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    sobako_mc

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    sobako_mc

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    付き合っていることを周囲に内緒にしているタイプの学生🥂👔とバレンタインのあれそれ。最後少しキスしてるぐらいのイチャ付きです。

    ハッピーバレンタインなんて口が裂けても言わないバレンタインデーなんて誰が決めた。
    この日だけは独歩に近付くなって毎年釘を刺されている。家に帰るまでは俺に話しかけるな、会うな、近付くな、登下校も完全に別、という徹底ぶりだ。何でだよ、って言っていたこともあったけど、何となく気持ちは分かるんだよな。独歩がこの日を嫌う気持ちって言うの?俺っちとしても、独歩に会うのは……ちょっと嫌だし。
    何で嫌かって、バレンタインデーってどうしても自分達以外の人の好意がチラつくから。まぁ昔から俺っちってばこの時期になると同じクラスだけでなく別クラ他学年からも告白の嵐でその度に独歩が面白くなさそうな顔をしてきたことを知っている。俺が貰うチョコを見ては、お返し大変そうだなって他人事のように言いながら頬を膨らませている独歩がいるからこそ、この日は学校で俺を見たくない気持ちは分からんでもない。いつだったか、独歩が女の子に告白されているのを見て胸がモヤモヤどころかイガイガして、その場に飛び込んで俺っちのもの主張してしまったことを思い出して苦笑いしていると、クラスメイトから「伊弉冉〜」なんて呼ばれる。
    その声の方を向くと髪をふんわり巻いた女の子が萌え袖のカーディガンで隠した指先にチョコの入っているだろうラッピングバックを引っ掛けているのが視界に入って、「あぁ……」と飽き飽きした顔になってしまった。朝からずっとこの調子なんだから、そりゃあ独歩は近付くなって言うだろう。元々学校では水曜日以外、近付かないって約束なんだけど。俺っちとしては独歩以外のチョコも好意も好きって言葉もいらないのにね、なんて思ってるけど、あいつはそう言ってくれない。例えどんな子でも、告白する勇気を受け止めることが誠意だと言う独歩は嫌でも俺の背中を押して「はっきり言ってやれよ」ってその子の前に出すのだろう。それがすんごい残酷なことって、独歩は気付いてんのかなー、と独りごちながら、待ってる女の子の元へと行った。
    当たり前のように差し出される好意と甘味に、いらないって言いたいなぁ、という思いをこっそりと胸の底にしまい込んだ後にその子の元へと向かうのだった。



    バレンタインなんて嫌いだ。
    昔から一二三はモテて歳を重ねるごとにその数も情熱も増えていって、今では学校中の女の子がバレンタインに託けてあいつにチョコレートを渡しているんだろうな、と思ったらいても立ってもいられない上にいらないことまで言いそうで怖い。俺っちは独歩のチョコしかいらないんだから、と言うけれど、それはそれで勇気を出した子に失礼だろう、とヤツの背中を押す。本当は受け取ってほしくないと言えたらどれだけ良いことか。一二三がチョコレートを受け取ることがどれだけ嫌か、なんて言ったら俺の重さにあいつが離れていくだろう、と思って言えないけれど。本当は俺だって、あいつに真正面からチョコレートを渡せたらなぁ、と思っている。だけど俺もあいつも男で幼馴染で、周りからしてみれば何で陰キャと付き合ってんの?なんて思われることを理解しているからこそ、堂々と付き合っている、なんて言えないのだ。中学の時、何でお前みたいなヤツが一二三の隣にいんの?なんて言われたことがトラウマになっているなんて我ながら情けないし恥ずかしいけれど。
    だけどそれ以上にこの日は一二三に言い寄る女の子がたくさんいて、その好意を見る度に、恋に敗れて泣く彼女達を見る度に罪悪感が募るから、という理由が俺にとっては大きい。普段、一二三と話さない女の子でさえも、告白しに来るぐらいだ。他者から向けられる一二三への愛情を形として見せられるのが、俺にとっては嫌……、と言うよりも気が滅入る。一二三のことを好きだ、と言って来る女の子はたくさんいて、その形を見せ付けられるのがバレンタインなのだ。この日ばかりは一二三に会いたくない、と思うのは許してほしい。
    俺以外の人間の好意を向けられる一二三が見たくない、なんて我ながらなんて浅ましい独占欲で、烏滸がましいぐらいの強欲なのだろうか。
    「兄ちゃん、今日はどんだけチョコもらった?」
    楽しそうな声で聞いて来る弟に四個、なんて答えるとスゲー!なんて答えが返って来る。一個は母さんで、後の二つは一二三のお母さんとお姉さん。もう一個はこれから貰う予定だよ、なんて思って俺はリビングの机の上に頬を乗せた。母さんは買い物中なので弟と留守番しているところだ。バレンタインの甘い空気と浮ついた雰囲気に耐えられなくなって、早めに返ってきたのは良いがやることがない。課題もさっさと終わらせて、弟の宿題を見ていたけれどすぐに暇になる。足し算引き算できてえらいなぁ、なんて思いながら頭を撫でていると、ピンポーン、とチャイムが鳴った。宅配便か、と思ったら弟が「はーい!」なんて言って走っていくもんだから、気は乗らないがその背中を追いかけることにした。
    「はい」
    「……よ」
    扉を開けると鞄一つしか持っていない一二三がいた。今日は家に来る予定はなかっただろうに、と思っていたら「入っても良い?」と聞かれる。本当はあまり話したくはなかったけれど、だからといって出てけ、とは言えない。今日はあまり顔を見たくなかったのに、と言う気持ちと、やっぱり会えて嬉しい、と言う思いが半々になる。弟は一二三が来たので「部屋に戻ってゲームしてる」なんて言って自室へと引っ込んでしまった。俺は何とも言えない空気を纏いながら一二三にスリッパを差し出す。こいつ専用になりつつある黄色のチューリップ柄のスリッパを履きながら一二三は「お邪魔します」と言って足を踏み入れた。俺達も部屋に行くことにして二階の階段を上がる。
    いつもの俺の部屋のはずなのに、一二三がいる、と言うだけでどこか緊張してしまう。
    「帰るの遅かったな」
    「独歩が早いだけっしょ」
    何だろう、お互いに少し棘があるような言い方になってしまう。当たり前か。自分以外の人間が自分の好きな人に言い寄っているのだ。穏やかでいられない気持ちになるのも分かってほしい。一二三は少しだけ頭を掻くと、小さく「ごめん」と謝る。どうして謝るのか、と思って顔を見ると困ったように眉を下げていて、何だか迷子になったポメラニアンみたいだなぁ、と少々失礼なことを思いながら一二三に視線を向けた。
    「本当は来ない方が良いんだろうなとは思ってたけどさ。どうしても独歩に会いたくなっちゃって」
    「そう、かよ」
    「やっぱ嫌だった?」
    「………………、嫌だけど……、でもお前に告白したい女の子もいるだろうし、俺が付き合っていることを隠したいって言ってるわけだし、それは仕方ない、し……

