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    chandora_0204

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    chandora_0204

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    pixivで書いてたぐだトネ新選組のリクエスト作品です。
    新婚生活か…これ…?

    四季のあれこれ「………あの、立香。」
    「ん?何だいトネリコ。」
    「ここで、本当に、あってます?」
    「うん?間違いなく合ってるよ。」
    京を出発した立香とトネリコが紆余曲折の末に
    江戸に着いたのは出発してから一週間の事であった。
    足を負傷しているトネリコを気遣い、立香が馬を手配していたのもあり比較的早くに到着出来た。
    そして、そんな二人を迎えたのは。
    「屋敷……ですよね。」
    「うんそうだね。」
    二人で使うにはあまりに大きい屋敷だった。

    「おやおや到着したかね二人共。」
    「息災のようだな二人とも。」
    そんなトネリコと立香を正雪とモリアーティが出迎えた。
    「正雪先生!お久しぶりです。モリアーティ殿も
    わざわざありがとうございます。
    自分達が出発した時にはまだ京に居ましたよね?」
    「はっはっはっ。私も多忙を極める身でね。例え深酒をして使い物にならなくなってしまっても、次の日には仕事をせねばならんのだよ。早い話が君達が出た次の日には馬を飛ばしてこっちに来てた。」
    「な、なるほど…。」
    モリアーティと立香が会話しているのを尻目にトネリコは未だにぽかん、とした表情で屋敷を見ていた。立派な門に広い中庭。母屋の大きさは言うに及ばず。他にも大小様々な建物があるが道場や土蔵と思しき建物もある。集団生活が基本だったトネリコにとって大きな家に住むという事には驚きがないものの、こんな屋敷を二人で使うとなるとかなり話が変わる。
    ……そう、二人。立香と二人である。
    分かりきっていた筈の事なのにも関わらず、
    それを意識したトネリコの頭は茹で上がる。
    「(いやべつにここまでの道行きもずっと二人きりだったし部屋は一緒だったし…布団は別だったけどだからべつにわざわざ意識する必要なんて)」
    「トネリコ殿?」
    「うひゃい!?」
    一人物思いに浸るトネリコに正雪が声を掛けて現実に引き戻す。
    「大丈夫か。何やらもの思いに耽っていたようだが。」
    「だ、だ、だ、大丈夫!じゃなくてです!あぁ!ちが、さっきのじゃなくてっていうのは大丈夫じゃないって意味じゃなくてですをつけるのを忘れたというかなんというか。」
    「とりあえず落ち着けトネリコ殿。」
    勝手に妄想し、勝手に一人パニックに陥っているトネリコに優しく微笑んで落ち着くよう促す正雪。トネリコはその言葉と肩に置かれた正雪手の温かさを感じ、落ち着いていく。
    「すいません…。ありがとうございます。」
    「気にするな。むしろ私としては慌てる貴殿の姿が見れて嬉しいぞ。」
    「えっ?」
    思いがけない声に顔を上げるトネリコ。視界に入った正雪は未だに微笑んでいて。
    「村正殿やモリアーティ殿から聞いていた時の印象としては失礼ながら人間味に欠けているように見えていてな。」
    「…まぁそうでしょうね。」
    過去の自分を振り返り苦笑するトネリコ。
    『刀』として生きて来たのだ。人間としての感情なんてそれこそ余分なものとして斬り捨てていた。それを拾えたのはきっと。
    「実は、昔の立香も似たようなものだった。」
    「…え?」
    正雪の言葉に驚くトネリコ。正雪は慈愛の籠った目でモリアーティと未だに何か話している立香を見つめていた。
    「彼の恩師が処刑されてからの立香は酷いものでな。今もこうして明るく振る舞えてるのが奇跡みたいなものなのだ。」
    「そう……だったんですか。」
    信じられない想いで正雪の言葉を聞くトネリコ。
    「恩師の言葉を思い出し、立ち上がりはしたが吹っ切れてはいなかったのだろう。表面上は明るく振る舞ってはいたが、失う事を極端に恐れていた。誰もかもに平等に接するが、近くに来る事は拒む。…嫌だったのだろうな。また失うのが。」
    「……。」
    分かる。痛い程に分かる。
    だってあの時の私と、六歳の時の私と一緒だ。
    怖かった。グリムや村正が死ぬのが何より怖かった。
    だから、刀を取った。
    だから、人を斬った。
    だから、殺したのだ。
    「だから驚いたよ。立香が貴殿と…特定の誰かと繋がりを作った事を知った時は。」
    「え?」
    過去を思い出し、再び物思いに耽っていたトネリコだったが、正雪のその言葉で我に返る。
    「私がまだ、江戸にいる頃に手紙のやり取りをしていてな、その時に教えて貰ったのだ。貴殿のことをな。」
    「そうなんですか…。」
    「その通りだ。実を言うと、あの時からずっと貴殿には会いたかったのだ。そして伝えたい言葉があった。」
    トネリコに微笑みかける正雪。

