を呑みながらバンさん口から紡がれる次の言葉を待った。
    「──俺と結婚してください」
     バンさんが両手で開いた小さな箱の中で、キラリと銀色の指輪が朝日に照らされて光った。
     例え、オレたちの関係が法律ではまだ認められない関係だったとしても、好きな人から永遠の愛を誓うプロポーズをしてもらい、これ以上ないくらいの多幸感を胸に秘めて、堪えきれずにこぼした涙を拭いながらオレは答えた。
    「……っ、もちろんです…っ!」
     オレがそう答えると同時に、涙で濡れた唇が塞がれて左手の薬指に硬くて冷たい感触が指を通る。
     オレとバンさんがプロポーズを通して重ねた唇は、この世のどんな誓いのキスよりも清廉で潔白だった。

    おしまい
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💒💒💒😭😭😭👏👏👏👏💯💒❤💒💒💒💒💒💒😭👏👏👏🍑💙👏👏👏👏👏💒💒💒
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    yuki_no_torauma

    DONEバンモモWebオンリー「百の恋と万の愛情を2」で企画されたウェディングプチアンソロジーへの寄稿作品です。

    万理さんと付き合ってる百ちゃんが、万理さんからどれだけ愛されて必要とされているのかを万理さんに理解せられるお話。

    年齢制限の問題で、肝心の理解せ部分の描写はぬるめです。

    お題はプロポーズを使用しています
    わからないなら教えてあげる 今日は仕事終わりに恋人であるバンさんの家に来ていて、バンさん特製の手料理を食べてお風呂に入って……そのあと程よくお酒を飲みながら、二人で映画を観ようということになった。
    「僕は欲張りだから、キミの全てが欲しくなってしまったんだ。お願い、僕と結婚してくれないか──」
     映画を観るために部屋の明かりを極限まで絞って暗くしたワンルーム。
     爛々と照らされたテレビの中では、『結婚適応期にいる不器用な男女が運命的な出会いを経てからお付き合いし、時にはすれ違いながら、最後は結婚というゴールで結ばれる』という恋愛物にしてはありきたりなお話だけど、主人公たちの心情描写がリアルで、結ばれるまでの道のりが感動的なため、万人の心を掴み去年大ヒットした恋愛映画が映し出されていた。
    5930

    related works

    yuki_no_torauma

    DONEバンモモWebオンリー「百の恋と万の愛情を2」で企画されたウェディングプチアンソロジーへの寄稿作品です。

    万理さんと付き合ってる百ちゃんが、万理さんからどれだけ愛されて必要とされているのかを万理さんに理解せられるお話。

    年齢制限の問題で、肝心の理解せ部分の描写はぬるめです。

    お題はプロポーズを使用しています
    わからないなら教えてあげる 今日は仕事終わりに恋人であるバンさんの家に来ていて、バンさん特製の手料理を食べてお風呂に入って……そのあと程よくお酒を飲みながら、二人で映画を観ようということになった。
    「僕は欲張りだから、キミの全てが欲しくなってしまったんだ。お願い、僕と結婚してくれないか──」
     映画を観るために部屋の明かりを極限まで絞って暗くしたワンルーム。
     爛々と照らされたテレビの中では、『結婚適応期にいる不器用な男女が運命的な出会いを経てからお付き合いし、時にはすれ違いながら、最後は結婚というゴールで結ばれる』という恋愛物にしてはありきたりなお話だけど、主人公たちの心情描写がリアルで、結ばれるまでの道のりが感動的なため、万人の心を掴み去年大ヒットした恋愛映画が映し出されていた。
    5930

    recommended works