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    sobako_mc

    🥂👔だったり🐰2️⃣だったり。表におけない進捗をポイポイしてあります。

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    sobako_mc

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    🍾の日ということで🍾に関する二人のあれこれのお話。
    🥂👔成立済みのほのぼのしたお話。
    エッチいとかはないです。

    煌めく夜空の帝王と黄色い薔薇スキンケアは丁寧に。導入化粧水から始めて、化粧水、美容液、乳液、その後に下地。コンシーラーはお客さんが良いよってお薦めしてくれたものでファンデーションはメイク動画でバズってたやつ。まぁ本当は男だしいらないんだろうけれども、こうしてちょっとだけでもメイクすると今からホストになるんだぞって気合いが入るというか、変身していく気分になるというか。独歩が昔、特撮を見て変身シーンをワクワクしながら見ていた気持ちが……、少しだけわかる。だって俺っちだってずっと、暗いあの部屋で変身したくてたまらなかった。一歩外に出るのが不安にならないように、道行く人が全員男でありますようにって願わなくても済むように、大事な親友に心配かけないように。
    そんな風にずっと変身したかった。女の子達は敵じゃないのに、怖い存在じゃないのに、それなのに恐怖の対象になってしまったのが辛かったし、何とかしたいと思っていた。あの暗い、一人ぼっちの部屋の中で。
    変身して、格好良くなって『女の子が怖くない伊弉冉一二三』になっていく。服はもうジャケット以外着替えているから、することと言えば、アクセサリーを付けるだけ。左の親指、人差し指、小指、右の人差し指にそれぞれの指輪を嵌めて、ネックレスをそれぞれ首に付ける。うん、位置も完璧。ウォレットチェーンを付けた後に、大事な黄色い薔薇のピアスをいつもの場所へと刺せば、もうすぐシンジュクナンバーワンホスト、伊弉冉一二三の完成だ。
    この姿になる度に感じる全能感は堪らないけど、それに頼らなくなるのはいつになることやら。
    それでも良い。一つずつ積み重ねることが大切なのだから。
    軽くパン、と頬を叩いて鏡に一つ笑顔を送り、俺っちはハンガーにかけてあったジャケットを手に取った。
    しっかりとそれを羽織って今日も夜の帝王の顔を被る。胸元の黄色い薔薇も綺麗に咲き誇っていた。今日も、シンジュクナンバーワンに相応しい姿になることができることにホッとしながらも、これがいつまで続くのかと不安も感じる。だけど、そんなことを考えるのは止めよう。今の僕は……、シンジュクナンバーワンホストである『伊弉冉一二三』である。
    「さぁ。今日も素晴らしい夜にしようじゃないか」
    パーティーの準備はちゃんとしてくれているかい?

