⑦ メンタルやられて一時期盲目になる(自由前メンタルギリギリ准将軸のイザキラ) 最初は少しの違和感だった。
大戦を終わらせ、数多の犠牲も出しながらも、デュランダル議長の提示したデスティニープランを否定し彼を討った。キラが直接というわけでは無かったものの、否定し彼を討とうとしたのは事実だった。
僕の手はたくさんの人の血に塗れている。それを忘れた事はない。
戦後ラクスがプラント評議界入りてして、キラもまたラクスを支える為にオーブ軍の准将としての肩書きも持ちながら、ザフトへ出向し指揮官クラスの白い軍服を身に纏っていた。
フリーダムのパイロット。2回の大戦を収めた英雄の1人。大半はそういう見方でキラに接する人達ばかりだった。
だが、中にはキラを敵視する視線が有るのは仕方がない事だ。
キラの起こした行動で、巻き込まれて亡くなった人も沢山居たのだ。それに対して、キラは言い訳するつもりも、戦争だから仕方がなかったと割り切ることも出来ていなかった。
元々軍人としての訓練を受けていないままここまで来た為、軍人としての心得も理解しないままフリーダムで戦場を駆け抜けた。
前回の戦後はぼんやりと日々を過ごしていたが、今回は自らの意思で軍に入った事も有り、自分が頑張らないとと己に枷を嵌めていた。
脅迫概念めいたその考えは、自身をどんどん追いやっているのは分かっていたが、ピリついた視線を感じる度に、認めてもらう為には頑張るしかないと自分に言い聞かせた。
そんな時、目が時折霞むようになった。
初めはただ疲れ目のせいかと思っていた。目を擦ると直ぐに元に戻っていたから、気の所為だと気にしてなかった。
でも、最近は気の所為と言えなくなってきた。
少しでも暗い場所に行くと全く見えなくなった。自分の手を目の近くに持って行っても見えないのだ。
本当ならきちんとメディカルチェックを受けるべきなのだろう。でも、まだ大丈夫と誤魔化した。
キラの隊に入ってくれたシンやルナマリアにはバレないようにどうにか誤魔化していたが、ここ数日の間で状況は更に悪化した。
「⋯⋯」
どうしよう。何も見えない。
つい先程まではぼんやりと見えていた視界が、闇に飲まれて何も見えない。呆然と立っていると、背後から肩を捕まれた。
「何をしている!? こんな廊下のど真ん中で突っ立つんじゃない!」
この怒った声はイザークだ。
「あ⋯⋯ご、ごめん」
とにかく謝ってイザークから離れたかった。イザークにはこの状態を知られたくは無かった。
少し探るように手をさ迷わせ壁に触れる。壁伝いに歩けば移動は可能だろう。イザークの顔を見ることなくこの場を去ろうとしたその時、グイッと腕を引かれた。
「えっ!? な、なに!?」
「いいからこい!」
イザークの強すぎる腕に痛みを覚える。縺れそうな足をどうにか動かし、イザークに引かれるままどこかへ行って連れていかれる。
まずい。このままだとバレてしまう。
「あ、あの、イザーク! 僕!」
「貴様は暫く療養だ!」
療養。確かにイザークはそう言った。その言葉で今の状態が知られたと分かった。
イザークに連れて行かれた場所は、イザークの自室だったようで、鼻腔に嗅ぎ慣れた匂いがする。
「⋯⋯いつからだ?」
「え⋯⋯」
「いつから目が見えなくなった?」
「⋯⋯」
やっぱりイザークにバレていた。顔が見えなくても、イザークの浮かべている顔がわかる。きっと怒っているのだろう。
「⋯⋯全く見えなくなったのはついさっきだよ。それまでは見えてた」
それは本当だ。全く見えなくなったのはイザークにばれる少し前の事だ。
「⋯⋯見えずらくなってきたのは?」
「えーと⋯⋯たぶん、ひと月前ぐらい?かな⋯⋯」
まるで尋問のようなイザークの言い方に、どんどん縮こまる。
「⋯⋯はぁー」
イザークの大きなため息にビクッと身体が跳ねる。
呆れられただろうか?それとも目の見えなくなった僕には価値が無いと捨てられるかな?そんな事を考えているとイザークの匂いを強く感じた。
この感覚は抱き締められている?
「馬鹿者。なぜ早く言わない」
「⋯⋯ごめ、なさい」
声が震える。イザークは言葉は厳しいが怒っている声色ではないと気が付く。心配していると分かるそれに、キラは落ち込む。
別に目が見えなくても大丈夫。直ぐにまた見えるようになる。そうじゃなきゃ困る。目が見えないと僕は何も出来ない。だから、これは一時的のものだ。
そう自分に言い聞かせ続けてきた。でも症状は治るどころか悪化する一方で、閉ざされていく視界に恐怖心を覚えた。
このまま見えなくなったら、僕はどうしたらいい?
自らプランを否定したのに、その張本人が動けなくなったら、どう責任を果たせばいいのだろか。
ずっと恐怖と戦っていた。誰にも悟られ無いように誤魔化して誤魔化して。とうとうバレてしまった。
「ごめんなさい、イザーク⋯⋯ごめんっ⋯⋯!」
涙が止まらない。もう泣かないって決めてたのに。
「⋯⋯馬鹿者。お前一人でなんでも背負い込むな。俺も着いて居るだろうが」
泣き崩れるキラの細身の身体を、イザークは強く抱き締めた。
イザークもここ最近のキラを見て懸念していた。どうもなにかに追い詰められているかのように感じた。まさか、目が見えなくなっているとは思わなかった。
何故もっと早く気が付いてやれなかったのか。
何故もっと良くキラを見ていなかったのか。
後悔ばかり渦巻く。
「お前1人、頑張らなくていい。俺もお前の重荷を背負ってやる」
イザークは泣くキラの身体を強く抱き締めた。
その後、メディカルチェックを受けたキラは、強いストレスによる心理的な影響で一時的に視力が失われたと診断を受けた。
直ぐにキラを仕事から外させ、イザークが面倒を見てやると、徐々に視力は回復して行った。
「無理はするな。困った事があればすぐに言え」
「うん。ごめんね。迷惑かけて」
「ふん! こんなのは迷惑のうちに入らん! お前はしっかり食べてよく寝ろ!」
「うん。そうだね。次はこうならないように気をつけるよ。ありがとう、イザーク」
反省している様子のキラだが、そう簡単に脅迫概念の考えが治るとはイザークも思っていない。
今から新たな組織の立ち上げで、キラもイザークも忙しくなる。無理をするなと言うのは簡単だが、キラは無意識でも無理をするに決まっている。
イザークは新たな組織コンパスにシンとルナマリアを出向させる事を決めた。キラのストッパーになれるように。イザークはザフト情報将校として、出来うる支援をキラにすると決めた。
性癖パネル⑦でした!盲目キラ好きなのです。文章だとチョットむずかしいけど、見えていたのものがじわじわと見えなくなるのって恐怖ですよね。あまりイザキラになってない気もするけど、大丈夫だろうか。うむむ
沼の底さん、参加リクエストありがとうございます!