    俺が付き合っていることを堂々と公言できないと言うことは一二三も理解を示してくれている。本当は俺がもっと一二三に相応しい人間だったら、隣にいて女の子からチョコを受け取らないでほしい、と言っても許されただろうに。そんなたらればを言っても意味がないことは分かっているし、今日に会いたくない、と言うのも俺の我儘だ。自慢の恋人だから自慢したい気持ちもあるけれど、それ以上に自分が好奇の視線に晒されるのが嫌だから、と言う理由で隠している。そのせいでバレンタインに一二三が告白されてしまうのは仕方のないことだ。俺が堂々と一二三の恋人、と言えないのが悪い。
    こいつが俺の恋人であると言う独占欲と誰にも渡したくないと言う所有欲が湧いてしまうのはなんて傲慢なのだろう。あぁもう、自分が一二三は俺の、と言えないだけなのに、と自己嫌悪に沈みそうになった俺の額に衝撃が走った。
    バチンッ、と勢いのいい音の後に走った衝撃に目を白黒させていると一二三が「やっと顔上げた」と少し寂しそうな顔をしているのが目に入る。八の字に下がった眉でさえもイケメンなんてずるいな、と変なことを考えながら額を押さえると、一二三は俺の手に触れた。じんわりと温かい体温が伝わって俺は無意識に入っていた肩の力が抜ける。
    「独歩がバレンタインのこと苦手な気持ちは分かるんだけど、やっぱりその……恋人だしこういう時に託けてイチャイチャしたい、と言いますか……独歩からのチョコがもらえたら嬉しいとか、そういうこと考えててさ。だから放課後で家まで来たなら良いかなって」
    ごめん、本当は嫌だろうけど、と言う一二三の言葉に首を横に振った。自分から話しかけるな、近付くな、と言ったくせになんて勝手なんだとは思う。だけどこうして会いに来てくれたことが嬉しくて、我ながら単純で現金だと苦笑いが浮かんできた。
    「悪い、色々考えて……お前のことだから大量のチョコレートに埋もれてると思ったからな」
    「いや流石に埋もれはしないよ!?それに、今回は俺っち頑張ったんだからさ!」
    「頑張った?」
    一二三の言葉に俺は少しだけ首を傾げる。一二三は俺のその様子を見てニヤリ、と笑ってVサインを出した。
    「下駄箱に入ってるヤツとかは無理だったけど、直接渡してきたり告白してきた子にはきっぱりお断りしました」
    ドヤ、と笑う一二三に思わず「っ」と声を出してしまう。
    「こ、断った?」
    「何でそんな驚くのさ。っていうか、告白されても独歩がいるから断ってるし。今回だってそうだよ」
    まぁ、下駄箱とかロッカーの中に入っているのは持って帰るしかなかったけどさ、と言う一二三に俺はなんて言って良いか分からない。喜ばしいことなんだろうけど一二三に好かれたくて一生懸命チョコレートを作った女の子達に……、少しだけ同情してしまうのはどうしてだろうか。自分がこの眩しいぐらいの幼馴染のことが好きだからだろうか。そんなことを思っていたら一二三が「だからさ」と口を開く。
    「独歩からのチョコ、ほしいんだけどなぁ……?」
    そう言って一二三は俺のことを見つめながら俺はどうしようか、と思ったけれど、キュルン、とシャンパンゴールドの瞳をキラキラさせながら待っているのでぐぬぬ、と少しだけ唸った後、腹を括って鞄の中に手を突っ込む。ガサガサ、と適当に漁ってすぐに出てきたのは赤いパッケージの、特別感もない、どこにでも売ってそうな普通の板チョコだ。正直、他のチョコレートを買うことも作ることも出来た。こんないつでも買えるようなチョコレートじゃなくてバレンタインだからというお高めのものでも良かったし。
    だけどこれを選んだ理由は……、そんな特別の日に特別なものを埋もれさせたくなかったからだ。一二三がもらうチョコレートはきっとたくさんあって、そのチョコレートはどれもあいつの為に女の子が必死になって考えて、どれもこれもきっと特別な思いが込められているのだろう。手作りだって、既製品だって、それはきっと変わらない。一二三に渡すチョコレートが特別なものであれと願いながら渡すもので、それをこいつはたくさんもらうことを俺は嫌と言うほど分かっている。そんな特別なものと比べても一二三は俺のが一番だって、きっと言うんだろうけど。
    「え、マジ?」
    「大マジだよ」
    だからこそ、特別なものは渡さない。既製品のお高いチョコも手作りの菓子もバレンタインなんてイベントでは渡してやらない。俺は、一二三を特別なトロフィーだとは思わない。こんな年に一度だけ頑張るような関係でいたいわけじゃない。
    「バレンタイン、だからって、特別なもん渡さなきゃいけないって、わけじゃないし」
    「………………それもそっか?」
    はは、と笑いながら一二三は笑う。バレンタインだから、特別なものを。バレンタインだから勇気を出す。それはきっと素晴らしいことで、一年に一回、背中を押される日があるのは恋する乙女に取っては重要だとは思う。
    だけど、そんな特別よりも俺との日常の方を大切にしてくれ、なんて卑屈で後ろ向きが思いをこいつに渡すなんて我ながら愛を囁く恋人の日に相応しくないなんて笑ってしまう。
    「独歩なら、告白してきた子の気持ち考えて受け取れとか言いそうだし、実際去年までは言ってきたけどさ。俺っちとしてはこの日にこぞって告る子よりも独歩のこと優先したかったんだよね」
    「そ、それはすまん、その……お前の隣にいる勇気が俺に無いから、その」
    「わかってるよ。でもさ、バレンタインで、恋人にチョコ渡す特別な日で、そんな日に近付くなって言われた俺っちの気持ちも考えてほしいな、とかは思ったり?」
    ベリベリ、と包みを剥がす音の後、パキン、とチョコレートの破れる音がして、一二三の手が俺に差し出される。
    「ま、学校ではこういうこと出来ないからさ。今の内にここでいっぱいイチャイチャしよっか」
    はい、あーん、なんて言いながら口に突っ込まれたチョコレートは当たり前に甘くて、それはお前に渡したもんだが、と言いそうになる。そのまま一二三の手が後頭部に回って柔らかな唇が触れ合ったと思ったら舌を捩じ込まれて、思わず吐息が漏れた。チョコレートが溶けて、唾液と混ざって甘さと一二三の息遣いしか感じられなくて、頭がボウ、となった時に唇を離される。チョコ混じりの糸が繋がって切れて、一二三の舌が唇の横をくすぐった。
    「ははっ、やっぱ学校で会わないの、正解かも」
    独歩が他の人に貰うの見るの嫌だし、なんて笑う一二三に同じこと考えてやがるな、と思っていたらラグの上に押し倒される。あ、これは食われる、と考えながら俺は口内に残った甘さを堪能しながらその首に腕を回した。