    ただいま、独歩君、という声におー、と気のない返事をして俺はその姿を目に映す。輝く金色の髪に眩しいぐらいの整った顔立ち。スラリと伸びた手足は長く、まるでマネキンみたいだな、という感想を抱いた。それを本人に言ったら凄い爆笑されたけど。ウォレットチェーンを外して所定の場所歩いてそれを置く。
    スラリと長い指がまずはピアスのキャッチを外して耳からそれを抜き取った。ネックレスをのチェーンを外してアクセサリースタンドへ。赤い方が先で、クロスの方が後。指輪は、右の人差し指、左の小指、人差し指、親指の順に外して、優しく微笑む。お疲れ様、と言うような表情にアクセサリーも『シンジュクナンバーワンホスト伊弉冉一二三』を構成する一部なのだと思う。一二三にとってはどのアクセサリーも無くしてはならない大切なものだ。キラキラ輝く夜の帝王になる為にも必要不可欠なアイテムに俺もありがとうな、なんて心の中でこっそりお礼を言っておく。胸元に咲いた薔薇はその日に届く生花で萎れる部分はない、今が一番綺麗な姿だ。一夜を共にした戦友にありがとう、と唇を落として、一輪挿しの花瓶へと生ける。ジャケットを脱いでベストとシャツの姿になった後、一二三は部屋着に着替えて、風呂の方へと歩いていった。これから丁寧にクレンジングからの洗顔、シャワー、出た後のスキンケアを行うのだろう。どれだっけ?あいつのメイク道具。
    そんなことを考えながらテレビの中でケラケラと笑いながら軽快なトークをしている芸人達を見ていた。特に面白くもないんだが……、まぁ暇潰しにはなる。正直寝れないからリビングで一二三が帰ってくるのを待っていたのだ。明日は土曜日だし、一応休みだから夜更かししても許されるだろう。飲んでいた缶ビールは既に空。最近腹も出てきたし、そろそろ禁酒するべきか、なんて考えたところで飲まなきゃやってられん、なんて結論に至る。そろそろ弊社爆発しませんかねー、なんて思いながら携帯を見ると、明日なのですが、なんて言葉が出ているのに気づいてしまって憂鬱になった。
    「もうこれもう一本飲んじゃっても良いかなぁ〜!!」
    「駄目でーす!」
    「うぉお!?一二三?お前もう終わったのか!?」
    酒が精神安定剤♪なんて宣言したら、一二三が後ろから駄目と空き缶を取り上げる。いやもうそれ入ってない、と思いながら見ているとありがたいことにもゴミ箱へと持っていってくれたらしい。もー、なんて言いながらスチーマー片手に戻ってきた一二三にこいつ女子かな、なんて感想を抱いてしまった俺は悪くないと思いたい。
    「ったくもー。明日も仕事ならさっさと寝ろよもう」
    「本当は休みだったんだが?なんでもっと早く言ってくれないんだよクソが」
    「お口悪いですよ営業マーン。ほらほら、歯磨きしてお布団いく準備して?」
    子供扱いするな、と思ったところで一二三はスチーマーのスイッチを入れて、スキンケアをし始める。綺麗な肌だし手入れしなくても良いのにな、なんて思いながら見ていると、恥ずかしいのだろうか、あんまりみんな、と怒られた。まぁ本気で怒ってるわけじゃないんだろう、と思いながら一二三が使ったスキンケアの瓶を手に取る。導入化粧水?化粧水?美容液?乳液……?何だこれは。何が書いてあるんだ。そもそも導入化粧水って何だ?化粧水とどう違うんだ?美容液は分かるが、乳液って何なんだ……?乳……?乳からできているのか……?
    軽く宇宙猫状態になる俺の側で何してんの独歩、なんて呆れたような顔で一二三が言う。
    「よく分からん……あ、良い匂いがする……一二三の匂いのカケラみたいな匂いがする……」
    「どんな匂いだよそれ」
    「なんか足りない一二三の匂い……」
    「マジで何言ってんの」
    酔ってる?と聞く一二三に俺はまだ酔ってないぞ、なんて返す。嘘だ、結構酔ってる。寝れないのが分かっていたから深酒しようなんて思ったのだ。なんだかんだで結構、缶を空にしている。
    化粧水の瓶を開けて匂いを嗅ぐと一二三の匂いが少しだけした。何だろう、一二三の匂いは一二三の匂いなのだが、何か少し足りない感じ。
    そんなことを思いながら匂いを嗅いでいると、こらこらと一二三に盗られてしまった。その瞬間、ふんわり薫る匂いに、あぁ一二三が付けているからかぁ、と思って頬が緩む。
    「どうしたの?」
    「ふふっ、一二三だ」
    「うん?」
    「一二三、一二三だな」
    楽しそうに笑いながら言うと一二三は戸惑ったような顔で俺を見る。本当に何か悪いもの食べたの?と言うように。
    失礼だな、そんな変なもの食べてないぞ。
    さっきまでの夜の空気と女の匂いを纏っていた『シンジュクナンバーワンホスト』ではなく、ただの『伊弉冉一二三』に戻った一二三に少しだけ安堵する。ホストモードが嫌いとかじゃない。驚きはするけれど、あいつの努力と歩みの証明でもあるホストモードを否定することはないし、『GIGOLO』である一二三だって一二三なのだ。伊弉冉一二三であることは変わらない。
    「ふふふ、一二三ぃ。今日もお疲れさん」
    「……ふふ、ありがと、独歩」
    お前も一週間頑張ったな、と額に降ってくる唇に嬉しくなってそのままキスをする。ちゅ、ちゅ、と触れるだけのキスをして、口を開いてほしいと下唇を少しだけ噛むと、何だか少しだけ苦い味がした。舌の先がシビシビする感触に何だこれと首を傾げる。
    「あー、もう、乳液浸透させてるとこなのに」
    「苦い……」
    「そりゃねぇ」
    「むぅ……」
    唇を尖らせるとそんな可愛い顔しないでよ、なんて言うものだから俺はまだホストモードなのかー?なんて呂律の回らない口で言う。本格的に酔ってきたのか、目の前がゆらゆらと揺れていた。
    「独歩はさー……、ホストモード、あんまり好きじゃなかったりする?俺っちじゃないって思う?」
    ウトウトとしていたら一二三に問いかけられた。その問いに俺の落ちかけていた意識が浮上する。
    「何でだ?」
    「んー……、その、やっぱりあの姿だとさ、独歩身構えたり驚いたりするし……、独歩的にはどうなのかなーって」
    自信の無さそうなことを言う一二三に俺はムゥと少しだけ頬を膨らませる。確かにホストモードの一二三には驚かされたし、いつもの一二三ではない、と思ってしまうこともあるけれど……。でも、好きじゃないか、と聞かれたら答えはノーだ。
    だってあの姿も『伊弉冉一二三』である。血反吐吐いて確立させた、一二三の大切な一部分だ。確かにあの姿になるとトラブルも多い気がするが……、まぁそれはいつもそうだしな、なんて俺は苦笑する。どちらもトラブルメイカーなのは一二三らしいところでもあった。
    「嫌なわけないだろ。お前の努力の証だろ?」
    俺のその言葉に一二三は少しだけ目を見開いて、ありがと、と呟く。ぐず、と啜った鼻の音は聞かないフリをしてやろう。
    何があっても誰に何を言われても、ホストモードの一二三だって一二三だ。伊弉冉一二三以外の何者でもない。
    それを含めて、俺はこいつのことが好きなのだがそれは恥ずかしいので今は言わないでおこうと思う。
    「一二三ぃ……どっちのお前も格好いいぞぉー」
    「はいはいありがと酔っ払い」
    早く寝ないと明日仕事っぽいじゃん?なんて言う一二三に現実に戻すのはやめてくれ、と抗議をする。本格的に酔いが回った俺に、面倒臭いなー、なんて笑いながらも眠るまで付き合ってくれる一二三に……、どっちも面倒見が良くて好きだなー、なんて思いながら、俺は何だか幸せな気分で眠りにつくのだった。

