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    rararirirurero3

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    若奥様シリーズでこんな話を考えている
    (途中まで。ちょっぴりカフレノの匂わせアリ)

    若奥様シリーズでこんな話を考えている若奥様シリーズでこんな話を考えている
    (途中まで。ちょっぴりカフレノの匂わせアリ)

    鳴海とキコルは久しぶりのデート中、鳴海の元カノに偶然会う。鳴海は焦る。女は鳴海とキコルにこう言う。
    「鳴海隊長、昔は散々好き放題女食い散らかしておいて、自分が生涯添い遂げるパートナーは男を知らない十代のお嬢様とか、人生うまいこと進めてますね」と。
    鳴海、あながち嘘ではない元カノの発言にちょっと焦る。女をひと睨み。女はわざとらしく「邪魔してごめんねー」とその場を離れる。鳴海は恐る恐るキコルの様子をうかがう。キコルは意外と平気そうだ。「別に、いちいち気にしてたらキリないし、今は私が鳴海隊長の奥さんだから」と。その様子から強がっているなと思うものの、ひとまず鳴海は安堵する。
    翌日のキコルは新人教育のため長野の第4部隊に三日間出張だ。それもあり、この日は久しぶりの二人の休日だった。だが、鳴海の元カノの出現でその後もなんとなく気まづいまま時間が過ぎていく。けっきょく二人はあまり楽しめないまま帰宅した。
    その日の夜、キコルはなかなか寝室に行こうとしない。鳴海は明日から三日間キコルに会えないし、久しぶりにたっぷり愛し合いたい。なんとかそういう雰囲気に持っていこうと試みるがキコルはあまりその気になれない。
    キコル「私じゃ満足できないんでしょ」と。鳴海は「そんなわけないだろ」と言うがキコルはきかない。
    鳴海はキコルの機嫌の悪い原因が昼間の元カノだとわかっているが、過去を責められたところでどうすることもできない。だからこそ、今夜はたっぷり甘やかして安心させてあげたいし、愛してあげたい。だけどキコルは「鳴海隊長を責めているわけではない。ただ、今はそういう気分になれない」と。
    その後なんやかんやと言い合いになって険悪ムード。
    鳴海はキコルを大切に扱っているつもりだが、それが伝わっていないのだとイラつく。つい「お前のほうこそ、そろそろ大人になったらどうだ」と言ってしまう。キコルは鳴海に子供扱いされるのが嫌いだ。鳴海もそれは知っている。キコルもキコルで「もっと誠実な人を好きになれば良かった」と。「ボクがお前に対して誠実じゃないと?勝手に不貞腐れていろ、ボクはもう寝る」とひとり寝室に。
    リビングに一人残されるキコル。自分の不甲斐なさが悔しくて涙が止まらない。とてもじゃないが今は鳴海と一緒にいられないと、泣きながら明日からの出張の準備をしてそのまま家を出ていく。
    鳴海、寝室で一人悶々とするもののキコルが気になって仕方がない。しばらくして、物音がしないことに気がつく。リビングに戻るとキコルはいない。慌てて電話をかけようとするが、スマホを開いたらキコルからメールが届いていた。
    メッセージの内容は「少し頭を冷やしたい。今夜は長野に前日入りする」とのこと。また、車や松本の宿泊先は有能執事瀬羽須が手配してくれたから心配しないで欲しいとも。
    鳴海にメールを送信したのはケンカをしても鳴海に余計な心配をかけたくないというキコルなりの配慮だ。鳴海、即鬼電するもキコルは出ない。続いて鬼メール。既読つかず。どうやら電源をオフにしたらしい。鳴海、悶々とするも自分も明日は外せない業務がある。立場上松本まで追いかけることもできない。キコルと連絡はつかないが執事の瀬羽須とは連絡がついた。電話口の瀬羽須は、キコルには信頼のおける運転手とSPをつけているから身の安全は保証する、と。鳴海は瀬羽須に礼を告げひとまず安心するものの、何度もキコルに電話とメールを繰り返す。