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    sobako_mc

    DONE付き合っていることを周囲に内緒にしているタイプの学生🥂👔とバレンタインのあれそれ。最後少しキスしてるぐらいのイチャ付きです。
    ハッピーバレンタインなんて口が裂けても言わないバレンタインデーなんて誰が決めた。
    この日だけは独歩に近付くなって毎年釘を刺されている。家に帰るまでは俺に話しかけるな、会うな、近付くな、登下校も完全に別、という徹底ぶりだ。何でだよ、って言っていたこともあったけど、何となく気持ちは分かるんだよな。独歩がこの日を嫌う気持ちって言うの?俺っちとしても、独歩に会うのは……ちょっと嫌だし。
    何で嫌かって、バレンタインデーってどうしても自分達以外の人の好意がチラつくから。まぁ昔から俺っちってばこの時期になると同じクラスだけでなく別クラ他学年からも告白の嵐でその度に独歩が面白くなさそうな顔をしてきたことを知っている。俺が貰うチョコを見ては、お返し大変そうだなって他人事のように言いながら頬を膨らませている独歩がいるからこそ、この日は学校で俺を見たくない気持ちは分からんでもない。いつだったか、独歩が女の子に告白されているのを見て胸がモヤモヤどころかイガイガして、その場に飛び込んで俺っちのもの主張してしまったことを思い出して苦笑いしていると、クラスメイトから「伊弉冉〜」なんて呼ばれる。
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