    「立香と出逢ってくれた事、心から感謝するトネリコ殿。」

    その笑顔は同姓であるトネリコでも見惚れる程に綺麗で。
    触れたら解けてしまいそうな程に儚く、美しかった。

    「い、いえ…。」
    その笑顔に見惚れていたトネリコはそう返すのが精一杯だった。

    「さて、我らが話している間に、あの二人は先に中に入ってしまったようだ。我らも行こうトネリコ殿。」
    「…はい。」
    先に歩きだした正雪に着いていく形で、トネリコは歩き出した。
    だが、その心の中は平常の物とはかけ離れていて。

    「(…正雪さんは、私の知らない立香を知っている。)」

    当然だ。
    彼の恩師が亡くなったのは五年前。
    つまりは最低でも五年の付き合いなのだろうから、当然トネリコの知らない立香を知っている。
    だが、トネリコを悩ませているのはそれだけでは無く。
    「(正雪さんって……ほんとに綺麗な人。)」
    強い意思を感じさせる翡翠の目は輝く宝石のよう。
    日本人離れした色素の薄い髪は光に当たると美しく輝く。
    職人が精緻に作り上げた人形の様に整った顔立ち。
    所作も言葉遣いも洗練されていて、同姓である自分も見惚れる程だ。

    実際、自分と正雪が話しているのを見かけた通行人がジロジロと変な視線をこちらに向けて来た。
    「(正雪さんは…立香をどう思ってるんだろう…。)」
    そして何より気になったのは。
    「(立香は…正雪さんをどう思ってるんだろ。)」
    出発前に確かに彼の気持ちは聞いた。
    けど、それでも、やっぱり。
    トネリコの心は晴れなかった。



    「トネリコ~?部屋はどこにする?」
    「は、はい…。じゃあここで。」
    多い。広い。大きい。
    屋敷の中に入ったトネリコの率直な感想がそれだった。
    「り、立香はなんで落ち着いているんですか…?」
    「落ち着いてるって…?」
    「こんなに大きい屋敷に住むのにすっごく落ち着いてるじゃないですか!」
    「あぁ、なるほど。まぁ予想はしてたからね…。」
    ちらりと玄関を見る立香。
    そこにはモリアーティと正雪がおり、大きな荷物を抱えた人達を出迎えていた。
    ……え?まさかあの大量の荷物、私達向け?
    「正雪先生と同じく、モリアーティ殿の補佐を務めさせてもらう事になってるからね。家もまぁそれ相応に大きいのが用意されてるだろうなって予想してただけだよ。あの荷物もまぁそういう事だろうね…。」
    「え?でもモリアーティさんって京都でお仕事をされてるのでは。」
    「……え?江戸で役職を持っていて将軍との謁見が許されているって聞いてたけど…?」
    「………ほんとになんなんですかねあの人。」
    「分かんないなぁ……。」
    そうこう話している内にモリアーティと正雪がこちらにやって来た。
    「さて、トネリコ君、立香君。家財道具はあらかた入れておくように指示した。後の配置は君達の方でやってくれ給え。私達はこれで失礼させてもらうよ。」
    「ではな立香。トネリコ殿もまた会おう。」
    「はい。ありがとうございました。」
    「また会いましょう。」
    そう言ってモリアーティと正雪は家を出て行った。
    トネリコは運びこまれた家財道具の数々を見て、声を上げる。
    「すごい、良いものばかり…これ全部モリアーティさんが用意してくださったんですかね。」
    「いや、手配はモリアーティ殿がしてくださったけど、流石にお金は俺が出した。」
    「立香が出したって…一体どこから出したんですか!?」
    「京に入る前にも入った後にも色々あってね……。」
    急に遠い目をした立香。正直気になってしょうがなかったが、歴戦の勘が突っ込んではいけないと告げていたのでぐっと堪えるトネリコ。
    「それより少し屋敷を見て回ろうか。俺の想像以上に大きいし。」
    「そ、そうですね!」
    立香の提案に飛びつくトネリコだった。

