マシュレイ「これをやる。使え」
温度の無い言葉と共に、手渡されたハンカチ。ウサギ柄のそれは他寮の友人に渡して以来 見ていなかったものと同じで、ただしあの時より真新しかった。それに前回は、包装用の袋になど入っていなかったし。
「怪我人にやったと聞いた。もっと早く言え」
「せびるもんでもないっすよね」
「詫びの印に渡したんだ。速攻で失くされたら意味がねえだろ」
そんなものなのかな、よく分からない。春の風物詩である木の下、淡い色をした花弁が降る中で、マッシュは首を傾げる。とぼけた絵柄のハンカチに対し、似ても似つかない険しい顔をした目の前の人が、真っ直ぐにこちらを見据えた。譲る気は無いのだろう、何がなんでも受け取れという圧を感じる。
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