顔にラフレシアが咲くはなしオズは常にアイマスクを着用している。
一見ただアイマスクをかけているだけだが、実際には皮膚に直接針と糸で縫い付けて、オズが自分で取れないようにしているのだ。
そこまでするのにはある事情があるのだが、それはそれ。
「いたたた。ちょっと、優しく取ってよォ」
「お前が動くから悪ぃんです」
そんなアイマスクも、月に一度くらい遠山静によって取り払われる。
顔の整備のためだ。
と言っても、別に髭剃りするという訳ではない。
もっと別の物を『 刈り取る』ために。
「あー……」
「どお。今回は何が咲いてる?」
「コレは……何て言いましたっけ。ハエが寄ってくるやつ」
「え、ラフレシア?」
「あー、そうそれです」
遠山静が覗き込むオズの顔面には、植物や花が生い茂っていた。
オズは少し普通の人間と違っていて、遺伝子に植物のものが混じっている。
その影響で、顔の半分が植物なのだ。
だからオズからは花にも似た心地良い匂いがする。
顔に花が咲くから定期的に静が手入れしてやるのだが、ユニークなことに、オズのその時々の気分によって咲く花も変わる。
「ラフレシアが咲く時ってどういう気分なんです」
「ええ………何かしら。見当もつかない」
「っつか、くっさ。すげぇ臭いんですけどォ……」
「ちょっとやめてよ傷付くから」
「何か別の花咲かせなさい。いい匂いするやつ」
「無茶言わないでくれる?アタシだってどんな感情で何が咲くか分かってないんだから」
「ヴォエッ」
「わかった!わかったからアタシのにおいで嘔吐くのやめてちょうだい」
オズは一旦、目をぎゅーっと閉じる。
そして念じる。いい匂いのする花咲け、と。
すると……
「ちょっと、ラフレシア増えたんですけど」
「ガッデム!!何でよ!アタシ頑張ってんのに!」
「あーーくっさ。教会がラフレシア臭で染まってくのを肌で感じますねェ……」
「もーーーーー!!」
珍しく、オズから悪臭が漂う昼下がりだった。