丸呑み これで三本目。大口を開けて串に刺さった団子のてっぺん、通算七個めにかじりつこうとしているシンを見ていると彼の丸くて大きな赤い瞳とかち合う。
「アスランも食べます?」
シンの、口の中に入る前のそれをそのまま向けられたので、遠慮なくいちばん上に刺さった団子を食べる。前屈みになると落ちてくる髪を耳にかけながら、そろそろ切らないといけないななんて考えているとシンがわなわなと震えてから叫ぶ。
「な、なにすんだあんた!」
「お前、全部食べると怒るだろ」
「そんなに卑しくないです!」
行儀が悪いと思うけれど咀嚼しながら答えると間髪入れずに返事が飛んでくる。
「じゃなくて!串ごと受け取れよ!」
「手が埋まってるからな」
「あんたの手は一本しかないんすか!?」
放っておくとずっと怒鳴り続けそうなシンに辟易して俺は右手に持っていた三色団子の串を彼の口へ近づける。
「食べませんよ」
「そう言うなって」
頑なな言葉を放ったあとからその唇は真一文字に結ばれて今日の営業は終了ですとばかりにシンはぷいっとそっぽを向いた。あいにく諦めの悪い俺は笑いながらその唇にぐりぐりと桃色の団子を押し付けてみる。眉間に皺を寄せ睨みつけてはくるものの生意気な口は開けずにいるシンを見るのはとても愉快だ。
「ほら、変な意地をはるのはもうやめろ」
勝ち誇って笑って見せると彼は最大級に不快だという顔をしてみせて、犬歯が見えるくらいに口を開いて串に噛みついた。