かの「水の娘」の公演を皮切りに、フリーナの「人生」はスポットライトを浴びるようになった。監督として舞台を作り上げたり、自分で演じたりすることがこんなにも楽しく充実するものになるとは、過去の自分では考えられなかった。最初は誰にも、どこにも必要とされていないとさえ思っていた自分も、案外捨てたものではない。順調──その言葉がふさわしいような日々である。
ただ一つの黒点を除いては。
ヌヴィレットは相変わらずフリーナが出演する劇となればスケジュールを空けて足を運んでいるようだった。客席で彼を見かけない日はないほど──いや、実際見かけない日はない。
昔のフリーナならば、水龍と良好な関係が築けている証拠だろう、と特に気にも留めなかったし─彼が来ること、それが当然とさえ思っていた。かつてはこの身こそが、フォンテーヌで最も尊きものだったのだから。
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