HappyBirthday 茨- ̗̀( ˶'ᵕ'˶) ̗̀-Happybirthday!Ibara
「.......ばら.........茨、起きて?」
「ん.........今日は、オフらったはずれしょ......もう少し.....寝かせて.........。」
「んー.........凄く可愛いしいっその事このまま一緒に寝てしまいたいけど、朝ごはん冷めちゃうから。ね?起きて、茨。」
「うぅ.......閣下の、ケチ.........ん?かっか?」
重たい瞼を懸命に動かすと、眼鏡をかけていないぼやけた視界に見覚えのある銀髪が映りこんだ。
「おはよう、私の可愛い茨。」
「はい.........おはよう、ございます。あの、ここは猊下達と同室の星奏館の寮部屋で間違えないですよね?」
「ん?そうだよ。お誕生日おめでとう茨。今日は茨が産まれてきてくれた記念すべき日だからつむぎくん達に頼んで、朝から晩まで私と日和くん達で茨を貸し切ることにしたんだ。」
起きたばかりの回らない頭で必死に理解しようとする茨。そんな彼の額に凪砂はちゅっとキスをした。
「貸し切る、ですか?」
「うん。事情を話したら茨の同室の子達はそれぞれ気を利かせて席を外してくれたんだ。どう?驚いた?」
「ええ、さすがの自分も寝起きドッキリを仕掛けられたのは初めてです。」
「ふふふ、じゃあ大成功だね。さ、朝ごはん食べに行こう。」
茨は凪砂に手を引かれながら共有スペースへと連れていかれた。
「やぁ、おはよう茨!お誕生日おめでとう!お空も雲ひとつない晴天でとーってもいい日和だね!」
「おめでとうございます、茨。」
「あ、ありがとうございます。(朝から殿下の笑顔が眩しい。)」
椅子に座るとパンやサラダやスクランブルエッグにソーセージと、それから日和の大好物のキッシュという定番の朝食が茨の前へ並べられた。
「はい、どうぞ。脳を目覚めさせるためにも朝はしっかり食べてくださいよぉ。」
「この僕が自ら淹れてあげた、巴家オリジナルのブレンドティー!味わって飲むといいね!」
「.......恐れ入ります。」
テーブルに4人分が用意し終わるとそれぞれ着席する。
「じゃあ、いただきます。」
「「いただきます!」」
凪砂の号令とともにそれぞれが食べ始めた。
「美味しい。」
「でしよう?ジュンくんのスクランブルエッグはふわふわでバターの風味があって美味しいよね!当然キッシュもすごく美味しいね!」
「なんでおひいさんが自慢げなんすか?」
「でも、本当に美味しいよ。」
「ナギ先輩にまでそう言って貰えるなんて光栄です。」
普段は朝食を食べないことのが多い茨だが、こうしてみんなで賑やかに会話しながら食べるのも悪くないと思えた。
一通り朝食を食べ終わると、準備をしてもう一度共有スペースのソファに座らされる。
「ねぇ茨、よく聞いて?今日は副社長やマネージャー、もちろんアイドル業も仕事関係は全てオフだから、電話とかも出ちゃダメだよ?もし約束を破ったら.......」
凪砂は茨の耳元に唇をよせ「お仕置しちゃうからね。」と囁いた。
「はい?!そんなの聞いてませ「はーい!茨には拒否権はないね!さて、これからの予定なのだけど。」
「茨、どこか行きたい場所や見たい所はありますか?」
「.............急にそんな事言われても自分は別に。」
凪砂達が言い出したら止められず話を聞かないというのは身に染みて分かっている茨は、抗議するのを諦めた。
「うんうん、そう言うと思ってもう連れていく場所は決めてあるね!まずは、美術館から!」
「今期間限定で公開されている絵画があるんすよ。」
「たまにはゆっくりした時間を過ごしてもらいたくて。私がリクエストしたんだ。」
「ええ、そうでしょうとも。では、今日一日改めてよろしくお願いします、御三方。」
外へと移動すると四人乗りの可愛らしい軽自動車が駐車されている。
「初心者マークを貼ってっと、さぁ凪砂くん!出発だね!」
「うん、頑張るね。」
「ちょちょ、ちょっと待ってください!閣下が運転なさるんですか?!」
