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    huhaitya

    @huhaitya

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    huhaitya

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    水父
    2024年夏企画に参加させて貰った短編集です。
    短い物だらけです。
    ほんの一部だけモブ父匂わせと水目。
    父が獏なパロディあります。

    パスはWebオンリーサークル説明欄をご確認下さい。

    #水父

    【夏の水父短編集】水父

    【夕涼】

    暑い昼間に比べて流石に日の傾く夕方は幾分涼しい。
    それでも『幾分』なので暑いは暑い。
    セカセカ外で汗を流して帰路に着く頃は朝着ていたYシャツが張り付いてうっと惜しい。
    しかし帰宅した所で我が家にクーラーなどと言うハイテクな物は無く、扇風機で僅かばかりの涼を浴びる事になる。
    とりあえず先ずは水風呂で身体を冷やしてからだろうな。

    やっと愛しい我が家の玄関を開け放つ。
    するとヒヤリと涼しい風が内側から漂って来る。
    内側から?
    クーラーなど無いはずだが?

    「おぉ帰ったか水木」
    「ただいま…なんだかやけに涼しいが…」
    「今日は良い風が入る。縁側を明け放てばこんなにも涼しい」

    今迄自宅にいてこんなに涼しいと思った事があっただろうか。
    なんて勿体無い事をしていたんだろう。
    開け放たれた縁側から夏の虫の音とサラサラと葉音と共に家中を駆け巡る。
    人口ではない、自然から生まれる風が暑く火照った仕事帰りの身体を包む。
    突然人間界から切り離された別の世界のような感覚だ。

    「さて、それではお主は早よ湯に入って汗を流す事じゃな。その頃にはよく冷やした冷麦が出来上がるぞ」
    「冷麦が。夏って感じだな 」
    「そして冷えた井戸で瓶ごと冷やした天狗の冷酒が風呂上がりのお主を待っておるぞ」

    それを聞いてこれはウカウカしてられん、と風呂場へ走る出る。
    アイツは本当に俺を動かすのが上手い奴だ。

    「それに、ワシの準備も出来ておる」

    本当に俺を動かすのが上手い奴だ。
    さっきまで冷麦よりも酒を求めて動いた身体が瞬時に別の物を求めて躍起になる。
    先程までの暑さで落ちた気分が嘘の様。
    今は大事な仕事着を破り捨てて早くカラスの行水を済ませたくて仕方ない。

    食べ頃に冷えた冷麦よりも、キンキンに冷やした天狗の冷酒よりも、人よりは冷えてはいるがどれよりもぬるいはずのお前を早く味見したくて堪らない。

    夕涼のいい風通る快適な場ならばそれはそれは盛り上がるだろう。


    【短夜】

    夜は短い。
    ワシら妖ならば夜が主な活動時間である故に長く感じはするが、人間と共の夜は短夜。
    朝起きて、出勤をし、仕事をこなし、くたくたで帰ってくる人間に夜遅くまで共に過ごせと言うのは酷である。
    それでも傍に居れるだけで儲けもの。
    夕食を食べ、子を寝かせ、2人きりの晩酌が短い夜の中のワシの幸せ。
    その後に寝落ちる水木の寝顔を眺め、布団を掛け、この幸せが続く事を願い、明日のこの時間を待ちわびる。
    こんな一時の夜を楽しむワシは贅沢者である。

    朝起きて、いつもの如く寝落ちた自分を恥ながら朝食を食む水木の椀に飯を盛りながら、何時もの語らいをして仕事へ送る。
    天狗の酒は美味いが飲みすぎてしまうから、今夜は別の酒にしようか。
    今夜の晩酌のツマミは何にしようか。
    シジミ汁の用意も早めにしておこうか。
    魚屋へ行くのなら、夕飯は魚にしてしまおう。


    「明日は休みだから、今夜は長くなるぞ」


    先程まで順調に脳を駆けていた思考が、もう何も思いつかなくなってしまった。

    今夜、短い夜は来ないらしい。


    【夏霧】

    これは夢だと分かる時がある。
    あの子を抱き上げた寒い冬ではなく、夏らしいむわりと香る夏の匂い。
    前方がうっすら見える程の霞なのに、何故か目の前の人物の表情は見えない。
    一体何者でどんな人物なのか分からないのに、何故か泣いているのではないかと心配になる。
    出会った事が無い筈なのに。

