家族愛無数にいるきょうだいが、また一人死んだ。
何百もいる兄や弟、姉や妹のはずだったが、とうとうオレが最年長になった。
もはや何百回目かわからない葬儀を終え、ひとりまたひとりと帰路に着いていく。
そんな中で、オレだけが墓前に取り残されていた。
「兄さん、まだ帰らんのか」
「おん?オマエ居たん」
声をかけてきたのは、ミフネ。
見るからにコーディネートのおかしい弟である。
立派に中年ではあるが比較的新しい方の弟だ、これでも。
「何で残っとん?」
「墓参り代行のバイトじゃよ。四件くらい」
「地味に多いな」
「情の薄い世の中じゃからのう。家族の絆も、代行できるんじゃろ」
「薄焼きせんべいみたいやな」
スルーしたミフネ。
「今回死んだのは?」
「四百番目くらいの妹や。死因は事故死」
「こう言っては何じゃが、餓死とか自死でないだけマシかの……来世ではきっと幸せになるように祈るよ」
「ご縁があるよチョコ贈呈せなな」
スルーしたミフネ。
「兄さん。あんたは……わしらにも、幸せになるチャンスくらいはあると思うか」
「なんや、重たい話しよってからに」
「信じたいんじゃよ。苦労と不遇だらけの人生に救いがあると」
「……。……そんなもん、決まっとるやろ」
「兄さん……」
「正解は越後製菓やで」
今度はスルーせずに、ミフネがオレの脳天に拳骨を落とした。
かなり本気でやったようで、多少頭がへこんだ気がした。
「いったあ〜。何すんねん、オマエのお兄ちゃんやぞ」
「しらんわボケが。あんたにきょうだい達への愛情は無いんか。無いのう」
「確定事項かいな」
「わしゃもう行くぞ。兄さんはこれ以上きょうだいたちの墓前で馬鹿やらんどくれよ」
しらけた顔をオレに向け、ミフネが去っていく。
お堅い奴だ。ちょっとしたユーモアなのに。
頭をさすりつつ、ミフネの背を見送る。
「……」
……きょうだいへの愛が無いのか?
馬鹿なことを言う、あるに決まっているのに。
愛情あり過ぎて、有り余って、気が狂うくらいに。
「だからオレが、ひとりずつあの世に送ってんのやろ」