【夏の水父短編集】水父
【夕涼】
暑い昼間に比べて流石に日の傾く夕方は幾分涼しい。
それでも『幾分』なので暑いは暑い。
セカセカ外で汗を流して帰路に着く頃は朝着ていたYシャツが張り付いてうっと惜しい。
しかし帰宅した所で我が家にクーラーなどと言うハイテクな物は無く、扇風機で僅かばかりの涼を浴びる事になる。
とりあえず先ずは水風呂で身体を冷やしてからだろうな。
やっと愛しい我が家の玄関を開け放つ。
するとヒヤリと涼しい風が内側から漂って来る。
内側から?
クーラーなど無いはずだが?
「おぉ帰ったか水木」
「ただいま…なんだかやけに涼しいが…」
「今日は良い風が入る。縁側を明け放てばこんなにも涼しい」
今迄自宅にいてこんなに涼しいと思った事があっただろうか。
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