    ぼやける景色が霞なのかそれ以外なのか。
    かき分けて、掻き抱いて、消えない内に捕まえたくて。
    どうしてお前は今傍に居ないんだと怒鳴りつけたくて。
    手を伸ばして掴み取りたいのに掴むのは霞ばかりで。
    霞の風景がだんだん桜の花びらへ変わっていく。

    「みずき」


    「水木、夢を見ておったのか?」
    「……わからん。見ていた気がする…」
    「頬が濡れておるぞ」
    「……本当だ」

    何の夢を見たのか全然思い出せなくて。
    枕元にいる不安そうな小さな存在を強く強く抱き締めたくなる衝動を抑えて、濡れてる頬を腕で拭う。
    何故か覚えている夏の匂いを朝方の冷える冬の匂いがかき消していくのを感じてる。

    外を除くと見える冬霧を見つめて、また自然と頬を何かが伝わる気がした。


    ※少しモブ父匂わせ
    【ひとつになりたい程に暑く】


    あまりにも暑い夜。
    その暑い暑い夏の夜で更に熱く火照るこの晩に、どちらの汗かも分からないくらいに交わり混ざり、上も下もわからない。
    お主がワシと『ひとつになりたい』と言ってきた時からこうなるのだと分かっていたのに。

    ワシには人間程熱らしい熱は無い。
    『幽霊』の名の如く、この身の熱は熱と言えぬ程冷え切りかつては死体を相手していると言われた事もある。
    それを好む異常者が居ない事もなかったが、相手の割にワシの方は冷えきっていた。

    そんなワシがこんなに熱に浮かされる。
    自分の冷たい体温が水木の体温で上書きされる。
    熱が移り、馴染み、溶けてしまいそうな熱い夜。

    あぁこんなに熱く交わってしまったら、名実共に『ひとつになって』しまう。
    交わり過ぎて一つになって、お主の中に取り込まれてしまいたい。

    こんな熱い夜は何もかも忘れ去って、ただひたすらにこの熱に魘されたい。


    【待宵】
    父が獏のパロディ

    ワシは夢を食らう『獏』である。
    浅ましく人の夢を食らう存在である。
    普通の獏ならば幸せな夢を食料として食らうであろうが、ワシは人の『悪夢』を食らう。
    それは決して美味いわけはない。
    苦く、苦しく、時には痛い、酷い『悪夢』をワシは食らう。
    昔は普通に人の夢を食らっていたらずが何時の間にか『悪夢』ばかりを食していた。

    ある人間の毎夜起こる『悪夢』を食らう為にワシは今宵も訪れる。
    何度食らっても食らっても再び魘される『悪夢』を食いにワシは訪れる。
    人が見るには余りにも無慈悲な、辛く、熱く、苦しい『悪夢』
    自分を殺せと叫ぶ『悪夢』をワシは食らう。

    前のワシの髪は白かった。
    何時しかワシの髪が黒くくすんで来た。
    きっと毎夜の『悪夢』なせいか。
    それでもワシは食らうのを辞めない。
    この人間の『悪夢』を全て食い尽くすまではまだ辞めない。
    髪は黒くなり肌は黒ずみ姿形が変わりかけても、ワシは『悪夢』を食らい続ける。
    何故こんなにも続けているのかは自分でも分からない。
    自信の身が朽ちかけても、ワシはこの人間の『悪夢』を食らい続けよう。


    毎夜の如く奴はやって来る。
    気がついたのは本当に最近で、いつもの如く魘され汗をかく寝苦しい夜が始まると奴はスルリと近づいてくる。
    浅い眠りで気配だけを感じるソイツは俺の額を幼子の様に撫で付ける。
    先程までの苦しかった気分が晴れていく。
    その後奴は直ぐ様その場を離れてしまうのを俺は目も開ける事が出来す、夢を見ないほど深い深い眠りに誘われてしまう毎日。
    毎夜来ているだろうとわかっていても、どうしても身体は眠りにつこうと動かせないでいた。

    今宵もまた奴は来る。
    何時もなら眠っている時間帯。
    俺はどうしてもソイツを繋ぎ止めたくて寝たフリをする。
    スルリ近寄るソイツは俺が寝ていないのに気づいて直ぐに踵を返そうとソイツの腕を掴んで抱き寄せる。
    最初に感じた時よりも細く、薄く、消え入りそうな。
    そして明かりのない暗がりの闇よりも更に『黒い』その存在。
    ずっとずっと話したくて仕方なかったソイツは俺のまさかの行動に動揺を隠せないでいた。
    離れて欲しくなくて掴んだ細い折れそうな腕にまた少し力を入れる。

