さむいひのあまえんぼう「さむい、ので。いっしょにねても、いいですか?」
隣に敷いてある自分の布団の上にちょこんと座り大きな眼をうろつかせながら、時折ばちりと目があってはそわりと肩を揺らす可愛い子。寒い寒いと言う俺や俺の母さんを見ては不思議そうにしていたのに、いつからだったか寒いふりをしてひっつくようになった。わざわざ顔や耳を赤く染めて洟まですすったりなんかしているのに恰好はいつもどおりで、足なんて素足のままなんだからおかしくて仕方ない。なんて愛らしいんだと笑いそうになるのを抑え、落ち着いた声を努めて出して鬼太郎を自分の布団に迎え入れてやる。
「ああ、勿論。さ、おいで」
パッと顔に喜色を滲ませて布団に潜り込んでくる鬼太郎の体温はいつもよりもあたたかで、なぜだか涙が出そうになるような感情がふつふつとこみ上げる。遠慮してなのかほんのり隙間を開けているのでえいやと抱えてこんでやった。
「んわ」
驚いた鬼太郎がいつになく間抜けな声を出したので耐えきれない笑いがころりと溢れてしまう。
「あはは、こうやってくっついてりゃもっとあったかいぞ。ほうれ」
抱えた体をもう一丁とごろりと転がして俺の体の上に乗せてやる。もう、水木さんってば。なんて言いながらもぞもぞと動く自分よりもずいぶんと小さな体には、自分よりもずうっと大きな力が秘められている。昔は力加減がイマイチで、こうやって抱きしめた時に傷つけないようにとぎこちない動きをしていたのに。大きくなったなあ。いつまで、こうやってこの子の近くにいれるだろうかなどと思いながら、まるっこい頭を見つめる。
「水木さん、さむくないですか?」
座りの良い位置を見つけたのか、みじろぎをやめてじっと俺の目を見つめてそう聞いてくれる鬼太郎がどうしてもかわいくて仕方がない。
「いいや、寒いなんて。温かいよ」
まだまだまるっこい鬼太郎の頬をもちもちともんでやる。
「やめてください」
嫌そうな言葉を転がすくせに、撫でられてとける猫みたいな顔をするのだからもうたまらない気持ちになってしまう。体だけではなく、心までもぽかぽかとあたたかくって。
「しあわせ、だなあ」