「冬弥くん、よかったらカラオケ行かない?クラスの何人かで遊びに行くんだけどさ、男子もいるしどうかなって」
「すまない、今日は帰る約束をしているから」
青柳に好意を持っているであろうクラスの女子が彼に声を掛けたが、いつもの爽やか王子スマイルで断りを入れた。そのまま荷物を抱えてオレの方へやってきた、女子達の目線が痛い。
「東雲!荷物の整理は終わったか?」
「…いや、まだ。シャーペン足りなくて机の中探してるから時間かかる、先行ってて」
「そうか、なら玄関前で待ってる。またな」
「ん」
嬉しそうににこにこしながらオレに話しかけてくるこの態度はオレ限定だ、何故か彼に気に入られているのだ、理由は分からない。
昨日、一緒に帰らないかと言われ引き気味に嫌ですと答えたらしょげられた、周りの女子の怒りに圧されて明日ならいいとボヤいたら嬉しそうに感謝を述べられた。オレは断ろうが引き受けようが女子から疎まれることには変わりないのだが、どうも断ろうとする方が良くないと感じた。
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