はなはきやまい発生した微小特異点から帰る途中、マスターと、同行していたサーヴァントの内数名が発症した。
突如花弁を口から吐き出すやまい。
その中には特異点へマスターと同行していた、斎藤一も含まれていた。
症状を発症した者は帰還後、医療室で綿密な検査を受けた。
診断結果は特異点を発生させた聖杯からの影響であること、数日で消える一過性のものであること、
花びらを吐くということ、それ以外の症状は現状確認できないとのことだった。
数日は安静にと、マスターの藤丸と数名のサーヴァントは医療室で過ごしたのち特異点へのレイシフト及び戦闘行為は行わなわずに過ごす様、指示を受けた。
「うーんと、」
カルデア内にある施設の一つ、図書館。そこで、目の前にずらりと並ぶ並ぶ本達を前に首を傾げている少年がいた。マスターの藤丸だ。
咳をすると一緒に、なぜか各々違う種類の花びらが、ぱらぱらと落ちていく。
病自体は時折、咳き込むくらいでほかに体の不調はなく、微小特異点で聖杯を得た際、魔力の残滓にあてられた結果であろうと判断された。
「どうしたのマスターちゃん。探し物?」
藤丸の背後から声をかける男。
短髪、黒いスーツに日本刀を腰に携えている。
「はじめちゃん。」
少年は振り返ると同時に声をかけた男の名を呼ぶと、う〜ん。と眉を寄せ目を閉じ困ったというジェスチャーをする。
「この咳をすると花びらを吐くっていう病いのことなんだけど。」
「へえ。もしかして調べてるの?真面目だねぇ。」
コツ、と革靴を鳴らし歩み寄り藤丸の横に並び立ち本を眺めている。一緒に調べてくれるつもりなのだろうか。
「いや…なんだか、知ってるきがして。」
「そうなの?」
男は自分より幾分か小さい彼をみつめて問いかける。
花を吐く病い。
花弁の大小、色は各々ごとに違う。舞った花びらはしばらくすると、跡形もなく消えていく。
「現実にあるような病気かねえ?」
おもむろに棚の一冊に指をかけ引っ張り出そうと放った一言に、藤丸は瞠目した。
「あっ!!」
ーーーーーーーーーーーーー
藤丸が言うには、とある創作上の物語の中に存在していたそうだ。
今は白紙化され、その綴られた物語もなくなってしまった。
それによると、その病にかかってしまう者には条件があると。
「ー花を吐く条件、ねえ…。」
斎藤は藤丸と別れ、1人廊下を歩いていた。
部屋へ続く道すがらぽつり、小さく独り言を呟く。
それは誰かに聞かれることもなく空気に溶け込み、残るのは足音と静けさだった。