    「ここが調理場かな。」
    「立香って料理出来るんですか?」
    「結構なものだと自負しているよ。トネリコは?」
    「切るのは得意です。」
    「なるほど。」
    「あと煮るのも得意です。」
    「うんなるほど。」

    「すごい、お風呂が付いてる。」
    「え?すごいんですか?」
    「普通の家ではお風呂は無いと思うけど…。」
    「あー私集団生活が長かったので、基本付いてましたね。」
    「…ちなみに新選組での時は。」
    「時間帯毎に別れてました。」
    「…だよねー。」
    「ただ最初の頃、お風呂から上がった私を他の隊士がじろじろ見て来るのは面倒でしたね。」
    「………。」
    「?何怒ってるんですか立香。」
    「いや別に……ちなみにそいつらどうなったの?」
    「良く分かんないですけど次の日の訓練で村正とグリムにボロボロにされてました。」
    「……ならいいか。」
    「?」

    「立派な土蔵だなー。」
    「物がたくさん入りそうですね。」
    「うん。ここに大きめの戸棚を置いて、なんなら作って……トネリコ?何してるの。」
    「いえ、なんか地面に描いて見ようかなーって思いまして。」
    「へーなにこれ。すごい綺麗な模様だね。これは…なにかの文字?」
    「凄い怪しげな本に書いてあったんですよねこの模様。」  
    「なんか召喚できそう。なんて本?」
    「外国の言葉で読めなくて…こんな感じです。」
    「fate stay night ……何だこれ。」

    こうしてトネリコと立香は屋敷を隅々まで見て回った。そして最後に残ったのは。
    「ここは…道場かな?」
    「わー立派ですね。」
    引き戸を開けるとそこには立派な道場があった。少人数なら教師でも開けそうだ。
    「…道場か。」
    顔を輝かせるトネリコとは裏腹に少し暗い表情をする立香。
    本人が望むか望んでるかは分からないが刀を振れなくなったトネリコがこうして道場の近くに住むのは良い事なのだろうか、と思い悩む。だが。
    「お、竹刀も木刀もありますね!流石に真剣は無理ですがこの位なら、足に負担を
    かけないように振れば」
    「……。」
    今日一番にはしゃいでいるトネリコを見て何とも言えない表情を浮かべる立香。
    「トネリコって剣が好きなの?」
    「好き…とは少し違いますね。生きてる理由…というか生きる上で当然必要なものって認識です。」
    「そう…なんだ。」
    「でもまぁ。貴方の隣に居ると決めましたから、これ以外もちゃんと出来るようにならないと駄目ですね。」
    あまりもサラっと言われたその言葉に、自分の隣に居ると当然のように言ったトネリコの笑顔を見て、立香はしばし時間が止まる。
    「……無理する必要は無いよ。俺が好きになったのはそのままのトネリコ何だから。」
    「いえいえ、これは私が勝手に決めた事ですから!無理なんて微塵も!」
    「そう?それなら。」
    「はい!これから沢山勉強していきます!…そう思えたのは癪ですけどあの男のお陰ですね。」
    「あの男?」
    「はい、宮本伊織です。…立香を殺しかけた事は絶対に許しませんが。」
    宮本伊織。
    立香も当然覚えてる。
    忘れられる訳が無い。
    あんな強烈な男を。
    「まぁ俺も許せないけど…どう言う事?」
    「立香も知ってるかもしれませんが、私が刀を振れなくなったのはこの傷のせいなんですけど。」
    そう言ってトネリコは着物の下を少しはだけさせ太腿を立香に見せる。
    真っ白で瑞々しい白桃のようなトネリコの腿に痛々しく刻まれているのは一筋の刀傷。
    恐ろしい程に真っすぐと刻まれているそれは、刻み手の凄まじい技量を物語っていた。
    「刀が振れなくならなきゃそもそもこんな風に考える事ありませんでしたから。……
    『私は生まれる時代を間違えなかった』とも言ってきましたからね。その点だけは。」
    「…あぁなるほど。」
    きっと他意はない筈だ。
    トネリコにそんな考えなんて無い筈だ。
    なのに、なのに。
    「さ、行きましょう立香。これで屋敷を一回り見終わった筈です。」
    「うんそうだね。」
    目に入っていないのに、トネリコの足に刻まれた刀傷がずっと頭から離れなかった。
    トネリコの身体に刻まれている不純物。
    醜い傷跡。
    だけど、何より、何よりも醜いのは。