     *
    「……すごい鬼電と鬼メール。でも、隊長ごめんなさい」
    キコルは松本に向かう車内で、鳴り止まないスマートフォンの電源を切る。鳴海と話すのが怖い。これ以上、あのひとの前で醜い自分を晒したくない。
    昼間の女のことを考える。実はあの後、鳴海の元カノは鳴海が席を外しキコルが一人の時を狙って話しかけにきたのだ。
    女「さっきはごめんね、四ノ宮元長官のお嬢さん。ああ、今は鳴海姓だったわね」
    「鳴海隊長ったらこんな可愛いお嬢さんを毎晩抱いてるなんて信じられない。あの人、強引に抱くの好きでしょう。所有欲強いドSで性欲も最強だしこっちの身が持たないわ」
    「あなたは若いし、鍛えてるでしょうからさぞ満足させてあげてるでしょうね。あの人、女にいろいろシてもらうの好きだから」
    などなど…小馬鹿にしたように言い去る。
    キコルは思う。キコルは鳴海しか男を知らないが、鳴海からセックスで強引な扱いを受けたことがない。自我が強く常に自分ファーストな鳴海だが、肝心な時はいつだってそれとなくキコルの気持ちを優先してくれる。セックスでもあの女の言うような積極的にキコルに奉仕させるようなことはしない。それは鳴海がキコルのことを大切にしてくれているからだ。鳴海はキコルを心から愛してくれている。それは、ちゃんとわかっている。伝わっている。
    わかっている、けど。
    『さぞ満足させてあげているんでしょうね』
    キコルは鳴海とのセックスは気持ち良いし幸せだ。だけど、あの女の言葉が離れない。自分はあの女の知っている鳴海を知らない。もしかしたら、自分は鳴海を満足させていないのではないか。鳴海も言わないだけで本心ではつまらない女だと飽きられているのではないか。そんな考えが脳裏から離れない。
    過去は変えられない。年齢差も経験差も埋められない。そんなこと頭では理解している。だけど気持ちが追いつかない。不安が拭えない。
    自分は鳴海からたくさんの幸せをもらっている。だが自分はどうだ。鳴海は自分といて本当に幸せなんだろうか。そんな不安がどうしようもなくキコルを襲う。
    三日間の松本出張はかえってよかった。キコルは思う。鍛錬や業務に集中して少し頭を冷やそう。松本にはレノやイハルがいる。久しぶりに同期たちに会えば気分も晴れるだろう。それに、母の昔馴染みの緒方隊長だっている。緒方隊長から昔の母の思い出話をたくさん聞かせてもらおう。
    キコルは電源を落としたスマートフォンを鞄にしまい瞼を閉じた。よほど疲れていたらしく松本までの道中すぐに眠りについた。

     *

    松本に到着した頃にはもう日付も変わり深夜になっていた。
    キコルはあらかじめ瀬羽須が手配していた松本駅近辺の高級シティホテルに宿泊した。部屋に入りオフにしたままのスマホの電源を入れた途端、画面には着信履歴に鳴海の名前がずらり、未読メールもずらり。キコルは悩んだ末、メールボックスを開く。すると『電話に出ろ』やら『無視するな』『いい加減にしろ』などのキレ散らかした鳴海からのメッセージが。キコルは「でしょうね」と呆れつつもひととおり鳴海からのメールに目を通す。最後に送信されたメールにスクロールする手が止まる。
    『泣いてないか? ボクと話したくなければ着信に出なくてもいい。だが、松本に着いたら必ず知らせろ。心配する』と。
    普段はおとなげないのにこんな時ばかり大人な対応な鳴海にキコルはジワリと涙が浮かぶ。きっとアプリの位置情報でとっくにキコルの居場所を把握しているだろうし、瀬羽須と連絡も取り合っているだろう。でも、少しくらいは焦って困って心配すればいい、キコルはそんな子供じみたことを思った。けっきょく意地になって返事はしなかった。キコルがメール画面を開いたまま鳴海からのメールを往復していると、キコルの既読通知に気がついた鳴海から再びメールを受信した。『松本に到着したか?』と。
    キコルは返信しない。だが鳴海に既読通知は届いているはずだ。何か返事をしなければ鳴海から電話がかかってくるかもしれない。キコルはそう思ったが、その後鳴海から連絡が来ることはなかった。

