第二話 丑三つ時の訪問者県予選の終わりとともに梅雨が来た。
今年は太平洋高気圧の勢いが強いので、空梅雨になるかもしれない、そんな予報とは裏腹に、毎日しのつく雨が続いている。
夜中、流川楓は二階の自室で目を覚ました。一度寝ついたら梃子でも起きない彼には珍しい事だった。
さらに珍しいことに、目をつぶっても眠りが来ない。妙に寝苦しかった。一日中締め切っていたせいか、室内の空気が澱んで、重苦しく顔を圧迫しているような気がする。
しかし動くのは面倒くさい。目を固く閉じどうにか寝ようと試みたが、眠気はドンドン失せていく。流川は諦めベッドから降りると、窓を開けた。水の匂いのする涼やかな夜風が流れ込んで、火照った頬を冷やした。
街は静まり返っていた。朝から降り続いていた雨は止んでいて、街灯のひかりが濡れた屋根たちを淡く照り返していた。
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