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    ペッパー

    @pepper_aiueo

    デジタルって何???知らない話ですね

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    ペッパー

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    下書きに眠ってたやつ発掘です これはめんどくさがり一匹狼くん×爽やかくん

     生徒会室に行くらしい。

     俺の好きな人からそう聞き、逃げるように適当な理由をつけて教室を出た。
     別に「生徒会室に一般生徒が入ってはいけない」という規則を守るつもりなんてさらさらない。事実、俺の服装は校則を度外視した着方だ。風紀に注意されるが、そのとき言われた通りに直しても、結局次の日には元のように着てしまう。だってなんか苦しいし。

     とにかく、俺は所謂不良とかいうやつに分類されるのだろう。しかし、俺は極度のめんどくさがりというだけであり、このイカれた学園内の他の生徒に比べたら一般常識だってある方だと思う。昔はもっと活発な子供だったのだが、元々共学志望だったのに、無理矢理中学生の頃に全寮制の男子校であるここに放り込まれたせいで、気力が湧かなくなった。ただそれだけの話である。要するに、元々反抗期中に放り込まれた学園で惰性のままに過ごしていたら、いつの間に反抗期を通り過ぎてもめんどくさがりのままになってしまったのだ。

     このままではいけない、と思い始めた頃にちょうど転機があった。転校生が来たのだ。

     転校生は面白いやつだった。色々な生徒を骨抜きにし、使い物にならなくした。俺もその内の一人だった。そう、「だった」。つまるところ過去形だ。

     恋に燃えていた日々は、ただダラダラと過ごしていた時期と比べたら遥かにこう、なんか、生きている感がある。実際、学園の人気者である生徒会役員たちと張り合ったり、風紀委員と睨み合ったりするのは楽しかった。

     楽しかったのだ。間違いなく。しかし、元々活発な子供だったとは言え、惰性で生きていた習慣が染み付いてしまった今、その活力を維持できない。要するに、競い合ったりする恋愛にすぐ疲れて、着いていけない。情けない話である。でも、きっと悪いことではない。エネルギーが無くなり、冷え切った頭で客観的に転校生を取り巻く環境を見てみれば、そこにあったのはただの虚無だった。

     生徒会役員風紀委員ともに仕事をしなくなったために荒れ放題になった学校、転校生が美形たちを侍らす姿。
     別に転校生を好きになったことに後悔は無いし、今でも転校生のことは好きだ。でも、転校生と四六時中一緒にいたいほどかと言われれば多分違う。普通にめんどくさい。

     俺ってやつは恋が向いていないのかもしれない。そろそろ諦めて転校生と誰かを応援する方向にしようか、と考え始める。こんなことを考えていても、独占欲など全く湧かない。本当に俺は本気だったのだろうか。本気の恋でもしてみればこの面倒くさがりは治るのだろうと思っていたのだが。
     少なくとも一つ言えることは、俺の想いはどうやら周りと比べてかなり小さいものだったらしい、ということだけだ。


     適当な理由をつけて教室を後にした俺は、どこで暇を潰そうかと少し辺りを見渡した。なるべくなら遅くまで時間を潰せる場所が良い。早く帰ったところで、転校生より早く帰ってきてしまっては、俺と転校生は寮で同室なので、転校生と一緒にいる時間が長くなってしまって疲れる。
     いや、こう言うと転校生のことを嫌っているようだが、本当に転校生のことは嫌いではないのだ。ただ、あの転校生のテンションがちょっと高すぎて俺が着いていけないだけで。それも、転校生のテンションは特別高すぎるわけでもなく、普通の人なら普通にノれる領域内のテンションの高さなんだと思う。だって生徒会も風紀もみんなノってたし。俺はあのノリにずっとは着いていけないけど。あぁ、こういうところがめちゃくちゃな面倒くさがりなのか。

     苦笑いしつつ、足は階段へと向かっていた。どうやら転校生と出会う前によく行っていた屋上へと向かっているらしい。転校生が来てからは全く行ってなかったが、屋上で風に吹かれながらゆったりと過ごす時間がそういえば好きだった。

     軽くなった足取りで廊下から階段へとさしかかると、踊り場に誰かがいたのが見えた。窓から光が差してしまって、逆光で誰か分からない。そいつは俺に気づくと、「あ」と溢して階段を小走りで降りてきた。階段から降りてきて、やっと俺も誰だったか分かった。

    「鍵浦」
    「あれ? 錠本じょうもと? どうしたの? 姫なら生徒会室だって言ってなかったっけ……」

     そいつは爽やかにミルクティー色の髪を揺らし、アイスブルーの色をした瞳で俺のことを見下ろした。

     鍵浦(かぎうら)春乃(はるの)。可愛らしい名前とは裏腹に、色素が薄くかつ爽やかな見た目から王子と呼ばれ慕われている。ちなみに本人曰く「かわいすぎる」とのことで名前を呼ばれることは地雷らしい。

     転校生はその地雷を思いっきり踏み抜き、鍵浦は怒りはしなかったもののそれからは転校生を避けている。ので、実は唯一この学園において転校生に堕ちなかったイケメンだ。ちなみに「姫」というのは転校生の名前からとったあだ名である。

     可哀想なことに、姫は鍵浦のことを大層気に入ってるらしく、鍵浦を見かけるとすぐに駆け寄っていく。いつも鍵浦は少し困ったような表情を浮かべているが、嫉妬に狂った姫の取り巻きたちや、正常な判断力がこの騒動の疲れで欠如してしまった一般生徒からは鍵浦も姫のことを好いているように見えるそう。まぁこれはあくまでも俺の主観による状況判断だが。

    「そういう鍵浦は何でこんなところに?」
    「実は部長に姫を何とかしてから部活に来るように言われちゃって……。まぁ確かに俺がいることで迷惑かけるわけにもいかないし、突然できちゃった暇をどう持て余そうか悩んでたところ」
    「何だそれ、理不尽だな」

     俺が上に向かっているからか、鍵浦も俺の後ろを着いてきて会話を続ける。
     そう言えば鍵浦はバスケ部だったか。姫がやたらバスケ部に観に行きたがってたのはそういうことか。
     俺はさすがに最上階にある生徒会室からわざわざ体育館に行くのは疲れるので姫を止めていたのだが、何回か俺が止めるのを聞かずにバスケ部の方に行ってたっけ。まぁ俺はめんどくさいからどうせ戻ってくるの分かってたし普通に生徒会室で待ってたけど。

     あれ、俺周りと競えてると思ってたけど、移動の労力と恋愛を天秤にかけて移動の労力に傾いちゃうって恋愛舐めすぎじゃね?
     やっぱ俺って恋愛に全力になれないのか、なんて少し悲しくなっていると、鍵浦が黙り込んでいることに気づいた。

    「あれ? 鍵浦? どうし……」
    「錠本さぁ、」

    「めっっっちゃ良いやつすぎない………?」

     かなり溜めたあと、息を吐き出すようにして鍵浦は呟いた。
     良いやつ? 俺が? ただのめんどくさがりなだけだが?

     俺の頭上に浮かんだクエスチョンマークを察してか、鍵浦は軽く俺の腕を掴んで前に出た。

    「だって俺のことちゃんと見てくれてるし、誤解しないし。親衛隊長も部長も、俺の話なんか聞いてくれないんだよ?」
    「マジかよ、親衛隊長って普通親衛対象のこと好きなもんじゃねーの?」
    「最初の内は『不安なんです』とか言ってたくせに酷いよね。俺のこと信じられないんだって」
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