    翌日の有明りんかい基地。鳴海はすこぶる機嫌が悪い。
    本来なら、キコルは今朝第1部隊から数名の隊員を引き連れて専用車で松本遠征の予定だった。だが、昨夜キコルが前入りしたため、今朝は他の遠征メンバーだけで出発することとなった。引率は東雲。東雲は朝からここ一番機嫌の悪い鳴海に、急遽前乗りしたキコルの理由を察する。長谷川と東雲は互いに顔を見合わせため息を吐く。
    「何かきこるんに言づけはありますか?」と東雲。
    「別に無い」と鳴海。今回のキコルの松本出勤は、キコル本人に直接伝えていないものの、キコルの存在によって新人隊員たちを刺激を与え喚起させることが目的でもある。出発前、東雲は「松本基地の若い多くの新人隊員くん、鬼の居ぬ間にここぞとばかりきこるんにお近づきなろうと群がるでしょうね」と意味深に伝えて出発する。鳴海はぴくりと眉を顰める。さすがに人妻に、ましてや最強の部隊長鳴海弦の愛妻に本気で手を出す輩はいないだろう。だが、18歳の天才サラブレッド美少女のキコルが羨望の眼差しに加え、一部の隊員から恍惚とした眼差しを向けられるなど安易に想像つく。鳴海、内心ではかなり動揺している。
    だか、昨夜はけっけょくキコルからは電話もメールの返事も一度も来ていない。こちらから連絡もしていない。


     
    キコルは無事一日目を終える。想像以上に松本基地の新人隊員たちからキコルは大人気だった。
    今夜は第1から遠征組が来たことにより宴好きの緒方隊長主催の親睦会だ。まだ十八歳のキコルはお酒は飲めないがレノやイハルと久しぶりにおしゃべりをすることができて嬉しい。トーコと東雲は仲が良いらしい。女同士会話に花を咲かせていた。
    レノは二十歳になり飲酒解禁となる。イハルははっちゃけて飲みすぎてテンション高い。最近彼女ができて幸せの絶好調だと聞く。キコルが鳴海と結婚した頃、ちょうどカフカとレノも付き合い始めた。二人は松本と有明で遠距離恋愛を続けている。イハルは早々に呑まれてダウンする。キコル、思い切ってレノに鳴海のことを相談する。カフカとレノはあまり感じさせないが十四歳差だ。その上遠距離恋愛。キコルは不安は無いのかと訊ねる。レノは少し酔っているのかめずらしく饒舌だった。
    「もちろん、不安はある。先輩は鈍いところがあるし、俺から気持ちを言葉にしなきゃ伝わらない」と。
    また、レノはキコルにこうも言う。
    「歳の差があると、どうしても不安なのは年下の自分だけだと思いがちだ。でも、相手だって不安になったり悩んでいたりもする。だけど、年下の俺たちにそういう姿は見せたくないんじゃないかな」とレノ。
    「確かにカフカなら分からなくもないけど『あの』自信家の鳴海隊長はどうかしら」
    「そんなの俺は知らないよ、だって俺は鳴海隊長じゃないから」
    「その鳴海隊長の気持ちがわからないからレノに相談してるんじゃない」
    キコルはむくれる。レノは「自分が答えれることは解決策のひとつの方法にすぎない。他人の気持ちを代弁することはできないだろ」と。だけど、しぶしぶ押し黙るキコルに「これは先輩づてだけど、四ノ宮が遠征の時には必ず東雲小隊長が引率するのは鳴海隊長の私情だと思うよ」
    レノに言われるがキコルは意味がわからない。
    いつのまにかレノとキコルの会話に東雲が参加。東雲は「私は鳴海隊長から、自分の目の届かない所でのきこるんを任されているからね」と。続いて隣のトーコは「鳴海隊長の公私混同は他部隊で有名ですから」
    さらに、いつのまにか会話に加わる呑みすぎて出来上がった緒方は「あはは、懐かしいな。昔僕もね、ヒカリと四ノ宮元長官の夫婦喧嘩にしょっちゅう巻き込まれていたよ」
    キコルはまさか自分の両親が夫婦喧嘩をしたことがあるなんて思ってもみなかったから驚く。そんなキコルに緒方は「キミが生まれる前、一度、四ノ宮元長官と喧嘩してヒカリが松本までプチ(?)家出をしたことがあってね。翌日、血相変えた四ノ宮元長官が単身で松本まで迎えに来たことがあったよ。あの精悍な四ノ宮功があそこまで狼狽えたことはなかったんじゃないかな?」
    キコルは驚く。まさかあの父が焦燥して私情で東京から松本まで母を連れ戻しにきたことがあったとは。
    懇親会お開き後、部屋でスマートフォンを眺めるキコル。あれ以来鳴海からの連絡はない。鳴海からの着信もメールも無視したのは自分のほうなのになんて身勝手なんだろうと嫌悪感に陥る。