    「驚かせて悪かったが逃げないで欲しい。お前はずっと俺の元へ尋ねていたのか?」
    言葉は帰って来ずに、少し遅れてコクリと首が動く。
    「何故俺の元へ来る?」
    それには何も反応出来ずに俯いてしまった。
    「アンタが居なくなると身体が軽くて夢も見ない。まさか今までの『悪夢』をアンタは取り除いていたのか?」
    今度はビクリと肩が動いてからゆっくり首が縦に動く。
    あぁコイツのお陰で俺は酷い夢を見続ける事が無かったのか。
    それは何とも…

    「悪いが…この『悪夢』はこれからはもう食わないで貰いたい」

    初めて黒いソイツが振り向いて俺の顔を凝視する。
    全身黒い存在の中にある、赤い瞳らしき物。
    それが心底理解できないと言う様に目で訴えかけている。
    これだけで感情が読み取れるだなんて、コイツは結構分かりやすい奴なのかもしれない。

    「この『悪夢』は絶対過去を忘れない様にする為の記憶だから。仲間と共に死ねなかった弱い俺の罰でもあるんだ。出来ればこれ以上食わないで欲しい」

    黒い細い存在は困った様に俯いて、コチラも困ってしまう。
    どうして俺の『悪夢』なんて食すのだろうか。

    「ワシはこうするしか分からん。お主が魘される姿を見たくなかった」

    俺より身体はデカイがか細い声は、戸惑って迷子の子供みたいに小さい存在に感じる。
    顔も髪も身体も黒く、ただ色のある赤い瞳からポロリポロリと透明な雫を零す。
    黒い姿から溢れ出すソレは何よりも綺麗で透き通っていた。
    こんなにも綺麗な涙が生み出される存在が何故にこんなに黒いのか。

    「……もしかして、俺の『悪夢』を食い続けたせいで黒くなっているのか…?」

    何も言わずにただ涙をハラハラ流す。
    あぁ、この黒い存在はなんて綺麗なんだろか。
    この胸の温かさは何だろうか。
    今だに溢れる涙を指の腹で拭い片腕は逃げ出さない様に強く引き寄せる。

    「『悪夢』はもう食わなくていい。その代わり眠る間傍にいて欲しい」
    「…?」
    「分からんって顔だな。真っ黒でもわかるぞ。わからなくていい、ただこのまま傍に居てくれ」

    少し強く抱き寄せると、たどたどしく抱き締め返してくる。
    こんなにも黒く冷たい存在なのに『暖かい』


    それからその黒い存在は毎夜俺の元へ変わらず通う。
    それがなんとも『通い妻』の様で心がザワつく。
    あれから不思議と『悪夢』を見る頻度は減った。
    その存在曰く、ほぼ毎晩魘されてた俺が嘘の様にらしい。
    俺はなんて薄情な奴なのだろう。
    『悪夢』を食わなくなったアイツに俺の『悪夢』以外を食えばいいと促す。
    最初はいい顔をしなかったが『食われる』側の俺の方が強く押したら頷いてくれた。
    それでも多くは取らずに少しで済むらしい。

    分かってきたのはアイツが『悪夢』を食わなくなっていくと、少しづつ黒さが薄くなってきていた。
    少しづつ少しづつ黒が剥がれて見えてくる真白。
    こんなに綺麗な白が俺の『悪夢』で黒く染めていたのと気づくと、罪悪感の裏側に満足感が存在してしまっていた。
    コイツを俺で染めていたと思うと、男というのは直ぐに調子に乗るものだ。

    アイツの膝に頭を乗せて今日も寝る前の微睡みに幸福感で満たされる。
    手を伸ばしすっかり白く戻った白髪をサラリと撫でて目を合わせれば、アチラの方が目を逸らす。
    その仕草が余りも情を掻き乱してくるものだから抑えるコチラの事を考えて欲しい。

    「最近は俺の夢を食えてるか?」
    「その事なんじゃが…」
    「どうした?」
    「最近お主が見る夢が『悪夢』では無くなってきたじゃろ?その夢の『性質』が変わってきているみたいなのじゃ」
    「寝ている本人は全然自覚が無いんだがな」
    「それがの…なんとも『色』の濃い夢が続いていての…『悪夢』ばかり食うてきたワシにはあまりにも『味が濃くて』参ってしまいそうじゃ」
    「いろ」
    「『味が濃くて』『熱くて』ワシも熱くなってしまう…このままでは『獏』ではなく『夢魔』になってしまう…」