    次の日、見事な二日酔いと寝坊で弁当を忘れた俺の元にホストモードの一二三が来て少々てんやわんやしたのは言うまでもなく、こういうトラブルメイカーなところは何とかして欲しいかもな、なんて思ったのは言わないでおこう。
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    Replies from the creator

    sobako_mc

    DONE付き合っていることを周囲に内緒にしているタイプの学生🥂👔とバレンタインのあれそれ。最後少しキスしてるぐらいのイチャ付きです。
    ハッピーバレンタインなんて口が裂けても言わないバレンタインデーなんて誰が決めた。
    この日だけは独歩に近付くなって毎年釘を刺されている。家に帰るまでは俺に話しかけるな、会うな、近付くな、登下校も完全に別、という徹底ぶりだ。何でだよ、って言っていたこともあったけど、何となく気持ちは分かるんだよな。独歩がこの日を嫌う気持ちって言うの?俺っちとしても、独歩に会うのは……ちょっと嫌だし。
    何で嫌かって、バレンタインデーってどうしても自分達以外の人の好意がチラつくから。まぁ昔から俺っちってばこの時期になると同じクラスだけでなく別クラ他学年からも告白の嵐でその度に独歩が面白くなさそうな顔をしてきたことを知っている。俺が貰うチョコを見ては、お返し大変そうだなって他人事のように言いながら頬を膨らませている独歩がいるからこそ、この日は学校で俺を見たくない気持ちは分からんでもない。いつだったか、独歩が女の子に告白されているのを見て胸がモヤモヤどころかイガイガして、その場に飛び込んで俺っちのもの主張してしまったことを思い出して苦笑いしていると、クラスメイトから「伊弉冉〜」なんて呼ばれる。
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