    同時刻。東京都江東区有明某マンションにて。
    「あの〜、俺、そろそろ帰りたいんですけど」
    鳴海とキコルのマンションになぜかカフカがいる。そしてなぜか二人でマリカーをしている。リビングには缶ビールと宅配ピザ。それから適当なつまみや菓子が封を開けられたまま散乱している。
    カフカは今日の就業時刻と同時にさも当然のように鳴海に連れだされた。上官命令を差し引いたとして一度鳴海にロックオンされてしまうとそうそう逃げられないことはわかってる。カフカとキコルと鳴海の三人でいることはめずらしくないが、このように鳴海とカフカの二人きりでいるのはめずらしい。
    キコルが出張中のため暇つぶし相手にでも選ばれたのだろう。そう思いながらも新婚夫婦の新居にお邪魔した。
    で、今。三白眼無精髭のアラサー男と蒼黒い隈をきざんだアラサー男が二人並んでマリカーをしている。七戦目スタート。
    「うるさい、黙れ。次こそは勝つ」
    鳴海は鳴海に六連敗中。カフカは仕方なく少し手を抜く。鳴海勝つ。これで解放されると思ったのも束の間、鳴海は「お前、今夜は朝まで付き合え」と一方的にカフカに言う。
    「えー……」
    俺の拒否権は?と思うが、人の良いカフカはあきらめの深い息を吐く。
    というのもカフカは一時間ほど前、遠距離恋愛中のレノから電話でキコルと鳴海のことを聞いていたのだ。詳しい事情は知らないがプチ夫婦喧嘩中とのこと。鳴海夫婦は(主に鳴海が原因で)だいたいしょうもない喧嘩をしているが、どうやら今回は少しいつもとは違うらしい。
    カフカは自分が突然鳴海宅に拉致さ……招待されたおおかたの事情を察する。
    「おい、日比野カフカ。さっきのお前の電話の相手、市川レノだろ」
    いつ切り出そうか、といった感じがしらじらしい。人の良いカフカは気づかないふりをする。
    「あ、はい。なんか、緒方隊長主催の親睦会でキコルや東雲さんたちと呑んでるらしくて」
    「そうか」
    「はい」
    「おい」
    「なんすか?」
    「市川レノは何か四ノ宮のこと言っていたか」と鳴海はぼそぼそと問いかける。
    わかりやすい人だと思いつつも人の良いカフカはそれは口にはせず「楽しそうにしてるみたいっすよ」と少し濁す。すると鳴海は不機嫌になる。
    「ふーん、そうか。アイツ元気なのか。ほー」
    「鳴海隊長、気になるなら電話してみたらどうですか?」
    「は?なんでボクが気にしなきゃいけないんだ?」
    鳴海、キレ散らかす。
    しかし、鳴海はカフカと何気ない会話を繰り広げていく中、徐々に鳴海はアルコールの力も相まってぼそりぼそりと本音を漏らす。
    「ボクは四ノ宮にまともに恋愛もさせないまま、結婚という形で縛りつけた」
    「ボクはあの子が自由な広い世界に気づき、ボクから離れていくのを恐れた。だから、あの子が十八の誕生日を迎えてすぐに入籍した」
    カフカは驚く。まさかこの鳴海から「恐れ」なんて言葉を聞くことになるとは。
    カフカは鳴海に「俺も似たようなものですよ」
    「市川は俺をヒーローだと思ってますが、それはアイツの悲惨な過去が、あたり前であるべき日常を幸せな世界だと錯覚させただけです」
    「その時、市川のそばにいたのがたまたま俺だっただけです。だから俺、市川から好きだと告げられた時、どうかこのまま気づかないで欲しい、市川にとってヒーローでいたい。そんなこと思っちまったんですよね」
    カフカは笑いながら懺悔した。
    年齢だけならキコルもレノももう大人だ。二人は子供らしい子供時代を送ることができなかった。レノもキコルも、本来であれば当たり前に与えられるべき愛情に飢えていた。甘えられずにいた。
    この世界は弱者に厳しい。無垢な子どもに弱さを見せるな、早く大人になれと、世界が無言で弱い子供を責め立てる。護られることが、まるで悪だとでもいうように。
    それは施設育ちの鳴海にも言えることだった。
    あの日、自分は四ノ宮功という一人の男に焦がれた。鳴海にとってあの人が全てになった。
    だから、鳴海には手を差し伸べてくれた身近な大人に特別な感情を抱いてしまったレノとキコルの気持ち痛いほどわかってしまう。
    ひとりは命を助けられたその瞬間に。もうひとりは最愛の家族を亡くしたその瞬間に。
    絶望の瞬間に、たまたま救いの手が届いただけ。それが、レノにとってはカフカであり、キコルにとっては鳴海だった。
    「でも……」とカフカはのんびりと話続ける。
    「そこからはじまる愛があってもいいんじゃないっすか?」
    カフカはにかっと笑う。
    現に鳴海もカフカもキコルやレノが錯覚で自分を好きでいてくれているなど思っていない。二人の気持ちは本物だと思っている。
    カフカは鳴海に言う。
    「これはずるい大人のエゴで、俺たちの罪悪感の問題です。あいつらは関係ない。てか、俺らがこんなこと言ってたらあいつらブチ切れそうっすけどね。『舐めんなよ』って」
    「俺たちにできることはたくさんの愛情を注ぎ続けるべきじゃないですか。愛されることも護られることも悪じゃないって。俺からしてみれば、それは鳴海隊長にも言えることなんすけどね」
    なんか上手く言えなくてすみません。とカフカは人差し指で頬をかく。
    鳴海は無表情でテレビの液晶画面を見ている。
    鳴海とカフカはけっきょく朝まで二人でゲームした。
    翌日、カフカは半分寝ている鳴海を無理やり基地へ連れて行き、副官の長谷川から「迷惑かけた」と深々と頭を下げられ逆に恐縮した。
    鳴海を執務室は無事届けたカフカは「鳴海隊長はキコルを縛りつけたんじゃない、鳴海隊長とキコルは二人で家族という絆を見つけたんですよ」と笑った。