    トネリコに傷を刻んだ男に対して、気が狂いそうな程に嫉妬している自分自身だ


    「美味しかったです!立香ってほんとにご飯が上手なんですね!」
    「お粗末様。まぁ日頃から作ってるしね、正雪先生にも何回か作ったりしてたし。」
    「……。」
    「?トネリコ?」
    再び立香の口から出た正雪が出た事に気持ちが沈むトネリコ。
    昼間からふつふつと溜まっていた気持ちはいまやどす黒いものに変じていった。
    正雪は好きだ。尊敬もしてる。
    でも、だからこそ、彼女が立香の近くに居るのが嫌だ。
    自分の知らない立香を知っているのが堪らなく嫌だ。
    こんな気持ちを持ったままで、立香の近くには居たくなかった。
    でも彼と離れるのはもっと嫌だ。
    ぐるぐるとトネリコの中で感情が渦巻く。
    グラグラと煮えたぎっていく。

    「……ねぇ立香。」
    「ん?なにトネリコ?」
    「立香と正雪先生って…どういう関係なの?」
    「ど、どういう関係?えっと…。」
    「答えて!!」
    自分でもびっくりするほどの声が出る。仰天した顔の立香が目に入る。
    「ねぇ…答えてよ…。」
    「ど、どうしたのトネリコ!」
    抑えが効かない。
    歯止めが出来ない。
    理性が働かない。
    零れる涙を…止められない。
    「立香が私の事を好きだって言ってくれたのは知ってる。分かってる。でも…。」
    「うん。」
    突然泣き出したにも関わらず立香は優しく抱きしめてくれた。
    その優しさに、温かさに縋りつく。
    離れたくない、放したくないと言わんばかりに。
    立香にしがみつく。
    「正雪さんは…私の知らない立香を知ってる。それにすっごい綺麗な人だし!だから!もし立香を……。」
    そこから先は言葉にならなかった。
    想像するだけで怖かった。
    立香が私の前から消えてしまうなんて、怖すぎて考えたくなかった。
    「…正雪先生は確かに付き合い長いからね。」
    「うん……分かってる…でも…!」
    「まず誤解を解こうかトネリコ。」
    優しい力加減だった立香の抱擁に力が入る。彼の心臓の音も聞こえる程に。
    「正雪先生は俺の恩人だ。でも、それ以上でも以下でも無い。昔にそういう事があったとかでも無いし、今も当然無い。」
    「…うん。」
    「それにさ、付き合いは長いと言っても五年やそこらだ。どう考えてもこれからの君と過ごす時間の方が長いでしょ?」
    「…それって、結婚の申し込み?」
    「そう思ってくれて構わないよ。」
    そう言って立香はトネリコとの抱擁を解き、トネリコに向き合う。
    そしてトネリコの手を取って、彼女の目を見つめる。
    「流石にこんな形じゃ良くないからね。改めてちゃんと言うけど、俺はそのつもりだよトネリコ。」
    真っすぐにこちらを見てそう言い放つ立香。そんな状況になんだかおかしくなってしまうトネリコ。
    「もうそれ言ってるも当然じゃん。」
    「…自覚はしてるけどさ、流石にちゃんと言いたいというか。」
    そんな立香にトネリコは微笑んで立香の頬に手をやる。
    「でも良いよ待ってあげる。」
    「…うん。ありがとう。」
    頬に添えられたトネリコの手を立香は握り返す。
    繋がった二つの手から温かさが交じりあった。
    「…でも、ごめんね。急に取り乱しちゃって。」
    「まぁ驚いたけど、どうって事ないよ。」
    落ち着きを取り戻したトネリコは立香と話していた。
    「ほんとにごめんね…。ずっと醜い感情が渦巻いていて、堪え切れなくて…。立香はちゃんと言葉にしてくれてたのに…。」
    「そうか、言葉だけじゃ足りなかったか。」
    「え?」