    自らの腹を抑えて目を伏せる姿を見ていて、もう抑えれる理性なんて飛んでいた。
    座るアイツをその体勢のまま真後ろの布団に縫い付ける。

    「『夢』ではない本物を味あわせてやろうか?」

    『獏』だろうが『夢魔』だろうが、さして問題ではい。
    白から黒になってしまったコイツをまた白へ変え、そして今は俺の真下で桜色。
    『夢』を食うアイツに別のモノで腹を満たしてやる。
    『食う』側から『喰われる』側へ。

    何時もは朝起きると居なくなるコイツが俺の布団の中で眠って一緒に朝を迎えれるというのは、なんて幸せなんだろう。

    『通い妻』ならぬ『通い獏』は今日でおしまい。
    もう待宵は来ず。


    【夏野菜】

    採れたて新鮮。
    先程まで冷えた水に使っていたそれぞれはツヤツヤで。
    調理するのが勿体ないくらい。
    ワシらには生でも勿論美味しいがやはり人間は火を通した方が食べやすい。

    茄子・パプリカ・ズッキーニ・玉ねぎ。
    様々な夏野菜をそれぞれ一口大に。
    にんにくは背の腹で潰す。
    オリーブオイルで潰したにんにくを熱して、炒まってきたら野菜を入れる。
    それぞれしんなりするまで火を通し、缶ずめのトマト缶を丸々入れる。
    味を見て、少し塩を足して煮込めば完成。
    今は便利な物が多くて良い。

    流石にこれだけでは腹持ちは良くない。
    暑い夏でもやはり肉はなければ。
    鶏胸肉を塩茹でにして水気をしっかり取る。
    触れる温度になれば後はひたすら、裂いて裂いて解しておく。
    次はキュウリとトマト
    裂いた鶏肉と同じくらい細く細く千切りに、トマトはくし切りに。

    赤と緑と白と色鮮やかなそれを綺麗に皿に盛り付け、醤油、砂糖、酢、擦った生姜とにんにくゴマを混ぜで盛り付けた鶏肉にタップリかける。
    香るゴマが食欲を唆る。
    ご近所さんから教え込まれた数々の料理を活かせれる日が来ようとは。

    さてさて、夏の暑さでやられながらも腹を空かせた愛しい家族へ、急いで持っていかねば飛びかかって来てしまう。
    夏野菜をじっくり煮込んだラタトゥイユとゴマダレさっぱり棒棒鶏。
    カボチャの薄切り味噌汁と山盛り白米。
    食後に出すスイカもよく冷えておる。


    「さぁ、食事にしようかの」


    夏はまだまだ始まったばかり、しっかり栄養を付けんとの。


    水目
    【鎮魂/打ち上げ花火】


    薄暗くなる夜空に打ち上がる大輪の火花を俺は目玉と見つめる。
    屋台だ祭りだと騒いだ後の花火はその楽しみが終わってしまうという悲しみもある。
    大空に打ち上がり、弾けて広がったと思ったら直ぐに散る。
    どの花よりも儚いものだ。


    「綺麗じゃなぁ」
    「あんなに音にビビり散らかしてた奴が」

    さっきまで貪っていた苺飴でいっぱいだった腹を突く。



    「仕方なかろう!こんな小さい存在でアレだけ大きい音がすればびっくりもするじゃろ!」
    「それもそうか。まぁ俺も戦後まもなくは俺もこの音には恐怖したもんだがな」


    戦争で耳にした様々な爆撃音は今も耳から離れない。
    戦後帰還後はその音と仲間の悲鳴と敵の悲鳴を耳に残した生活は酷い物だった。
    全ての音にも恐怖したのが懐かしい。
    今は聴き逃しそうになるくらい小さな鼓動を肩越しに、たわいの無い話が出来るなんて幸せだ。


    「花火は本来『鎮魂』の意味もある」
    「『鎮魂…』」

    鎮魂。たましずめ。死者の霊を慰める。
    この花火でかつての仲間達も鎮められているだろうか。
    生き残った俺を恨んでいて欲しいと言う傍らに、やはり鎮まって欲しいと言う気持ちもある。
    花火と共に上へ登って行って欲しい。


    「鬼太郎達も見ているじゃろうか」
    「見ているだろうな」
    「妻も見ているじゃろうか…」
    「……見ているだろうな」


    全ての魂が鎮まる事を祈って。
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