犬猿お盆ネタ【猿死亡if】じっとりと暑い八月中旬、蝉のうるさい合唱を聞き流しながら狗井は退路を行く。
もう今日はいいから、と早めに帰された今日。もうすぐ夕方だと言うのにまだ暑さが和らぐことは無いようだ。
こんな時アイツならなんと言うだろうか。
なんてどうしようもないことを考えながら玄関までたどり着いた時、トントンと肩を叩かれる。背後に立たれるまで何の気配もしなかったことに驚きながら振り返ると見知らぬ男が野菜を持って立っていた。
「……なんか用ですか」
「いえ、隣に引っ越してきたので挨拶に。」
「そうですか…」
なんだそんなことかと中へ入ろうとした腕をああ待って、と引かれる。うんざりしながら振り返ると男はきゅうりとナスが入った袋を差し出してきた。
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