    そう言った立香はトネリコを抱えると。
    「ちょ!ちょ!立香!!」
    「言葉だけじゃ、伝わらないんでしょ?」
    「いやまってちがそうじゃなくて」
    「トネリコはいや?」
    「いや……じゃないけど。」
    「じゃあ問題ないね。」
    「まって!りつ」
    「ごめん俺が待てない。」
    状況が分からず惚けていたらあら不思議。あっという間に立香の手によって別の部屋に連れて来られてしまった。そしてその部屋にはもうすでに布団が敷かれてあって。
    「…あ。」
    「…トネリコ。」
    信じられない程に近くにある立香の顔。
    綺麗な青の瞳には自分しか映って居なくて。
    「り……つか。」
    「さっき君はさ、醜い感情が渦巻いていたって言ってたけどさ、俺にもあるんだよそれくらい。」
    「…え?それはって立香!?どこをさわって!」
    言いつつ立香はトネリコの太腿に手をやる。
    押すと少し返してくる健康的な肉付きをしている。
    その肌はまっさらな着物の様にすべすべとしている。
    一点を除いて。

    「ここ。」
    「ふぁ!り、りつか?」
    「君に傷が付いている。」
    「え?」
    「それが、すごく嫌だ。誰かの付けた傷が君についてるのが凄く嫌だ。」
    「り、つか。」
    想像していなかった事にトネリコの頭は混乱の極致へと。
    立香の目には確かに燃えるような炎が渦巻いている。
    それが嫉妬なのかは正直トネリコには判断出来なかった。
    けど。
    「嫉妬…してるんですか。」
    「してる。正直自分でも驚いてる。誰かにこんなにも嫉妬するなんて。俺にこんな感情があったなんて。」
    「…っ!りつ……かぁ!」
    触るだけに飽き足らず、トネリコの傷に口を付ける立香。
    トネリコは未知の感触に悶える事しか出来なかった。
    「や、やめ。」
    「…トネリコ。」
    「んあ!」
    熱が顔に昇って行くのを感じる。
    頭が茹っていく。
    トネリコ本人の熱で。立香からの熱で。
    解けてしまいそうな程に。





    「……さて、弁明はあるか立香。」
    「ないです。」
    「よろしいそこに座れ。せめて介錯してくれる。」
    「切腹は勘弁してくださいぃ!?」
    翌日、トネリコを再起不能にさせた事で立香は正雪から折檻された。




    「———というのが、あの二人の江戸での初日だ。」
    「村正ァァ!!俺に休暇を寄こせェェ!!あの野郎を斬り殺す!!!」
    「落ち着けグリム。妹の妊娠くらい祝福しろ。」
    「がぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
    「グリム君ってこんなんだったっけ?」
    「この前、呑みに行った時からなんかぶっ壊れたんだよこいつ。」
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