    結局キコルは第4部隊で三日間一度も鳴海と連絡を取らなかった。鳴海からも連絡はなかった。緒方が語った若い頃の両親のように、鳴海が東京から松本までキコルを迎えに来るなどドラマチックなことはなかった。ただ、鳴海と東雲は連絡を取り合っているため東雲づてに鳴海がキコルを気にかけていると聞いてはいた。キコルはあまり鳴海のことを考えないように、遠征中はひたすら鍛錬と業務に没頭した。夜はレノやイハルと食事をしたり東雲とお喋りしたりして過ごした。だけど鳴海のいない一人の夜はさみしくて泣きそうになった。
    そして、松本出張最終日、キコルは緒方やレノらイハルに挨拶をする。帰り際、「先輩によろしく」と笑ったレノの笑顔はどこかさみしげだった。キコルは「わかった。東京に戻ったらとりあえずアイツ一発殴っとく」と言う。
    「え、なんでっ?」
    「……レノにそんな顔をさせたから」
    キコルはにかっと笑った。
    その後、東雲や他の隊員たちと車で東京に戻った。
    なお、のちにカフカは鳴海宅に泊まったことを十四歳年下の恋人から電話口でちくちく言われることとなる。
    「ふーん、一晩中一緒だったんですか。先輩、鳴海隊長とけっこう仲良いんですね。二人きり朝まで、ゲームを?ふーん……」
    「え、あ、あの、イチカワさん?なんか怒ってる」 
    「いえ、まったく怒っていないですけどね」
    「(めちゃくちゃ怒ってる!)」



    第1に戻ったキコルは報告書を提出するため一度基地に戻る。カフカにレノから預かったクッキーを渡し、副官は長谷川に挨拶を済ます。カフカも長谷川も「隊長室に顔を出してやってくれ」と。
    キコル、気まづいがこのまま顔を合わさずにいるわけにもいかない。隊長室の鳴海の元へ。
    汚部屋の隊長室、キコルはノックするが返事はない。入室する。鳴海は振り向かずにゲームをしてる。キコル「あの…鳴海隊長、戻りました」返事はない。


    ……からの仲直りでハピエン♡
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