「そうだよ。今日は私達四人で行動する事に重点を置いているんだ。」
確かにこれから必要だと言うことで凪砂には免許を取ってもらっていたが、ペーパードライバーではなかっただろうか......と茨は不安になった。
「大丈夫ですよぉ。ナギ先輩、今日の為に運転練習したんでもうペーパーじゃないっすから。」
「安心して乗ってね。」
「あ、はい。」
運転席に凪砂が、助手席に日和、歳下の二人は後部座席に乗り込みそれぞれシートベルトを閉めた。
「んー、ほんといい天気!お出かけ日和だね!気を取り直して出発!」
やがて美術館に到着すると、四人でゆっくりと鑑賞した。そして次は
「次は俺のオススメの映画を見に行きますよぉ!ナギ先輩、お願いします!」
「ふふ、了解。」
映画を鑑賞後、今度はお昼ご飯である。
「お昼は僕のおすすめのお店で食べようね!個室だから変装もしなくていいし、のんびりできるね!何よりこの店のキッシュは絶品だからね!」
先程見た映画の感想と考察を話しながら食べるお昼はとても楽しく、日和の言うキッシュも美味しかった。
「あの、自分バッティングセンター行きたいのですが。」
「もちろんいいよ。」
茨の申し出に凪砂は嬉しそうに頷いた。バッティングセンターに到着するなり、AdamとEveの二人一組に別れてバッターボックスに立った。一見苦手そうに見えた日和だったが、コツを掴むと凪砂同様とても上手にボールを打ち返した。結果はAdamが点数的に勝ったのだが、最後まで勝敗の分からないほどの接戦であった。
「それじゃあ夕飯を食べて、最後は私がみんなと見に行ってみたかった夜景を見に行こう。」
夕飯を早めに済ませ、暫く車を走らせて到着したのはシンと静まりかえる広い公園だった。季節はもう11月半ば、空気は冷え込み頬がピリピリと痛むほどだ。
「んーやっぱり寒いね。」
「でも空気が澄んでるからきっと夜景が綺麗だよ。」
「ほら、毛布を被ってってくださいよぉ。」
「そうですよ、風邪なんて引かないように暖かくして下さいね。」
「ジュンくん!僕を温めるといいね!」
「うわっ!急に抱きついてくんなって!」
「茨もおいで?」
「いやいや自分は......っ!」
断ろうとした茨が凪砂を見やるとにこぉと絵画のように完璧な微笑みを浮かべていた。この笑顔には逆らってはいけないことを茨は知っている。
「いえ、あの.....あー、手を繋いでも?」
「うん。」
「うんうん、みんな仲良しでとってもいい日和♪」
一人一人コートや耳あてやマフラー、それから毛布を被って 夜景の見える位置まで移動した。
「都会から少し離れた人工的な光が届かない場所ではこんなにも星々は綺麗なんだね。いや、星々の瞬きは初めからそこにあって私達はそれに気がつけないでいるだけか.......夜空を見上げても、地上の灯りが強すぎて自然の美しさを見失ってしまうなんてとても悲しいね。」
頭上には満点の星屑が輝いている。この夜の月は翌日に《朔月》を控えた明けの三日月であるため月明かりが弱く、空気が澄んでいるため星がとても綺麗に見えた。
「さすが閣下、何とも哲学的な事を仰る。」
「ほんと、凪砂くんらしいね。」
「ナギ先輩、あの星はなんて星なんですか?」
凪砂は星を見上げながらこの時期に見える星空について話をした。
「そろそろ帰りましょうか。」
「そうだね、夜空はとっても綺麗だけどずっと見ていると風邪ひいちゃうね。」
「ナギ先輩、帰りもよろしくお願いします!」
「うん、安全運転するね。」
そして寮に到着すると
「あの、3人とも.......。」
茨の声に3人が振り向いた。
「その......今日は自分の為にありがとうございました。」
「今日は楽しかった?」
「当然いい思い出になったよね?」
「次は4人で旅行とかしたいっすね。その時はスケジュール調整頼みましたよ。」
そんな3人に茨は少し顔を赤らめながらにっこり笑っていつもの敬礼の仕草をすると
「アイアイ!この七種茨に万事お任せ下さい!」
〝生まれてきてくれてありがとう〟その言葉を言って貰えるのがこんなにも嬉しいと知ることが出来たのはあなた方3人のおかげです。
おわり。