「あ。プロセラ」
涙とダンスレッスンから帰る途中で呼び止められる。声の主の方を向けば見覚えのある顔だった。赤みの強い茶色の髪に目尻の上がった元気な瞳。確か……
「VAZZYの……」
「大山直助」
涙が名前を呼ぶと少年は嬉しそうな表情をした後にすぐそれを不満そうなものに変える。
「ナオです、ナオ」
そういえば本名で呼ばれるのが好きじゃないらしいと誰かから聞いた気がする。そして、実際にナオと呼んでくれている人が少ないという事も聞いた気がする。
「ごめんごめん。えーと、君もレッスンに来たの?」
「そうです!俺たちはこれからで!」
「へえ、頑張ってね」
「はい!」
元気な返事に郁は自分たちの頃を思い出して懐かしさを感じた。
798